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そして彼女と出逢った  作者: 霜月 時雨
プロローグ
2/11

プロローグ【名付け】

今回は短め


俺は村石の運転で自宅まで帰ってきた。

というのも、話が終わったのが深夜2時を回っており、流石に歩いて帰る気力も無かったからだ。

部屋に着くなり、自分のベッドへ飛び込みたかった。

だが、それは状況が許してくれなかった。

この部屋には自分を含めて二人いる。

そう、携帯電話から引きずり出した電子タイプという実験の結果を持ち帰ったのだ・・・キョウセイテキニ・・・。


「取り敢えずさ、名前を教えてくれ」

俺が預かるという形で決着し、この後の段取りを決めようとしていたところに思い付いた。

この娘の名前を知らない、もしくは決まってないと。

村石もそれに気付いたようで、

「確かに電子タイプ09なんて呼びにくいね。君は何か名前を持っているか決めているかしているのかな?」

「いえ、今のところは決められてもいないですし、希望もありません」

と、流暢に答える電子タイプ09。ちょっとずつだが、人間味を帯びてきてるようだ。この調子でいけば、明日には普通の受け答えが出来るようになるだろう。

さておき。

「名前が無いなら、今の内に決めておいた方がいいだろうね。折角人数がいるのだし、いい名前も出るだろう」

村石はそう言うが、果たしてそうだろうか?

俺自身は名前を付けたことは無いし、母親は信用できない。島田なんてもっての他。村石と速水さんは・・・名付けセンスがありそうかと言われると・・・速水さんはあるかもしれない。村石に関しては母親と同じ位に信用できない。本人はどうだろうか?

「そうねぇ、電子タイプって言う位だし、それっぽい名前がいいんじゃないかしら?電子でんことか・・・」

「「「「却下」」」」

母親の意見は本人を除く全員から却下される。電子は無いだろ、電子は・・・。

「普通の名前でいいだろう。それこそ、よし子とか小絵とか、そんな感じで」

島田の意見(禿げた頭)は時代錯誤しているようだ。

勿論、全員がスルーする。

「じゃあ、静江とか聖子なんてどうだい?」

村石も禿げと同じ思考回路だったようだ。流石に古い。いや、名前そのものは悪くないんだよ。ただ、この最先端技術の結果に対する名前としてはかなり不適切だと思うんだ。

となると、最後の頼みとして速水さんの方を見やる。顎に手を添え考えているようだが・・・。

「ダメね、ちょっと思い付かないかな」

と、真面目な顔で俺の方を見てくる。正直、一番期待していたところがギブアップしてくるとは思っておらず、俺自身も困り果てる。

「というより、私の息子は人の意見を否定するだけで、何も意見を出してないようだけど、否定する権利なんてあるのかしらねぇ?」

と、母親は指摘してくる。勿論、そんなことは判っているし、速水さんに期待していただけなのだが・・・。

「そうだな・・・」

呟きながら必死に考えている振りをする。

実際のところ、思い付いているのだ。だが、若干・・・いや、かなり母親と思考が似通っている。それが判っているからこそ口にしたくないのだ。

彼女自体は九番目なのだ。だから、9に関する、もしくは九番目としての名前を考えた。

「・・・九花きゅうか・・・」

そして、思い付いていた名前を呟いてしまった。

皆がこちらを見る。

それに気付き、自分が考えていた名前を呟いてしまったことに思い至る。

不覚。

そう思っているところに、

「良いのではないでしょうか?」

と速水さんが同意をしてくる。

何故か判らないが、俺の考えた名前を推しているようだ。

他の面々を見ると、

「無いわぁ、絶対に電子の方がいいわよ」

「まぁ、いいんじゃないか?決めるのは二人だし」

「うん、僕よりかはセンスがあるな」

明らかに一人だけ頭がおかしいのがいるが、それは無視だ。

「・・・九花・・・うん、それがいいです」

どうやら、本人も気に入ったようだ。


「さて、名前も決まったことだし、今後の事について少しだけ話をしておこうか」

村石は中断、というより終わりかけていた話に戻る。

「まず、決定事項としてだが・・・」

・俺が電子タイプ09こと九花を預かる。

・九花を俺以外の人間とも交流させる。

・九花に関する情報は口外しない。

・九花に関する資金は国が援助する。

・毎日ではないが、定期的に村石・速水の両名もしくは片方が俺の家に訪問し、経過観察する。

・権力を駆使して九花を俺と同じ大学へ編入させる。

・九花が故意的に悪意を持って害を為した場合、村石・速水の両名へ速やかに報告し、九花を拘束する。

・九花に危機が迫った際、村石・速水の両名へ報告及び危機対処能力を確認する為に暫く傍観すること。

「とまぁ、こんな感じだけど、何か質問はあるかな?」

村石は俺の方を見て聞いてくる。

そうだな・・・

「二つあるが・・・まず、俺以外の人間との交流や資金面は問題無いが、学力に関してはどうなってるんだ?いきなり大学の講義に着いていける程の学力はあるのか?」

そもそも、大学の講義に着いていけなければ、その時点で何しに来たのかと言われてもおかしくない。おそらく、俺と同じ大学・学科・講義にさせる予定だろう。だからこそ、着いていけるかどうかが問題になる。

・・・いや、そもそも、俺が面倒を見る時点で問題しかないし、俺以外の人間との交流ということは殆どが俺の友人知人になるので、それも大問題だ。

「それに続けて、九花に危機が迫った際の対応だが・・・あまりにも非人道的だと思う。面倒を見る以上は流石に放置したくないぞ」

「ふむ、まさか君からそんなことを言われるとは思わなかったが・・・まずは一つ目。学力に関してはおそらく問題無い。というのも、彼女は携帯電話から出てきただろ?言ってしまえば、彼女はデジタルな存在だ。情報収集さえ終わればすぐに君の大学どころか全国レベルでのトップクラスになるだろう。どういう仕組みかまでは僕達も教えて貰ってないけどね、上からはそんな感じで情報が下りてきたよ」

ふむ、仕組みは判らないが、何となく納得はできる。というのも、九花はさっきから言葉が流暢になってきており、使える単語も増えてきている。おそらく、今現在も情報収集中なのだろう。

・・・ということは、俺は突然編入してきたトップクラスの成績である彼女と同じ大学で同じ講義に出なければいけないのか・・・これは、大学内では九花と一緒に過ごすと俺のストレスがマッハで酷い事にならないか?

考えてみろ。

絶対に九花は目立つ。

眉目秀麗で成績も良く、しかも謎の編入生だ。

しかも、俺はその面倒を見なければいけない。

まずは関係を問われるだろう。そして、同居してるとバレれば・・・(何も知らない人間から)嫉妬の対象だけで済めば良く、最悪の場合は血の涙を流した男たちから刺されるだろう。

やべ、考えただけで寒気がしてきた。

それに、一緒にいるだけで比較対象にもされるのだ。何も知らない奴等からこんなチートじみた人外と比較されてみろ、何気無い一言でも俺は傷付くぞ。

どちらにせよロクなことにならないな。

「なぁ、大学内では面倒を見なくていいとか・・・ないよな?」

一応は聞いてみよう。

「そうだね、君としては微妙な立場になるかもしれないけど、目を離すということは危険な事になっても放置すると・・・同義ではないが、近いことにはなるんじゃないかな?」

やっぱりか。

「言ってしまえば、二つ目の質問の回答になるかな。まぁ、君は自分自身でその可能性に気付いているみたいだから、これ以上は詳しく言わないけどね」

村石はそう締め括る。

やれやれだ。これは、あれだ。間違いなくこの話を受けたのは失敗だ。最悪、人生最大の汚点だ。勘弁してほしい。

「俺が言うのも何だが、お前も大変だな」

何故か島田に同情された。

彼からしたら、俺が(人間ではないが)女性に振り回されるであろう事を理解して、島田自身の結婚生活に重ね合わせたのだろう・・・勝手な想像だが。俺の島田に対するイメージは離婚したバツイチの独り者だと思っているからだ。

「アンタに同情されるのは癪だな、おい」

とりあえず、それだけは口にする。

一方、九花は速水さんと話をしているようだ。

同じような説明を受けているみたいだが、先程迄と違い、目に光が宿っている。順調に情報収集できているようだ。情報収集かつ人格形成といったところか。

明日には普通の受け答えが出来るようになると考えていたが、この調子なら今夜にも出来るようになるだろう。

そんな中、一人沈黙を保っていた母親が、

「私はもうやること無いみたいだし、帰ってもいいかしら?」

と発言する。

確かに、こちらから言わせれば何故居るのかというレベルだし、そもそもこんな事になったのは、半分くらいはこの母親のせいではなかろうか。ちなみに、あとの半分はあの道に携帯電話を落としたクソ野郎だ。

「そうですね。では、ここで解散ということにしましょうか・・・日付けも変わってますしね」

村石は母親の言葉を聞いて、提案する。

「マジか・・・もうそんな時間かよ」

「はぁ、俺は帰っても一杯やるか・・・明日は非番だし」

島田は今から呑むようだ。

さて、こんな時間ではあるが・・・

「一応聞くけどさ、今日今から九花を連れて帰れとか言わないよな?」

「いや、当然連れて帰ってもらうよ?」

そうか。

「ということは、受け入れる為のまともな準備期間も無いということか・・・」

「それに関しては申し訳無いとしか言えないけどね。まぁ、必要なものは速水さんに準備してもらうから、少しなら大丈夫だよ。あと、君の母親はタクシーを呼ぶから、そちらで帰ってもらうよ」

・・・まぁ、それが無難だよな。

じゃあ、俺と九花は歩きだな。

「何を考えているかは知らないけど、君と九花くんは僕と速水さんで送っていくよ。流石にね、深夜にいきなり放り出す訳にもいかないし、彼女の生活必需品も最低限は揃えないといけないしね」

だから、心を読むなというに。

まぁ、確かにその位はしてもらわないと割に合わない。

それに、まだ九花のお金の概念が曖昧なのと、それに伴い俺が彼女の日用品を買いに行くのは・・・まぁ、あれだ、恥ずかしい。というか、そういう気遣いができるなら、俺に対しても気遣いをしてほしかった。

そんなこんなしながら、九花の日用品を購入してもらい、俺の住むアパートまで送ってもらう。

「では、僕達はこれで帰るけど、何かあったら連絡をしなさい」

「へいへい。で、明日もとい今日は何時に来るんだ?」

「そうだね・・・君の予定にもよるのだけど、講義はあるかい?」

「あるっちゃあるけど、午後からだな」

「そうか。なら、明日は講義前に速水さんが君の部屋に着くようにするよ」

「了解」

俺と村石の会話に速水さんが返事をしてくれる。

ちなみに、九花は黙って俺らの会話を聞いていた・・・いや、観察と言った方が正しいかもしれない。


そんな感じで車から降り、村石と速水さんを見送る。

「・・・」

その後ろには九花が黙って立っている。

何だろう、あまり良いように思われてないのだろうか?

さておき。

「そろそろ部屋に入ろう」

俺は彼女を促しながら部屋に入り、冒頭に戻る。

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