策略と戦い方
先週はすいませんでした。
リアルが忙しくて。
それではどうぞ。
美紗は全く分からなかった。城門から遠いところから攻撃を仕掛けることは不可能だ。だって、この世界には遠距離攻撃の手段は弓だけなのだから。彼女が元々居た世界には弾道ミサイルとか様々な遠距離攻撃の手段があった。それがこの世界にもあるのであれば、この距離からの攻撃も分かる。だが、そんなものはこの世界に存在していないのだ。まず、この世界は中世ヨーロッパ程の文化しかない為、その製造手段がない。だからこそ、理解が出来なかった。ジンのあのような余裕そうな表情が何処から来るものなのか。予想も出来なかった。
「では、説明しましょうか。今回の策を。気付いていると思いますが、騎士を半分に分けました。」
「えっ!いつの間に…」
「そこからですか。まぁ…次に行きます。私に着いてくる方はこれから洞穴に向かいます。」
「洞穴ですか?」
「はい。」
美紗は少しずつ分析していく。騎士が半分に別れていたのには全く気付かなかった。そんな気配はしなかった。改めて見てみると人数が減っている。意識して見ないと分からない。違う方向に向かった騎士たちはそこまで強いとは言い難い者たちである。なら、彼らは何処に向かったのだろう。その前にジンの話にもう一度耳を傾ける。
「この洞穴は5年前から堀続けた地下通路みたいなものです。これは城の武器庫に繋がっています。これで分かったと思いますが、この地下通路から城内へと侵入します。別れたもう1つの騎士たちには城門から攻めて貰います。ですが、先に攻めるのは此方です。此方が城門を開けたときが彼らが動き出す合図です。」
ジンの言葉で美紗は納得した。敵は城に攻めてくるなんて思ってもみないだろうし、そこまで強い相手ではない。だからこそ、そこで挟み撃ちをすることによって、味方の犠牲を出来るだけ減らす。尚且つ、油断して武装もしていないと考えると犠牲が出る確率は相当低くなる。全てを計算して考えられた策だった。
「城の敵兵をある程度殺した後に、城に火を放ちます。これで作戦は終了となりますが、質問はありますか?」
「あ、ありません。」
「なら、良いです。」
軍師騎士と呼ばれる名は伊達ではなかったと美紗は思い知る。彼女が生きていた世界には戦国時代と呼ばれる時代がある。その時代が一番戦争が多く名将や知将、軍師が多く生まれた。その人物たちは名前を残せる程の功績を数々と行ってきた。その人物たちにアルクスが凄くに似ているように見えたのだ。特に戦略はその人物たちに教えられたのではないかという程に似ていて、且つより高度に考えられている。剣の扱いを教えてくれた蒼炎騎士団団長のポルトと副団長のカルストが言っていた。"彼は言わば、騎士団の脳なのだ"と。その言葉を聞いた時は全く意味が分からなかったが、今なら分かる。騎士団を動かすのがアルクスという意味だったのだ。アルクスが居ないと上手く動かないということなのだ。彼らの言葉が正しいことを言っていたことに気付かされる。尊敬できる存在。
城攻めは間もなく行われる。軍師騎士と呼ばれるアルクスの伝説をまた作った出来事がもうすぐ始まるのだった。
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その頃、ジュナンが率いる紫炎騎士団はザリア帝国 四天王ブライスが率いる敵軍と衝突していた。騎士団の質とブライスの率いる軍の質はほぼ互角と言って良かった。両方が5年前から片方は騎士を、片方は兵士を鍛えてきたのだ。其処らの平和ボケした国の兵士たちに比べれば、圧倒的に強い。だが、この戦いの勝敗を決めるのはやはり、神将 ジュナンと四天王 ブライスの一騎討ちで決まるだろう。兵士だけの斬り合いだけで、勝敗を決めるには双方互角すぎる。それを考慮に入れると、最終的には大将同士の一騎討ちしかない。早さが特徴の剣技を扱うジュナンと豪傑と呼ばれる力で押す剣技を扱うブライス。この二人は全然似ていない。戦いは、直ぐ終わるかもしれないし、長引くかもしれない。長引けば有利になるのはブライスだろう。ジュナンには速攻で勝負を決めるしかないのだ。最初の一手が大切だ。
2つの国の戦い方はまるで違う。アリア皇国は弓を扱う者がいない。全員が剣又は槍を持ち、近接戦闘を得意としている。逆にザリア帝国は剣を扱う者、槍を扱う者、弓を扱う者の3種類がいる。剣士が先頭に、槍使い、弓使いの順に並ぶ。剣士が戦っているところに、槍使いや弓使いが止めを指す。タイプの違う戦い方である。その中で共通点は一騎討ちというものを行うことにある。大将同士の一騎討ちは長年の戦いで何度も行われている。どちらが勝つにしても指揮は上がる。勝った方は波に乗り、負けた方は仇討ちをするために。
ジュナンの回りには多くの敵兵が囲んでいる。先程言ったザリア帝国独自の戦闘を行う者たちが5組でジュナンを狙う。剣が、槍が、弓の矢が次々と襲い掛かる。だが、彼の力は誰もが知っている。誰もが畏怖するほどの力を持っている。同じくブライスも騎士たちの剣を何度も何度も受けていた。だが、力業で騎士たちを蹴散らす。その力もまた畏怖される程のものだ。騎士と兵士がぶつかり合う。2人は同時に同じことを言った。
「弱い。」 「弱い。」
2人のいる場所は決して同じところではない。なのに、完璧なタイミング同じ台詞を言う。これは思考回路が同じでなければ起きないことだ。実際、2人の思考回路は全然違うのであるが。
2つの国の先手が衝突していた。
如何でしたでしょうか?
それではまた。