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「すまなかった」
あの後一先ず洞窟に戻り腰を据えて話すことにしたのだが、開口一番がまずは獣人の彼、ジュードの謝罪だった。
鋭く自分を見つめていたジュードだったが、どうやら林の中に小さな女の子が1人でいるのを見つけて心配してきつい物言いになったらしかった。
「いえいえ!心配してもらったのにこちらこそ怒っちゃってごめんなさい。で、でも!さっきも言ったけど本当に16歳なんですよ。えっと、えっと、証明は
あ!ギルドカードに書いてあるの見せれば良いのかな?」
確か魔力をカードに流せば名前と年齢と性別が見れるようになるって言ってたよね?
早速ギルドカードを胸元から出そうとしたユイを慌てて止めるジュード。
「いや!そこまでしなくても信じるよ。
えっと改めて狼の獣人のジュードだ。剣士をしている。
確か門を出る時後ろを歩いてたよな?本当は行けるとこまで進んで野宿でもしようと思ったんだがなんとなく気になって。
いや、家出娘とか思ってなかったぞ!ほんとだからな!」
いや、それ確実に家出娘だと思ったんだろ!とは思ったが黙っておくことにした。なんとなく墓穴を掘りそうだったから…
「えっと、ユイと言います。"16歳"です!こっちは相棒のモフ丸で2人で旅に出るところです」
胸を張って宣言した。勿論16歳だという部分は強調して。
しかし堂々と宣言したもののジュードは眉間に皺を寄せて、とーーーーっても難しい顔をしている。
イケメンはどんな顔をしてもイケメンだがやっぱりイケメンすぎて眉間に皺を寄せられると倍増しで怖い。
「あーっと、ユイだっけか?ユイは本気で旅に出るつもりなのか?まだおさな、じゃなくて若いのに?1人で?武器もなく?
いやいや!無理だろ!ぜーーーーったいやめとけ!」
めちゃくちゃためてやめろと言われた。しかも絶対幼いって言いかけただろ。
とりあえず
「若いってのはやめる理由になるの?あと1人じゃないよ、モフ丸いるし。それに武器はなくても魔法使えるから無問題!」
ドヤってみました!
「いやいや、確かに若いってのはやめる理由にならんかもだが魔法使えるだけじゃダメだろ!それにその軽装でどうやって旅に出るんだ?野営の準備やら食材やら万が一の時の武器やら色々あるだろ!」
あれ?モフ丸についてはスルーされたぞ。
でも言われて気づいた。野営の道具!あと食材!
うーん、うーん、うーん………
「えっと、確かに野営の道具は持ってないかな?でもまぁ昨日も木のウロで普通に寝れたしそこは大丈夫かな?武器はまぁ持ってないもんは仕方ない!!
あと食材については森で調達一択で!今夜は今日のお昼にしっかり食べたから抜きの方向で考えてます」
ユイのセリフを聞いて唖然としたのは言うまでもない。
いや、ここまでやり取りできただけ立派だ。
洞窟の中に妙な沈黙が広がった時、モフ丸が慌てて伝えてきた。
『あ!!誰かが洞窟の外にいるよ』
「えっ!?」
モフ丸に言われて慌てて入り口に顔を向けるユイ。
ジュードにはモフ丸の声は聞こえなかったが一拍遅れて気配を感じ取ったのか、武器を持って腰を浮かせながらこちらも入り口に顔を向けた。
2人がいる場所は入り口から50メートル程入ったところにある開けた場所で、壁際で座って話していたため姿を確認することはできなかったのだ。
ユイは念の為結界を自分とモフ丸にかけ、入り口から1番遠い場所まで下がった。
ジュードも警戒しながら剣を右手に持ちゆっくりと進んでいく。




