新しい日々へ
「マル」
泣き出した真悠の頭を撫でていた手が止まる。
何も答えずに、下を向いている彼のメガネを震える手で取り顔を覗き込む。
「マル……だよね」
「誰かと……間違えてませんか?私の名前は丸市ですが……さ、風邪ひきますよ」
ニッコリと笑うと、丸市はスッと立ち上がり真悠の手を取るが、目を合わせてくれない。
「マルだよ!!その瞳は、絶対にマルだよ」
丸市をしばらく見つめるが、やはり目を合わせてくれない。
真悠は、ため息をつき、肩を落としながらよろよろと立ち上がる。
「人違いですか……すみませんでした」
頭を下げ、部屋へ戻ろうとした真悠は少し積もったばかりの雪に足をとられた。
「真悠!!」
丸市は、慌てて真悠を抱きかかえると、ニヤニヤ笑っている真悠と目が合う。
その瞬間、丸市はシマッタという顔。
「ま……!!だま……したの?」
口をパクパクさせていた丸市は、しばらくどう誤魔化そうか考えていたが、諦めた様にため息をつき笑った。
「あんまり、無茶なことしないで、俺じゃなかったら頭ぶつけてたかもしれないんだぞ」
「マル、お帰りなさい」
「ただいま」
真悠は、マルを試すためにワザと転んでみせたのだった。
自分の部屋へ、マル……もとい、丸市を招き入れると丸市は、真悠を抱きしめ何度も何度もキスをする。
「真悠、会いたかった。
ずっとこうやって、抱きしめたかった」
マルは、毎日毎日、一日中、神様の側で説得、お願いをして、丸市という人間として生きることを許してもらったのだという。
相当、ウザかったんだろなと真悠は思った。
真悠の記憶は、もちろん消されているから最初から完璧な出会いを装い、真悠と恋人になろうと思っていた所に、例の猫の時に襲ってきたアイツがまた、丸市を襲った……らしい。
あの、ノラちゃんは相当マルと丸市が気に入らない様だ。
「しかし、何で真悠は記憶を取り戻したんだろ?神様が、手を抜いたとは考えられないし……」
丸市は、首を傾げ真悠を見つめる。
真悠は、高鳴る胸に手を当て笑う。
「心は、ずっとマルを呼んでたんだ。
忘れたくないって、叫んでた。
神様も、人の心までは変えられなかったんだね」
「真悠、今度こそずっと側に居るって約束するよ。
愛してる」
ペットのマルと過ごした日々は終わったけれど、これからは丸市との甘い日々が続いていく。
つたない文章でしたが、読んで頂いた皆様ありがとうございました☆




