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こんな駅で降りた覚えはない  作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
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3/3

第2話〜最終話

いつもお読みいただきありがとうございます。

日常のすぐ隣にある狂気と、静かに侵食されていく意識——。

静まり返った改札口で目を覚ました主人公を待ち受けていたのは、安堵ではなく絶望的な「違和感」でした。

乗っ取られた身体と、届かない叫び。

幕切れの静寂の中に潜む恐怖を、どうぞお楽しみください。

ハッと目を覚ますと、そこは静まり返ったいつもの改札口だった。

身体の不自然な硬直は消え、荒れていた息もいつの間にか整っている。

「……夢、だったの……?」

呟いた自分の声は妙に軽やかで、どこか他人事のように響いた。

手のひらを見つめると、スマートフォンがじっとりと嫌な汗を吸っている。

スピーカーからは、通話が切れたことを知らせる無機質なビープ音だけが流れていた。

ふと、胸の奥に致命的な違和感を覚える。

感情の波が一切立たない。ついさっきまで全身を支配していた凄まじい恐怖すら、冷めた紅茶のように乾ききっていた。

視線を上げると、黒い霧も不気味なガラス窓も綺麗に消え去っている。

代わりに映っていたのは、蛍光灯の明かりの下で佇む、いつもの自分の姿だ。

「……ふふ」

漏れ出た嘲笑に、自分で自分に驚く。

なぜ笑ったのだろう。恐怖の余韻などどこにもない。

いや、違う。自分が笑ったのではない。

内側に居座った「誰か」が、新しい身体で見る世界に満足して微笑んだのだ。

意識の遥か奥底で、閉じ込められた「本来の自分」が助けを求めて叫んでいる気がした。

だがその声も、分厚い氷の底へ沈むようにして、二度とこちらへは届かなくなった。


     【了】

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

「もしも日常のふとした瞬間に、自分の身体が自分のものでなくなってしまったら……」という恐怖から始まった物語でした。静かな改札口や静寂の不気味さを感じていただけたなら幸いです。

作品の感想やハイライトなど、評価やコメントで教えていただけると執筆の大きな励みになります!

また次の物語でお会いしましょう。

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