十五
「くく、プクク…」
「おい、笑いたいなら笑え。」
私の腹筋は崩壊寸前だった。
「いや、うん…いい!いいよ!クク、これはバレないわ。あー、村のじいちゃんソックリ!」
「そうだろう。この付けひげに白髪。ホクロやシワも書いたからな。」
「それやったのパトリシア様でしょ。」
私の仕事が終わりどっかに消えていたジュドが待ち合わせ場所にやってきた。
完全におじいさんにしか見えない見た目で。
去年なども変装はしたりしていたがあくまでも服装を変えたり顔を見えにくくしたりだった。
ごった返した人混みの中でも恋する女の子の目は中々誤魔化さずに逃げ回ったことも一回や二回ではない。
しかし今回は違った。
すごい。
はっきりいってこれから陽もくれるというならまずバレないと思う出来栄えだった。
こんな芸当ができるのはパトリシア様くらいしかいない。
仕事とはいえ毎日会う中でこんなことをして貰えるくらいには気に入られているらしい。
「行こっか、おじーちゃん」
「…実際そう呼ばれると不本意だが、今日は孫と祖父設定で行くしかないな。」
「うんうん、そうにしか見えないからね。」
私達はこうして祭の中へと繰り出した。
甘いものや、辛いもの、ご飯系にも目移りしながら屋台を物色する。
楽しい、やばい。
毎日お祭りならいいのに、とこの瞬間はいつも思う。
色々腹ごしらえしてからいつもの酒場に行こうとしたが、どうやら満席のようだった。それどころか店の外にまで客が並びわいわいと活気が溢れている。
「うーん、こりゃ、厳しいね。」
「でもなぁ」
「そうなんだよね。」
何がとも言わずに話す。
言わなくともわかる。
飲み足りないのだ。
「仕方ない。俺の部屋で飲むか」
「お、いつもは中々自分からは入れてくんないのにいいの?」
「飲み足りねぇ」
「だよね!よし、もっかい屋台を一周してから部屋行こ!」
わーい!と年甲斐もなくはしゃぐ。
気になっていた屋台でつまみを買ってお酒ももちろん調達。
あー楽しい。
ふわふわとすでにほろ酔いな私。
もしかしたらジュドもほろ酔いかもだけど特殊メイクのせいで顔色なんてわかりゃしない。
「あ、そういえば、せっかく大変装したのに酒場行けなかったね。」
「バレないってわかっただけで今年はいいだろ。来年からはお前にやってもらうわ。」
「えー!…まぁいいか…そだね、パトリシア様に一応今度聞いとく。」
お祭りで食べて飲んで、酔っ払ってまた部屋で飲む。
大人になったなーなんて思いながら、私達はご機嫌に部屋へと切り上げていった。