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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第55話・1 動乱(1)

 動乱の狼煙は治療所開設の日に起きた。

 ビェスは襲撃の兆候を掴んでおり、式典に出席予定の私に王宮の庭で待機するように言ってきました。

 ビェスから合図が在れば、いつでも竜騎士として出撃する様に依頼されていたのです。

 私は、神域を開けたまま発着に使う庭で待機していたので、治療所の襲撃時にはそこに居ませんでした。


 だからと言って私がおとなしく待機だけをしていた訳ではありません。

 使い魔を治療所へ送り込んで襲撃に備えていました。


 式典に出席したのは、私に変装した侍女のカトリシアと侍女のセリーヌの恰好をした護衛隊の女性隊員です。

 本物のセリーヌは私の側で控えています。


 襲撃は式典が始まって直ぐ、治療所の開設に招かれたパスト市民に偽装した工作員によって行われました。

 偽装した工作員が刺激の在る乾燥した草を燃やして、会場の中へ投げ込んだ事から始まりました。


 会場内は複数投げ込まれた目も開けられない程の刺激の在る煙で、てんやわんやの大混乱となりました。

 来場者が刺激の在る煙で蹲り悶えている場所へ、顔に薄布を被った数人の乱入者が治療所の中へと乱入してきた。


 襲撃した賊らは蹲る来場者を踏みつけながら、治療所の待合室となる広間の奥に居た主賓たちへと襲い掛かったのです。


 狙われたのは、主賓席で蹲って動けない私役のカトリシアだった。

 剣を振りかざした賊が一斉に襲い掛かった。


 襲撃はビェスの予想通りでしたが、目も開けられない刺激の在る煙幕は予想外でした。

 私の魔術を恐れて、私の無害化を狙っての事だと思います。

 実際にこの煙幕を使われて護衛の騎士たちは、目も開けられず蹲るだけで何もできなかった。


 場内の護衛は無力化され戦えなくなったが、治療所の周りで警戒していた護衛隊は直ぐに動いた。

 刺激の在る煙で入り口こそ突破されたが、すぐさま治療所の周りを取り囲んだ。

 これは、更なる敵の増援を阻むと同時に中に入った賊らが出てくる事への備えだった。


 煙が充満した室内で私に変装したカトリシアに、賊が振り上げた剣が迫った。

 カトリシアを切り殺そうと剣で切り付けようとした時、私の使い魔が魔術を行使した。


 賊らへ麻痺(ハライズ)を行使する。

 一瞬で彼らは麻痺し、カトリシアの目前で倒れた。


 襲撃が上手く行っていたのは此処までで、襲いかかろうとした賊は全て剣を抜いたまま床に伸びていた。

 直ぐに窓が開けられ、煙が追い出されると、床に麻痺して伸びていた襲撃者は全員捕縛された。


 襲撃犯が全員拘束されると、彼らは尋問のためかどこかに速やかに連れ去られて行きました。

 そこへセリーヌが治療のため到着した。

 襲撃犯らが無事に捕縛され、治療所には目を傷めた人が大勢残された状態だったので、私がセリーヌに治療方法を指示して治療所へ行かせたのです。


 セリーヌの指示で、襲撃が終わった後、彼らに蹂躙された市民や護衛隊の人たちへの治療を行った。

 セリーヌは症状が軽かった人を集め、魔女薬でケガ人の治療を行っていった。


 襲撃犯の使った、刺激の在る煙で目を痛めた人へは目を洗って初級傷薬を使った。

 襲撃犯に踏まれてケガをした人へは症状に応じて初級傷薬か初級回復薬を使った。

 カトリシアも比較的軽かったので、顔を洗い初級傷薬で動けるようになった。


 使い魔にケガ人の症状を調べさせ、使い魔からセリーヌとカトリシアへ指示して薬を使わせている。

 きれいな水がまだ用意出来無いので、井戸水を使って目や顔を洗ったが、その後で初級傷薬を必ず使って貰っている。


 私は待機している場所から使い魔で、治療の指示をセリーヌとカトリシアに行っている。

 治療所の混乱が粗方終わる頃、ビェスから竜騎士の出撃をお願いする伝言が来た。


 私はセリーヌを治療所へ行かせた後、何時でも出撃できるように、神域からキーグを出して飛行用の竜具を取り付けていた。

 ビンコッタ海にキリアム侯爵の軍船がパスト市を攻撃しようと襲来して来ているのです。


 ビェスからの伝言は「偵察の船から彼らを見つけたとの知らせが在った、ラーファに彼らの行動の阻止を行って欲しい。」との内容です。

 今日の治療所への襲撃は日時を決めた上での広範囲に及ぶ奇襲の一つに過ぎなかったのです。


 ビェスが掴んだ奇襲計画は、パスト市内、パスト市の港と船、キリアム侯爵領との境の砦、などです。

 中立を約束した北のジュリモネータ侯爵領、西のパステラート・バハウントナ連合伯爵領は約束を守って居れば何もしてこないでしょう。

 ビェスの判断では領の境から軍を遠ざけているそうですから、中立は守りそうだとの事です。


 問題だった辺境領群のエバンギヌス子爵は孤立して単独で蜂起するしか無くなっているそうです。 

 エンビーノ男爵は命を救われた事を感謝していて他の開拓団繋がりで治療の必要な患者を頼んできました。

 治療の条件はエンビーノ男爵と同じビェスが戦う時にビェスの側で戦う事です。


 ビェスが治療を引き受ける事でビェスの側に辺境領群の大半を寝返らせる事に成功しています。


 ビェスも辺境領群が抱える借金をこの度の戦で勝利すれば全て無しにすると約束しています。

 借金はほとんどがエバンギヌス子爵からですし、その後ろにはキリアム侯爵領の商人がいますから、勝利の暁には借金ぐらい帳消しにできるでしょう。


 ビチェンパスト国で因縁の決着をつける戦いが始まりました。


 キリアム侯爵の戦船がパストへと攻めてきたのです。

 治療所への襲撃で混乱したパスト市へ、海から奇襲する積りでしょう。

 今回はビェスの諜報能力がキリアム侯爵を上回り、事前に動きを知る事が出来ていました。

 ラーファはキーグに乗ると、一気に空へと駆けあがった。


 ビチェンパスト国唯一の竜騎士の出撃です。


 次回は、動乱初日とビェスとラーファの出撃まで。

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