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第二十五話『挑戦? 究極パーティーは魔王達?』①

「挑戦? 究極パーティーは魔王達?」①






「ふわぁ~」


 だだっ広い王室で、三人掛けのソファーに腰掛けながら、一人新聞に目を通している魔王。

 ある程度読み終わったのか、一旦新聞を目の前から下げ、乱暴に畳むと膝の上に置き、改めて魔王は周りを見渡した。



「舞踏会も行えそうな広さの王室で一人、椅子に腰かけて新聞を読んでいる構図ってなんかシュールだよな……まあいいや」


 そこまで言ったところで魔王は、ソファーから立ち上がり、膝から零れ落ちた新聞を拾い上げようと腰を曲げた。


「ん? リニューアルオープンのテーマパーク? 十人以下で参加型のダンジョン? なんだこれは?」



 一つの広告が気になり、もう一度ソファーに腰掛けると、その部分を読み上げる魔王。



「オープンを記念した超大型企画。最速でダンジョンをクリアーした方に一千万円プレゼント……っと、中ボスこれを読んでみてくれ。凄い魅力的だと思わんか?」



 盆の上に湯呑を乗せて、王室へと入ってきた中ボスに魔王は声を掛け、中ボスは不思議そうな顔をしながらも、湯呑をソファーの前のテーブルに置き、魔王に手渡された広告へと視線を落した。



「これは魔界で一番有名なテーマパークですね。それにしても新聞の見開き広告とはこのアトラクションの宣伝にかなり力を入れているようですね。今朝もこの広告と同じような内容のCMをテレビで見ましたよ」



「応募は今日までだし、イベント自体も三日後なようだし。ぜひ参加してみようと思うのだが、どうだ?」

一人(ボッチ)での参加ですね? では私が電話しておきます」

「……いや頼むから皆にも話しを付けるので、俺様一人で参加。なんて悲しい構図は止めてくれ……」



「ふむ、それにしても百以上のパーティーが入り混じり、景品の一千万円を奪い合うと言う事ですが、一パーティが上限の十人、およそ千人がこれに参加できるようですね。景品の金額を考えますと、より多くの募集がかかりそうですので、何らかの予選が行われそうですね」


「そうだな、大方“魔力測定”とかで決めるんだろう。イベント用の難易度であれば、低すぎる魔力では危険だろう」


「そうですね、それを考えるとメンバーには申し分ないですね。では申し込んでおきますね」

「ああ、頼んだ」



----------------------------------------------------------------------------------------------


「ってな訳だ」

「……その説明ってせめて三日前にやるべきじゃない、普通」



 何の説明も無しに、いきなりテーマパークへ行くぞと言われ、つれてこられた魔王城御一行。



 小ボスと妹。あとネコと元祖・魔王である親父は気にしていない様子であったが、姫だけが不服そうであった。


「別に行くことに不満はないけど、相談無しに応募されて、連れてこられる身にもなってみなさいよ。こっちの予定も考えなさいよ」

「あっ? 何か予定あったのか?」


「……きょ、今日は“たまたま”予定が空いていたわよ!!」


 やたらと強調してくる姫をよそに、魔王達は人ごみを縫うように歩き、目的の場所まで歩く。



「ちょ、ちょっと待ちなさいよ」

「魔王様魔王様!! ポップコーン買っていい? 五キロくらい!!」


「一キロにしておけ……」

「わーい」



 魔王は、小ボスに財布を渡し、しばし皆と共に当りを視線を巡らせた。


「おにぃってこういう所くるの初めてよね?」

「そうだな。俺様はあまり人ごみは好かぬからな。それにアトラクションの待ち時間とか暇そうだしな」

「コミケと新しいアップル製品が出る時はやたらと気合いれて深夜から徹夜で並んだりするのに?」

「あれは別と言う事で……」

「パパはマー君が居ればそこがテーマパークみたいなものだよ? それにしても“息子”と一緒に“ビックサンダーマウンテン”とか、“スモールワールド”を楽しめるなんてね!」


「息子って言った後にそのチョイスはなんだ!? なんだが卑猥な想像させるような意図があるようにしか思えないぞ!!」 

「魔王様イベントの集合時間が近づいてきました、他の事はまた後にして今は当初目的を果たしましょう」


 中ボスに急かされ、一番のメインイベントであり、正直これだけで本日の内容の殆どであるダンジョン型のアトラクションへと足を進めた。


--------------------------------------------------------------------------------------------


『えーまず皆さまには、こちらの機械で魔力値を測り、パーティーメンバーの合計値が100以上かどうかを測らせて頂きます、それと事故の危険性から一人あたりの魔力上限は200とさせていただきます。超過した場合は、こちらの――』



 広場に集められた大勢の参加者に対して各所に配置されたスピーカーで声を伝え。

 数十名あたり一人ほどの割合で目の前にこのイベントのスタッフが立っており、彼らがアナウンスで言っていた『魔力を測る機器』とやらを上に掲げる。



 その機器を目の前にして、ほとんどの者は同じような感想を覚えた。


「体重計にしかみえないな」と魔王は呟き、姫や他の者も頷いた。



『“体重計”に見えますが、これは乗るだけで魔力値を測れる便利な機器です』



 姫は感心するように「便利ね」と言うが、司会者の一言で目の色を変えた。


『それともちろん体重も測れますよ。むしろ魔力値と同時に表示されますよ』

「ちょっと!!?」


 驚いたように姫は声を上げ、同じようにほとんどの女性陣からはブーイングの嵐だったが、司会者が『なら帰って貰って結構ですよ』の一言で全員黙り込む事しかできなくなり、そのあとは円滑に説明が進み、数分後には測定が開始された。




「次、チーム≪魔王≫。計測器に乗る前にお名前と選手番号を伝えて下さい」

「中ボス、番号は05478番」


 中ボスは冷ややかな顔で測定器に乗り、魔力値の計測が始まり、チーム魔王で一番番号が若いと言う理由だけで最初に測定しているが、それでも一応はメンバー最初の計測とあってか、魔王達の視線は計測器に釘付けだった。



「ハァ!? 9200!!?」


 目を向くように計測器の数字を何度も見るスタッフ。


 近くに居た他の参加者達も驚いたように声を上げる。


「おいおい、うちらのパーティーは10人で500ちょっとだって言うのになんだアイツは!? サイヤ人かよ!?」



 そんな視線を浴びて居ながらも中ボス何の関心も無いと言わんばかりに「もういいですか?」と一言いい、スタッフが無言で頷くと、中ボスは計測器から降りた。



「次は僕だね。小ボスです! 番号は~えーと。05479番! よろしくお願いします」


 先ほどの中ボスとは違い、期待と興奮を入り混じりながら小ボスは計測器に乗り、他の参加者達は既に『チーム魔王』に注目していた。




「ろっ、6400!」


 何故か声が震えているスタッフ。そして周りに居る方々も拍手を送る者や、落胆し既に帰り支度をしている者など反応はまちまちではあったが、少なくともこの時点でここら一帯の数十名に絶望を与えているのは間違いなかった。



「中ボスはやっぱり強いね~まだ追いつけそうにないや」

「貴方は身体が一番の武器ですが、私は魔法が武器。つまり魔力が武器ですからね。得手不得手ですよ」



 中々に微笑ましい光景を傍目に、次は姫が計測器に乗る。



「はっ、8400……それと体重は4――」


 何故か他の参加者が計測する時は表示されていようと、態々口に出して体重は言わなかったにも関わらず、姫の時だけ表示された体重の表記を読み上げようとしたばかりに、スタッフは顔面にアイアンクローを喰らっていた。


「すみません、すみません。なんか言わないといけない気がしたんです! ほんとすみません、生きていていすみません。あっなんか新しい趣味が開花しそう……」



 姫は別の意味で会場を温め、次は妹が測定に入った。



「11400!?」


 もう魔力数値が高すぎて何が何だか分からなくなっているスタッフ。

 そして周りも恐ろし過ぎる魔力値を見ようと代わる代わる計測器を見ていた。



「じゃあパパが次やっちゃうからねー、マー君も見ててね~」

 

 化け物みたいな数字を出すだろうな~と皆思いつつ、結果はもちろん化物であった。



「53万!?!?!?! ――あっフリーザと同じですね……」


 なんかさりげなくギャグを言ったスタッフさん。

 まだそんな余力残していたんだなと魔王は感心しつつ、周りに居る他の参加者達に視線を送った。



「……いやもうおかしいだろう」

「八百長とかそんなレベルじゃなくて、もう……あの……うんいいや」


 周りでその数値を目の当たりにした者は、完全に諦めムードが漂っており。

 実際魔王もこの様子を傍目で見ていれば「人生クソゲー」と言い残し、ここを去っていくと自分でも考えるほどに、ひどいゲームバランスであった。





「主、次は俺でいいよな」

「おう言って来い」


 番号的にはネコよりも魔王の方が先に受けるべきなのだが、何だが「お前は最後(オチ)な」と言わんばかりに中ボス達が見ていたので、素直に従う事にしていた。



「200です」


 なんか安心したような顔で計測した値を紙に書き込んでるが、1パーティー当りに必要な魔力値を2倍も行ってるからね。なんか周りも頭が可笑しくなったのか「大したことないね」と呟き始めたけど、絶対君たちよりこのネコの魔力高いからね!

 と一人乗りツッコミを脳内でしつつ、魔王はついに計測器の前に立った。



「おい、あれがチームの代表らしいぜぇ」

「ねえねえ、あのあそこってチーム名が『魔王』らしいのよ」


「えっじゃあもしかして本物!? だってあいつ、ジャージ姿だぜぇ? しかもくそだっせえ小豆色! それにマントとか付けてねえし」


「でも、周りの人たちの魔力値から考えてみてよ、そこらの腕自慢程度じゃ、束どころか千人集めても勝てないわよ」

「じゃあやっぱりあの人が……」



 着ている服にイチャモンを付けられた気がしたが魔王の耳には届いていなかった。


 なんだか一方的に期待を寄せられる魔王。ここで「そうです私が魔王です」と言うのも悪くは無いが、彼らが欲している答えも、態々与えなくとも魔王が測定器に乗れば自ずと出るので、魔王は黙って測定器に乗る。


 震える指先で測定器を付け、魔王の魔力値を計測するが、あまりに予想外な数字にスタッフは何か色々と壊れた。



「プッ……戦闘力たったの5か……ゴミめ……」



 なんだよ俺様なんか悪い事した?

 もう何だが羞恥プレイ過ぎて心が痛い。


 魔王は何故か後ろ指指されながら測定器から降りた。


「おにぃ、なんて悲しい目をしているの……今なら少し同情しても良いかもしれない」

「主だけでパーティーを作ったらあと十九人居る計算……実質失格か」


「魔王様、落ち込む事ないですよ、私たちは全員居て初めて本来の力を発揮できるパーティーですから」

「そうよ、中ボスの言う通りよ、これでアンタとみんなを合わせて56560“5”よ」


「おい姫! 5の部分だけ強調するな!!!!」


「大丈夫だよマー君。僕とマー君は二人で一つ。だからマー君と僕合わせて53000“5”だよ!」


「そんな表現で言うんだったらもう5は要らないだろうが!」

「あっ魔王様がそう言うなら“5は削除”だね」


『…………』


 小ボスの物凄い含みのある言い方に、一同ドン引きであった。

今回は長編となっております、予定としてはこの回は①から⑤程度は続く予定です。

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