表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/54

第五話『魔王様の給料は○○制!?』パート②

第五話『魔王様の給料は○○制!?』パート②




中ボスの部屋に着いた俺達だったが、部屋の中には誰も居なかった。


「…………、いないね」

「どう見ても不在ね」


 一体中ボスはどこへ行ったんだ?

 何処へ行ったのか、考えて居ると、そこへ一人のスティヴン・セガ……女性が通り掛かった。



「あっ! 佐藤さん! 丁度よかった。中ボス見ませんでしたか?」


「あら魔王様、中ボス様なら部屋の中に居るじゃなくて?」


「それが居ないんです、ほら」



 魔王は、そう言い、クック佐藤に中ボスの部屋に入ってもらった。



「おかしいわね~、私、今日この廊下の掃除担当だから、ずっと廊下に居たけど、中ボス様は部屋から出ていないわよ」


 その後、クック佐藤は掃除を始める為、再び廊下に戻って行った。


「あのクック佐藤さんでしたっけ? なんか沈黙(ちんもく)の○○ってタイトルの映画に出てたような……」

「出てるよ」



 魔王は驚く姫を置いて、部屋の中を探索した。



 姫はその後、「突っ込んだら負け……突っ込んだら負け……」とうわ言のように言っていた。


「ねえねえ、魔王様。この本、なんかおかしくないですか?」



 魔王は小ボスに呼ばれ、書棚に近付いた。


「何で巻数が揃ってないな」



 妹や小ボスならともかく、中ボスが本を整理しないとは考えられない。

 魔王はとりあえず巻数を順番通りに並べる事にした。


「…………、(これ、なんかのゲームみたいだな)」


 魔王は、少し疑問に思いながらも巻数を並べる事を終えた。

 そして、その時。部屋の中で、カチャリと言う音と共に、ゆっくりと書棚が横へスライドした。


「うわっ凄いバイオハ○ードみたい!」


「ちょっと! あんた達何やったのよ!?」


「とにかく中に入るぞ!」「おーッ!」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


 そして俺達は、書棚に隠されていた階段を下った。


「ほへ~」

「何よこれ?」


 石作りの長い階段を下り、開けた場所に出ると、そこにあったのは……


≪巨大ロボ!?≫


 魔王達の前に現れた物は、巨大ロボット。全長は十五メートルほどの人型ロボットだった。

 驚く俺達とは裏腹に、小ボスはロボットの周りをぐるぐる回りながら「ゴエ○ンインパクト」と繰り返し言っていた。


「どうしたのですか皆さん。こんなところに集まって」


「「中ボス!?」」


 俺達は一斉に中ボスに近付くと同時に話しかけた。





「「一体なに()このロボットは」」

「これゴ○エンインパクトだよね!!??」





 一人、まったく違う事を言っている者が居たが、誰も気には留めなかった。


「私は聖徳太子じゃないので一人ずつ話して下さい」


「じゃあ私が。ゴボン、えー、あのロボット何?」


「あれはですね。人型汎用(はんよう)決戦兵器『魔王ちゃんインパクト』です」



「「魔王ちゃんインパクト!?」」



「今日はやけに声が揃うわね……」


 姫は若干嫌そうな顔をしながら魔王の方を見てた。

 そんな視線を向けられながら、魔王はその兵器について訊いた。



「それで、なんなんだその『魔王ちゃんインパクト』とは?」

「インパクト! 魔王ちゃんインパクト! 凄いかっこいい!」



「役立たずな、魔王様を補うために作りました」



 酷いッ! うわっ! 他の連中は「うんうん」と頷きながら、妙に納得してる!!


「それより、このロボットって何処か凄い所ってあるの?」


 姫の言葉に中ボスは不敵に笑い、眼鏡を掛け直した。


「『魔王ちゃんインパクト』には汎用兵器と名前の通り、沢山の兵器が搭載されています」




 まずは、と言い中ボスが説明を始めた。

 


 装甲は五種から構成される|複合装甲≪コンポジット・アーマー≫を採用。


 更に爆発反応装甲の発展型である電磁装甲を各所に重要箇所に付けています。


 原動力は常温核融合炉を採用し、汚染や爆発の危険性はありません。万一の場合にも安心です。


 更に各所に……、

 



 凄まじいペースで喋り出す中ボスに姫は指を指しながら、魔王の方を見た。


「ねえ、魔王、中ボスのスイッチ押しちゃった?」


「まあ中ボスにはやや説明癖があるからな。

 今までは注意していたが、新しい兵器を作ったとあっては仕方ないか……」


「私が話振ったのが原因だけど、どうするのアレ? まだ説明してるわよ」




 両腕には百二十㎜滑腔砲(かっくうほう)を搭載。弾は装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)を主に使います。

 接近された場合には全身に装着されている、十二門の七・六二mmのミニガンで対処します。

 更にこの魔王ちゃんインパクトの最大の特徴……、


「聞いていますか皆さん!!」





「「はっ、はいッ!」」


 その後、魔王と姫は二時間ほど説明を聞かされ、小ボスはいつの間にか寝ていた。


「ふう、こんなところですかね、トイレ休憩を挟んだ後に説明します」



「「まだ、あるの!?」」

  


 唖然(あぜん)とする魔王、そして姫のことが気になり、横を見ると



「!? ――あの姫?」


「ナニッ!」


「怒ってらっしゃる?」


「ふふふ、怒って無いように見えて?」




 ――十二分にブチ切れてらっしゃるようで……

 こめかみに青筋浮かべてるよ……。


 そんなやり取りをしていると中ボスは物凄い眼光でこちらを見ると「お暇そうですね」と言い、後ろを向いた。


 

「!! いやそんな事無いぞ」


 中ボスの背中に向かって必死に弁解するが、既に、聞いて居ないようだった。

 


「そうですね、では飴と鞭作戦で飽きずに説明を致しましょう」



 そう言い、中ボスは大きな箱から小さいボトルを取り出し、俺達に見せた。


「!! おい中ボス! 俺のボトルシップに何をするつもりだ!」


「何って? もちろんご褒美ですよ?」


「どういう意味だ?」


「魔王様と姫様が私語をしないで、一時間黙って聞けたら一つ返却します。喋ったら……」ガッシャン




「割れたわね……」



 姫が無残に砕け散ったボトルシップの残骸(ざんがい)を見ながら呟いた。



「何故意味も無く一つ壊した!!」


「魔王様は何だかんだ返してもらえると思ってそうですから、見せしめに一つ壊しました。

 これで私も、本気だという事が分かっていただけました?」



「どう考えても『飴と鞭作戦』じゃなくて『鞭と鞭作戦』じゃねえか! 優しさの欠片もねえよ!!」ガッシャン

「イヤーもう止めて!!」



 更なる被害者(ボトルシップ)を見つめ、涙目になりながらも、魔王は残りのボトルシップの残数を盗み見た。

 ……軽く二十はある、どう考えても全部持って来たと見て間違いないだろう。


「でも、さっき『魔王様と姫様が私語しない』って言ってたけど、何で私も入ってるの?」

「ああ、それはですね」 ガッシャン



 うわぁぁぁ俺のカティサークちゃんが!! 遠慮なく、そして躊躇(ちゅうちょ)なく落としたよ! 

 いやもうむしろ叩きつける勢いだったよ!!


「ああ、それは魔王様の力作を遠慮なく壊す為に付け加えた条件です。

 これがあれば私は魔王様に話しかけなくても姫様に話し掛ければ、ボトルシップを壊せます。

 誰かが一生懸命作った物を、目の前で破壊できるというのは何物にも代えがたい価値がありますよね」


「鬼! 悪魔! 鬼畜! 悪鬼! 外道! 下郎! 化生!」ガッシャン



 ぎゃあぁ~ 一気に七個も!


「へー、別に私は痛くもかゆくもないし、はっきり言っちゃうと中ボスの説明も聞き飽きてたのよね」ガッシャン

「そうでしたか、まあ私としても少し度が過ぎたとは思っていますけどね」

「なんだ、わかっていたの? 中ボスも人が悪いわね」ガッシャン


「お前ら二人揃って天魔鬼神かよッ!!」ガッシャン

 


 もう語尾にガッシャンが付くのが普通に思えて来た……。


「おっと、そういえば魔王様」




「…………(俺は喋らない、俺は置き物、俺は背景、俺は――……)」

「あくまで喋らないつものですか? まあいいです。それよりもこれをご覧ください」

 


 そう言い、中ボスが一つのボトルシップを天高く掲げた。


「!!!!!! (あれは俺『日本丸二世』!! 

 百分の一モデル版!! 百分の一にしても一メートルを超える全長からボトルシップ化は不可能と言われていたが、俺が独自にボトルを鍛冶師に特注で作らせ、その中に組み立てる事により完成した力作! 

 制作時間八百は伊達じゃないッ!)」



「ッ!」

「おっと魔王様、そこを動かないで下さいね」



 魔王は一挙手一投足に気を付け。中ボスから日本丸二世を奪い返すチャンスを窺っていた。

 


 今は一瞬たりとも目線を姫の方へ向ける余裕がないが、先ほどまでのボトルシップとは大きさが十倍以上違う日本丸二世を見た姫は、流石に黙っているようだ。



 両者の距離はおよそ二メートル。

 魔王は拳を握り閉めたまま、中ボスはボトルシップを頭の上に掲げている。

 時が(いたずら)に流れ、両者はひたすらに睨みあうばかりであった。



「……(どうする? この間合いでは中ボスを力でねじ伏せたとして、日本丸二世を無傷で取り戻すことが果たして可能か?)」



 魔王は少し、ほんの少しだが、間合いを詰めた。時間にして半呼吸分、その動きを中ボスは見逃さない。

 だが、動いたのを分かっていながら、落とさない。



 ……まさか、本当は落とさないのでは? 魔王はそう思い、先ほどと同じように間合いを詰めた。

 既に膠着(こうちゃく)状態に入ってから八呼吸。


 時間など無意味かもしれないが、中ボスはあの大きさのボトルシップを両手に持っているのだ。

 仮に落とそうと思って動いても頭上にあげた腕は既に関節がロック状態になっている。


 あの状態なら、多少は腕の負担が軽くはなるが、素早い動きは不可能。

 更に近付く、その刹那、中ボスもまた動いた。

 

 中ボスは腕をやや前に倒し、いつでも落とせるという態勢に移行した。

 間合い、落とすタイミングを見誤らなければ救出可能。




「……(長い)」


「……(そう言うな姫よ)」

「――!? (ちょっと! 何私の思考読みとってるのよ!)」



「……(中ボスの思考を読みとろうと思って、術を仕掛けたが、生憎、アイツの思考が読みとれない、代わりに貴様の思考が届いた)」


「……(ちょっと! それって私にプライベートも無いって事!?)」


「……(ねえねえ魔王様、なんか楽しいことやってるようですけど、何してるんですか? ルールはなんですか?)」

「……!?(≪小ボス!?≫)」


「……(ねえねえ、僕はどうすればいいの?)」



 魔王は、しばし動きを止め、小ボスの位置を探った。

 中ボスの後方五メートルの位置!! これはチャンスか!?


「……(小ボス、中ボスが持っているビンが見えるか?)」


「……(うん、あれがどうかしたの?)」


「……(あれを奪って、俺の所に持ってこい)」


「……(分かりました~)」


 小ボスは元気よく返事をすると、ゆっくりと中ボスに近付いた。

 流石は小ボス、まったく気配がない、あれなら中ボスも気が付かないだろう。




「今だ小ボス!!」




 魔王の声に中ボスは初めて小ボスの存在に気が付き、後ろを向いた、だが、間に合うはずもない。

 小ボスは一気に間合いを詰めると、中ボスの魔の手から魔王のボトルシップを奪い返した。



「魔王様~、取って来たよ!」



 そう言い、小ボスは魔王の向かって走り寄る。その刹那。



「あっ!」



 小ボスは足元にあったレンチに(つまづ)いた。



≪!?≫



 まるでスローモーション、あるいは走馬灯のようにゆっくりと小ボスがボトルシップと共に倒れる。


 ガッシャン


 一際、大きな音を立て、一つの巨大な(びん)が割れる。

 呆気にとられる皆の視線を浴びながら、小ボスはゆっくりと立ち上がる。


 倒れて小ボスは、服に着いたガラスの破片を手で払い。

 気まずそうに、頬を指掻きながら、魔王の方を見た。


「……えへへ、タッチダウン?」



 ええ、それはもうプロ顔負けの完璧なタッチダウンでしたよ……あれならアメフトの選手も夢ではないね……。



 明らかに、顔が真っ青な一同。

 そんな気まずい空気の中、いち早く中ボスが動く。


「……では私は夕食の用意の方がありますのでこれで」


「私も見たいテレビがあるから、じゃあね」


「?? 僕も行く~♪」


 皆、魔王の悲しげな背中を見るに堪えなくなったのか、足早に退出していく。

 誰もが、魔王に掛ける言葉を持たなかった。

 


 …………。

 魔王は静かにボトルシップの残骸を両手で拾いあげた、だが、既にボロボロの船体は脆くも崩れ落ちた。

 そんな残髄を魔王は黙って一つ一つ、宝石のように扱い、拾い集め。

 それを(いつく)しむように見つめた。

 

「これは横帆(おうはん)……それでこっちが縦帆(じゅうはん)

 ……はははっもうどっちがどっちか分からないや、あはは、あはは……」


話を二つに分けてしまって申し訳ございません、話しの落ちを考えるうちに何故がどんどんグダグダに長くなってしまいました。ごめんなさい……以後気を付けるようにしますので、はい……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ