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第35話 祭りの前夜

夜の闇を照らす照明はランプのみ。

薄明かりに見える調度品は質が良いもののようで部屋の中も充分に整っているのがよくわかる。


ダッケルト公爵家の一間を与えられた魔軍の4人は久々にそれぞれ用意されたベッドの上を満喫する。

公爵家だけあり適度に広い部屋で充分な寝床を与えてくれた。


身一つでも差し支えないが武器も確認し明日の計画実行にはほぼ万全の状態だ。


「……マブレット、あそこまで気を遣ってやることはなかっただろう。どうせ明日までの付き合いだ」


オルズベックはベッドに寝転がり天井を見上げたあと鋭い目をマブレットに向ける。

先ほどの夕食時のダッケルトへの対応についての話だ。


「明日までだからこそだ。あいつはプライドが高い。直前になって手の平を返されたら面倒だろう」


マブレットはベッドの縁に腰掛けランプの一つを弄りながらオルズベックの質問に答える。

そして公爵から手渡された地図を広げる。

その図面にはマブレットによるメモがびっしりと書かれている。


「はっ、入念なこったな」


その答えにまだ不服そうにオルズベックは寝返りを打って呆れたように鼻を鳴らす。


「面倒ね……まっ私は帝国のヤツらが殺せればそれでいいけど」


関心なさそうに気だるそうな声を出し褐色のイリアは髪を弄る。


1番端に座った巨漢のライノは低い唸るような声をあげ首をコキコキと打ち鳴らす。


「……どうでもいい……暴れられればな」


マブレットはバラバラのメンバーの様子を特に気にする様子もなく地図を見つめながら淡々と話を進める。


「お前たちにチームワークなんぞはハナから期待しちゃいない。俺自身もリーダーぶるつもりもない。どうせ明日限りの急造チームだ。だがだからこそ明日は……存分に暴れようじゃないか。トバイケルに恨みのある者は思い出せ……故郷を焼かれた日のことを……教義に殉じたい者は明日その心を燃やし尽くせ」


マブレットの言葉にその場の全員の空気が変わる。

全員が獣の獰猛な眼になりその雰囲気に近くで鳴いていた夜鳥でさえも囀りを止め辺りの虫も鳴きやんだ。

その一瞬彼らの隠していた凶悪な殺気と魔力が漏れ出たのだった。


それは小動物だけが察知した惨劇の予感だった。


低い笑い声を上げオルズベックは鋭い犬歯を剥き出しながらマブレットの目を見る。


「いーや、アンタは立派なリーダーだぜ。マブレットよ」


マブレットは答える代わりに首を横に振りつつ肩を竦めた。

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