後編
ジョージアの説教は延々と1時間続いたじゃない。
義姉メルダは、「グスン、グスン」泣いて、ジョージアが片手でがっつり、ホールドしているじゃない。義妹、名前何なの?自己紹介もしないから、忘れたじゃない。
義妹は、ジョージアの後ろで、顔覗かせて見ているじゃない。
こいつら、何?男に言わせて、こいつも、義父が生きている時は、何にも言わなかったくせに。
お亡くなりになられたら、態度を豹変して、
あのね。トランダパパは、領地持ち貴族だけど、いつも、お金を稼ぐために、商機を逃さないように、いつも、神経をとがらせていたのよ。
それは、家族、領民のためなんだからね!
貧乏だけど、いつも、家にいるパパと、お金を稼ぐために、家を空けるパパ、
どっちも、素晴らしいパパなんだからね!
もう、良いじゃない。お金は一生、贅沢しなければ・・・いや、贅沢するほど、あるからね!
トランダパパは大好きだったけれども・・・
こいつら、私を葬儀に参加させてくれなかったのだからね。
私は出て行くのだからね。
トランダ伯爵家は、終わりだからね。
「・・・・君の不行跡はこの通りだ。総領娘であるメルダをないがしろにした罪、本来なら修道院に行かなければならないが、特別に、心を入れ替えるのなら、この屋敷にメイドとして、暮らすことを許そう。ランドリーメイドだ。メルダとメルルのドレスを洗ってもらおう。メイド長に厳しく監督してもらうからな」
・・・もう、出て行くで決まりじゃない。言ってやろうじゃない。
「名乗らないので、どこの家門かわからないから、敬称省略で失礼します。どこかの馬の骨の子息様、貴殿は婚約者であって、今は当家とは全く関わりがございません。
廃嫡の意思決定は、当主代行のメルダ義姉様のお考えによるものです。
義姉の口から聞きたいです」
ビクン
と義姉は肩をふるわせて
義姉はますます悲劇のヒロインっぽく振る舞うじゃない!
悲劇のヒロインは劇に必要だけど、こんなヒロインはいらない。
男の寵愛や溺愛で、救われるヒロイン。
ジョージアは、背中に義姉を隠して、私の視線から隠す。
「恨みは俺が買う。格差妹よ。俺を恨め」
・・・フン、恨むほど関わりないじゃない。
「知らないじゃない!さっさと廃嫡届持って来るじゃない!」
・・・・
私は、テラスで廃嫡届にサインをし、トランク一つだけ荷物を持つことを許された。
部屋のものは全部、私の稼ぎで買ったものだけど、くれてやるじゃない!
ガヤガヤガヤ!
外が騒がしいじゃない。
ローブを羽織った老人と、平民の若夫婦みたいなのが、中庭に入ってきた。
すぐ後ろに、平民の遊び人風みたいな人もいる。
既視感が半端ない。
そして、更に、後ろに数人の貴族が付き従う。貴族がお忍びで街に行く服装だ。
「あら、どなた?誰も入れるなと言ってあるのに、門番は何をしていたのかしら」
「フォフォフォフォフォ、入れてくれなかったので、眠ってもらった。アルバルト殿」
「はい。この聖剣が目に入らぬか?法王様であるぞ」
ピカと剣が光った。劇で使う小道具ではない。
皆は
「「「ハハー」」」
と膝を付いた。
義母は、私の前で見せたことのない満面の笑みを披露するが、
「お忍びでこられたのですね。当家は・・・」
義母の話の途中で、法王様が、私に話しかける。通常、高位の者からのお声掛かりを待つのが礼儀だ。
それが、お忍びで来ていたとしても変わりない。
「おお、リディ、息災か?相変わらずヒラヒラだのう」
「ちょっと、好きで着ているのではないんだからね!」
「まあ、まあ、また、膝抱っこしてあげる・・・年ではないのう。立派なレディじゃ」
「見違えたな。リディよ」
「ええ、リディちゃんのヒラヒラは可愛いわ」
「よお、リディちゃん。美味しいおやつはどうだい?」
私は劇をお忍びで見に来た法王様と勇者様と聖女様とお知り合いになった。
三人は大笑いをなさって観劇をされた。
そして、遊び人風の人は、
「国王陛下・・・でございます」
「「「ハハーーーー」」」
王宮で働いたことのある使用人が叫ぶと改めて、皆は膝を付く礼をする。
「おい、おい、女の子一人に、大勢がやいのやいの、この遊び人のアルトが許さない」
これは劇の決め台詞だ。
あの劇を依頼に来て、金貨を手ずから渡してくれた貴族様。
薄々分かっていたよ。
その場で劇の内容に許可出来る者は、国王かそれに近い者だ。
「ちょっと、今、大変なのだからね。家を出て行くのだからね!」
「「「何!」」」
後ろの貴族達が騒ぎ立てる。
「なら、当家に!」
「いや、当家は商売を手広くやっている。是非!」
「もう、良いのだからね。貴族はこりごりだからね!」
☆
「リディ・・・いや、リディ嬢よ。何故、猊下と国王陛下の知り合いであることを隠していたのか?
言わないお前が悪い。
これで、懲りただろう。廃嫡は君の贅沢を懲らしめるためだった。
さあ、その廃嫡届をこっちに渡しなさい・・」
・・・ジョージア、貴族らしいすがすがしい手の平返しだ。
しかし、経験が浅い。ここまで来たら手遅れだからね!
「おう、おう、さっきから聞いていれば、言いたいことを言いやがって、おう、リディの装飾品と義姉と義妹の持ち物を鑑定してみろ」
国王陛下が、鑑定士を呼び持ち物の査定を行った。
「これは・・・リディ様のは・・・良くて、中級品、装飾品ギルドの若手の職人の品です。
そう言えば、才能があるが、人脈のない職人の品を買いあさる・・いえ、宣伝のために身につけるヒラヒラ令嬢の噂を聞いたことがありますが・・・失礼しました。
対して、メルダ様とメルル様の物は、王都の一級品です。
宝石一つで、リディ様の総額を超えているものもございます。
義母様のは・・・全て、最高品質です」
「「「・・・・・・」」」
ダンマリじゃない。
聞いた話では、トランダ伯爵様は、入婿で、財政破綻をしたトランダ家の建て直しをされた。
義母は生粋の貴族令嬢で、お金も沸いて出てくるものだと思っているようだ。
劇も、トランダパパが、あちこちに、顔を出して、宣伝をしてくれたじゃない。
私の知らないトラブルも解決していたじゃない!
もういいね。パパの愛を知ろうとしないし、もう、こいつらとは家族ではない。
ジャージアは最後、子犬の目のようにウルウルしてたけど、
義母と、義姉と義妹は何も言わないじゃない!
これから、自分たちが動かなければ、状況が変わらないって、経験してもらうんだからね!
帳簿も見なかった義母と、贅沢になれた義姉妹を、背負うことになったジョージア。
だけど、危機的状況なのは、理解しているじゃない。フン!
今更、後悔しても遅いんだからね!
「・・・リディ嬢よ。収入の七割が劇の興業で、領地の収入は、ほとんど領地の設備投資に使っている。縁が切れた後も・・その、お金は入ってくるだろうか?」
「契約だと、私の養子縁組がセットじゃない!これからは、王家が取り仕切るって言ってたじゃない?入ってくる道理はないじゃない!契約書は貴族院に届けたから、全ての貴族は知っているじゃない。私でも助けられないじゃない!」
「俺はどうしたらいい?」
「フン、平民から、貴い家系を守ったのだから、ヒーローの責務を全うしなさい。
これから、社交界に出て、商機を探すしかないんじゃない!」
私は、屋敷を出て、孤児院に戻って、シスターのお手伝いをしようとしたが、そうは問屋が卸さなかった。
「もう、誰でも出来るじゃない!」
「そう言うリディだから、任せるのじゃ」
「おう、創始者はお前だ。他の奴だと劣化版になる」
法王様と国王陛下に言われたじゃない。
王家のカゲ工作で使う王都のマン男爵家の養子になったじゃない。
劇の監督も続行じゃない!
男爵令嬢じゃない!
貴族学園に行くしかないじゃない!
☆貴族学園入学式
呼ばれた控え室に行こうとしたら、ボヨン♪と縦ロールが揺れる釣り目のお姉さんと取巻きがいたじゃない。
「そこのピンクブロンドの貴女、ここから先は、生徒会の方々の控え室よ」
「ちょっと、知っているわよ!呼ばれたのだからね!」
「オホホホホホホ、迷って、殿下に道案内をしてもらうつもりね。これだから、成り上がりは・・」
「待っていたよ。リディ、入学式の挨拶の予行をしよう」
「リディ様、さあ、早く、時間がありませんわ」
「「王子殿下と王女殿下!」」
「あの、入学式の新入生代表の挨拶は・・・」
「ああ、成績優秀者だ。こればかりは、貴賤の区別はない。ローゼン侯爵家の・・・・失礼」
「プリシラですわ!」
「君は、圏外だから一般控え室に行きたまえ」
「ヒィ・・・・分かりましたわ」
・・・私は入学試験でトップを取った。皆は買収と言うのだからね。
だけど、日本で短大まで行ったから家門学と地理、歴史だけ頑張ったのだからね!
王子様と王女様は、あらから、王宮で会ったのだからね。
簿記の見方を教えたのだからね。
そして、入学式が終わった後に、
ジョブ、スキル鑑定が行われるのだからね。
魔族と戦争していた時代は、戦時体制で6歳で強制的にやっていたけど、今は任意だからね。
貴族は、学園の入学式直後に行われるのだからね。
ピカ!
・・・あら、水晶が、青く光ったじゃない!
「聖女です!ジョブ、ピンクブロンド系聖女と出ました。スキル・・・正統派ピンクブロンドヒロイン・・・これは意味不明です。賢者会議に報告します」
聖女になったじゃない!
ピンクブロンドの聖女じゃない。絶対に、一波乱あるじゃない!
「もしかして、後発性聖女、リディ嬢は、孤児院や救貧院に寄付をしているから・・・女神様から選ばれたのだ」
と賢者会議で決定された。
その後、王子の婚約者の選考で一波乱が起きるが・・・・詳細は伝わっていない。
王国年代記では、出生不詳の聖女のピンクブロンドの王妃が存在する。
彼女は天から舞い降りた天使だという説がある。「話さなければ天使、話せば老獪な商人よ」と、ささやかれた。
彼女は、教会勢力や新興の貴族や商会を後ろ盾にし、
商業の発展により、門閥貴族が没落する中、王家の威信は失墜することはなかった。
教会勢力とも仲が良好であった。
一説には、法王を賛美する『法王様世直し旅』の興業を王家が後押し、法王庁との仲を良好なものにし。
大衆演劇群『暴れ野郎国王陛下』が庶民に浸透し、平民の間に、王家への敬慕が養われたからとも言われる。
そして、陛下とピンクブロンド王妃は、経済を回す政策を積極的に実行し、貧富の格差が広がったが、貧しい者にも仕事が回るように施策したと言う。
この大衆演劇群の最初の考案者は分からないが、
ただ
『法王様の世直し旅』と『暴れ野郎国王陛下』を王宮で上演させて、細かいチェックをいれるのが、ピンクブロンドの王妃から、王妃固有の仕事になったと云われる。
最後までお読み頂き有難うございました。




