第39話・2 ビチェンパスト国へ(2)
キク・カクタン国の後は、ビチェンパスト国へ。
でもゴドウィンに騙されそうですね。
爆風は港まで及んではいなかったのか、沈んだり壊れた船はいないようだ。
ゴドウィンの船も、幸いにも影響は無かった様だ。笑い猫に船の甲板に降りる様に伝え、船の様子を見る。
御位の崩壊前は、出航のために帆を緩めていたにもかかわらず停泊位置も変わって居なかった。影響は無かったと言えそうだ。
コリン君を父親のゴドウィンの元へ送るため。いまだに唖然として喋る事も出来ない様子のコリン君を甲板に押し出した。
ゴドウィンは、王宮を見ていたようだが、気が付いて後ろを振り向いたので、一言声を掛けた。
「やぁゴドウィン、息子さんを返しに来たよ」
「イスラーファ様! 何がどうなっているのか教えて貰えませんか?」
切羽詰まった様子で、息子《コリン君》を甲板に押し出す私に迫って来た。
「詳しくはコリン君が全部見ていたから聞くと良いよ」と言ったのに。
何が何でも私から聞こうと、コリン君を押しのけて、私に肉薄してきた。
「御位の在る場所で、轟音と閃光が在りましたが、あなたですか?」
ゴドウィンまで私が何かしたと思っている様だ。
話せば分かる事だから、簡単に説明する。
「御位を調べていたら、御子がやって来て火槍を撃って来たのよ」
「それが御位に当たって、魔晶石の暴走が起きてあの結果となったと言う訳よ」
ゴドウィンは勢い込んで聞いて来た。
「魔晶石? それより御位は、御位はどうなりましたか?」
彼の様子を見ると、だいぶ焦っている様だ。事実を告げても大丈夫だろうか?
少し逡巡いるとゴドウィンの方も察したようでため息を大きくついた。
「ああぁー・・・・ その様子なら、御位は焼けたようですね。」
「ええ、そうよ」
「それ所じゃ無いよ!!! 建物ごと崩れちゃったんだ!!」
いきなり大声を上げたのはコリン君だった。
ゴドウィンもその言葉の不穏さに言葉が出てこないようです、口をパクパクさせています。
仕方が無いので、もう少し詳しく話す事にした。
「御位は建物ごと崩落して、今は岩があるだけになってるわ」
「ついでに王宮も被害が大きいようで、二つ目の門から内側は壊滅してるし、一つ目の中も酷いことに成ってるよ」
そしてゴドウィンも気になると思う王都の事も話す。
「王都にも被害が出ている所があったわ」
「王宮が壊滅・・・・・・」ゴドウィンがポツリと言葉を出した。でも彼の中で何かが変わったような気がした。彼は何か考え込んでいる様だ。
コリン君は父親の様子を見た後、王都が気になるのか船べりへと行ってしまった。
私は、このまま笑い猫の影隠の中でビチェンパスト国へ行こうと思っている。
コリン君を父親に返したし、ここでの用事はもう無い。
そう思って踵を返し、笑い猫に向かおうとした。
「待ってくれ! イスラーファ様、俺たちと一緒にビチェンパスト国へ行かないか。」
ゴドウィンが何か憑き物が落ちたかのように、すがすがしい笑顔でこちらへ提案してきた。
「一緒にビチェンパスト国へですか?」
なぜ? 私が向かおうとしている国が分かったのかは、私の情報を知っているゴドウィンなら最初から私がビチェンパスト国へ行く船に乗った事を知っていたからだろうけど。
今更私と行動を共にする事に何か意味が有るのだろうか?
「何故なの?」
「俺たちはこの国を捨てる、そしてビチェンパスト国へ行って出直すんだ。」
まぁこんな事態では、国が無くなりそうだから気持ちは分かるけど。
「それは、勝手に行けば良いんじゃない? 何で私が一緒に行く必要が有るの?」
「俺たちには、ビチェンパスト国へ持って行く手土産が必要だ。」
「そしてイスラーファ様には、ビチェンパスト国の情報が必要だからさ。」
情報か、この際彼らの手土産は関係ないけど、ビェスに繋がる情報は欲しい。でも彼らと同行する必要も感じない、拒否しようと、「こt」言いかけたら。
「あそこは、ここ数年間内乱続きで荒れている、王が立ったと聞いたが国内は統一された訳じゃ無い。」
「同床異夢の貴族が群雄割拠しているありさまだ。」
「そんな所へイスラーファ様が乗り込んだら、何が起きるか分からない。」
むぅ、痛い所を突いてくるわね。堂々と乗り込むつもりはないけど、身元がバレルのは神聖同盟でコリゴリだ。
私の顰めた顔を見て、ゴドウィンがニヤリと笑うと、言い放った。
「そこで俺に考えがある。」
「イスラーファ様をビチェンパスト国の王様に紹介すればイスラーファ様の人探しも捗ると思うけどどうだ?」
私がビェストロ少年を探している事まで知っているとは、何処まで私の情報が漏れているのかしら。
でも、確かに王様なら探す手助けぐらい出来るでしょうけど、対価は何に成るのかな?
「私は王様に渡せる物は何も持ってないし、情報も大して無いと思うけど?」
私が話に乗って来たのが嬉しかったのだろう、したり顔で畳みかけて来た。
「いや! イスラーファ様がオウミ国で生した事は知っているぜ。」
「良く効く魔女の薬を作ったのも、竜騎士を育てたのもイスラーファ様だろ?」
確かにその二つは私が関わった事だけど、私だけで作り出した訳では無い。
「おばばと一緒に作った事は認めるけど、魔女や飛竜が居たから出来た事よ」
「ビチェンパスト国にも魔女並みの力を持った奴はいるさ、飛竜は居ないかもしれないがね。」
「どうだい? 俺はビチェンパスト国に伝手が有る。王様へだって工夫が要るが紹介できるぜ。」
「そうね、しばらく考えてみるわ」
「私はあなたの船に付いて行くから、ゴドウィンは船を出す用意をしてちょうだい」
「よっしゃー!」
「とりあえず、又この土人形を置いて置くから、何か用が在れば話しかけてね」
「・・・・ 分かった。」土人形見て、少し意気消沈したのか、声も力が無い様だ。
そんなにこの土人形が嫌なのかしら、私は可愛いと思うけど?
土人形を置いて、私は笑い猫の闇隠へと入った。
ビチェンパスト国へ行ってビェスを探す足掛かりは出来そうだ。
申し訳ありませんが、「小さなエルフの子マーヤ」との話の流れを合わせるためにしばらくお休みします。12月から再開する予定です。
その間月曜日に閑話を1話づつ載せます。木曜日は12月までお休みします。
次回は、12月4日から第4章(最終章)が始まります。




