61話 神様の服というのは、究極の存在なんだと思った
家の造りや建物、風景からして日本だな、とは思う。
夢の世界だから、そうは思っても違う可能性はある。
けれど……多分、俺の記憶が確かならば、ここは俺の実家の前の道。
大きなセピア色をした農家は俺の実家。
そして、もう1軒のセピア色の民家は、俺の唯一の親友の家。
地面も草も木も、畑も車も……実家と隣の親友の家の周囲は全部セピア色に見える。
「お兄ちゃん?」
ゴブリンが呼びかけてきた。
「おはよ、起きた?」
夢の世界だけど、目が覚めたのだから間違っていないような気がする。
「寝て起きたら、ここに来たの」
実際には寝ているのだけど、起きたという変な事態。
ゴブリンの瞳は俺の顔をぼーっと眺めている。
改めてゴブリンに向き合うと、なんだか全体的に姿が眩しい。
ミディアムショートの髪型に、神様の白い服。
悪いことをしていないのに、なんだかいけないことをしているようなそんな気分にさせる。
ヒラヒラして、あっちこっち見えちゃいそうな気がするのに全く見えないという神様仕様。
神様の服というのは、ノーブラでノーパンなのにチラリズムまで極めるという究極の存在なんだと思った。
「ここはどこ?」
最もな疑問をぶつけてくるゴブリン。
俺だって、まず思うことだろう。
「多分、俺んち……の前」
確証がないけれど、俺の中での答えはそれしかない。
「お兄ちゃん家?」
セピア色の建物を眺めるゴブリン。
「夢の世界だから、確かじゃないけれどさ」
何もかもが不確かで、このゴブリンだって俺が創り出した幻かも知れない。
「夢の世界かあ……、夢で逢えるなんてすごいね。お兄ちゃんをベッドに運んで寝たら、こんなことがあるなんてすごーい」
ベッドに運んだ?
現実世界の俺はもう、浴室にいないらしい。
「ゴブリンが運んだの?」
「うん、お風呂で寝てると危ないってダレンさんが言うから、タオルで拭いて服を着せて……」
服を着せて?
頭の中が混乱し出す。
ゴブリンもダレンさんも……俺の全てを……?
恥ずかしい……。
それに糖尿病で筋肉が落ちて、脂肪しかないような俺の身体を見たら、嫌われるかもしれない。
見られたくなかった……。
「お兄ちゃんごめんね」
何に謝ってるんだろう。
俺の全裸を見たから?
ダレンさんのなんて神様だから、光ってるものが付いていて……俺のを見て驚いたかも知れない。
ゴブリンなんて、ゴブリン男性と俺を比較した可能性も……。
どうしよう……恥ずかしくて、ゴブリンの方を見られなくなってきた。
「光の球が邪魔でよく見えなくて難しくて……手探りだったから」
光の球?
見られていない?
ダレンさん、さすが、医療従事者だ。
俺のプライバシーに配慮してくれた。
光の球を外さずに対処してくれたみたいだ。
良かった~。
多少触れてしまったくらい、光の球のような大きなモザイクで正確なことはわからない気がする。
「服を着させようとしたら、ちょっと間違って左手の骨が折れちゃったの」
「左手? 骨? 折れた?」
ゴブリンは俺の手を折ったらしい。
起きてたら激痛だったろうなあ……。
今も痛いけど……。
ゴブリンに握られている手は現在進行形で痛い。
この痛みは夢と現実の連動なのかもしれない。
「それで……折れた手は?」
「ダレンさんが魔法で治療中……かな」
ゴブリンは申し訳なさそうに、上目遣いで見てくる。
俺の全てを見られることに比べたら、骨折くらいどうってことないような気がする。
「気にしないでいいよ。大したことない、大したことない」
うん、俺って心が広い。
「本当にごめんなさい」
俺の杞憂も晴れたし、そんなちっぽけなことで謝られてもこっちが悪い気さえしてくる。
そんなこんなしていたら、セピア色の方面から何か話し声が聞こえてきた。
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