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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第54話・3 魔女として動く(3)

 パストで魔女活動の拠点となる治療所が開設された。

 今日は3月20日、予定より少し遅れたけどパストの王宮にパスト市民向けの治療所が開設された。


 昨年末に計画され、明けて1月、2月と姿が出来て来た建物は、王宮の城壁から飛び出す様に作られ、裏通りに向かって入り口が在ります。


 裏通りと言っても王宮の裏側の通りは広いです。ちなみに馬車道と歩道まで在ります。

 単純に広場に面した大通りを表側と言っているだけのようです。


 ビェスがこの数か月の間に取り持った、貴族の患者は17人います。

 北のジュリモネータ侯爵領から6人。西のパステラート・バハウントナ連合伯爵領から4人。他に王領から5人、辺境領群からも2人です。


 事故や争いで四肢の一部を失った人は3人で、全てポーションの治療で失った四肢を再生しています。

 彼らは領主の親族や軍の重鎮で全て男性です。


 残りの患者は魔女薬の上級回復薬でも治療は難しく、私の回復魔術の近距離転移が必要でした。

 それでも近距離転移させた後の回復には魔女薬を使用しています。

 転移させた病巣の、癌や重金属に汚染された血液と臓器、体内に巣くって大きくなった病原体。


 パストへ来る決断を領主がして無ければ、死は避けられなかっただろうと思います。


 ポーションの治療以外で、治療した患者の多くが重度の重金属中毒でした。貴族社会の中に鉛や水銀を使用した品物が蔓延している環境がうかがえます。

 患者の多くは女性で男性も居ましたが全て赤ん坊か子供でした。


 イガジャ領では腹張り病の根絶を目指しましたが、此処ビチェンパスト国では重金属汚染との闘いに成りそうです。

 少し調べただけで、庶民から貴族迄生活の中に重金属が溢れていました。中には水銀の化合物を薬だと飲む人までいたのですから汚染の度合いは深刻です。


 治療所の開設により、私の魔女としての活動も次の段階へと進みます。

 パストから様々な情報を発信して、ビチェンパスト国に広げて行けたらと思っています。


 最初は飲み水からでしょうか、歯磨きや体を清潔にする事、誤った薬や化粧品を使わない事など知ってほしい事は沢山あります。


 私は治療所の開設で、この国に健康的な生活を実現する事を目標として、大きく進む積りでした。

 何事も政治的な平穏が維持されなければ、文化的な物ごとは進みません。


 ビチェンパスト国内は、年明けから対立が目に見えて深まり。

 双方の砦の強化や増員を行っていて警戒を強めています。


 兵の増員、戦船の建造と商船の徴用、などが行われています。

 砦の強化や増員は前からですし、季節的に農作物の備蓄は終わっているでしょう。

 それでも、兵糧にもなる保存食への加工などは盛況ですし、お酒の増産もされているそうです。


 国内の情勢はビェスに有利に動いていますが、油断は出来無いそうです。

 北のジュリモネータ侯爵領、西のパステラート・バハウントナ連合伯爵領は中立を約束しました。

 実態は人質ですが、パストへ送られた患者は、既に治療を終えています。


 患者は治療後それぞれの領事館へと移り、回復を待って居ます。毎日セリーヌかカトリシアを巡回に向かわせて様子を見ています。

 今は治療後の体力の回復を行っている段階で、それも近々終わる予定です。


 人質の患者を各領の領事館へ移したのは、ビェスの判断です。パスト市は海の中に在る砂州を埋め立てて造られた都市なので、四方を海に囲まれています。

 市民のビェスへの信頼も高く、領事館を見張る目もビェスの部下だけでなく多くの市民も協力的です。

 そのような状況なので、患者を逃がす様な動きが在れば、直ぐに分かる訳です。


 人質を逃がすなら、中立を止め敵対的な動きをすると判断できる。

 その試金石にしようと考えての事でした。


 変化は私自信にも在りました。

 王宮のビェスの住居部分の改造が終わり、私はビェスの寝室の隣へ引っ越しました。


 増改築で、ビェスの住居部分は大きく変わりました。

 ビェスの寝室の隣に私の寝室が作られてます。それに伴い、私が使う幾つかの部屋や侍女の部屋や控室、湯殿に化粧室や衣装部屋などの私に関わる諸々の設備が新たに作られました。

 ビェスが使っていた部屋もそれに伴って引っ越しをしていますし、人が増えた分部屋の数を増やしています。


 今回の改造で王宮の建物も東端が北側に増築されました。その部分を取り巻く庭園も新たに作り直され侵入者対策も更に厳重になったそうです。


 私がビェスの住居部分に引っ越したのが2月の末の事でしたから、3月の始めは引っ越しに伴うゴタゴタで治療所の開設が遅れてしまいました。


 襲撃が有ったのは開設の式典の最中でした。狙いは行事に出席する私でした。



 次回は、治療所への襲撃です。

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