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水晶玉を使って、魔力測定を行った。
机の上に置かれたそれは、無色透明の球体で、まるで氷を閉じ込めたように冷たい光を放っている。マーリエが呪文のような言葉を静かに唱えると、淡い光がその内部を満たし始めた。
「では、レン様。両手を水晶玉に添えて、ゆっくりと呼吸してください。」
言われた通りに両手を置く。ひんやりとした感触。息を吸って、吐く。そのたびに、水晶の中の光が脈打つように強まっていった。
最初は、ほんのかすかな揺らぎだった。
だが、それが一拍ごとに膨らんでいく。
まるで、透明な水面に墨を垂らしたみたいに、光が中に染み渡っていく。
やがて部屋の空気がわずかに震えた。
マーリエが、驚いたように小さく息を呑む音がした。
「……っ。これは……」
「どうしたの?」
「いえ……少々、お待ちくださいね。」
彼女は机の下から分厚い書物を取り出し、慌てた様子でページをめくる。水晶の中の光は、もう限界まで満ちていて、白く、眩しく、まるで中に小さな太陽でも封じられているみたいだった。
「レン様……驚かないでくださいね。」
「うん。」
「どうやら……この国でも屈指の魔力量をお持ちのようです。貴族の中でも特に魔力が多いと評されるお父上よりも……多いですね。」
「へえ。」
思ったよりも冷静な声が出た。
特に何も感じない。
多いからなんだ、という気もする。
マーリエは少し眉を寄せて、困ったように微笑んだ。
「ですが……子どものうちから魔力がこれほど強いと、制御がとても難しくなります。暴走の危険もありますから、少しずつ練習していきましょうね。」
「うん、まあ、とにかくやってみよう。」
そう言って、私は床に座り直した。
マーリエの指示に従い、軽く目を閉じて、自分の体の中を意識する。
……すぐに分かった。
自分の中に、温かいものが流れている。
血液のように、心臓から全身へ、また戻ってくる感覚。
それを「魔力」と呼ぶのだろう。
意識を向けると、それは思ったよりも素直に動いた。
足先から指先へ。頭の先から胸の奥へ。
ぐるぐると、流れる。
血流を感じるように、心地よい。
「……割と簡単だね。」
思わず口に出すと、マーリエが目を丸くした。
「お上手です。普通は、魔力の流れを掴むだけでも数日かかりますのに……」
マーリエは水晶玉をちらりと見て、ほっと息をついた。
「ちなみに、巡らせるだけではなく、“体を活性化しよう”と意識を向けると、身体強化になります。」
「身体強化?」
「ええ。戦士や冒険者が使う基本魔法のひとつです。筋肉や神経に魔力を流し、瞬発力や反応速度を高めるんです。」
「なるほど。」
私は再び目を閉じ、今度は魔力に少し命令を加える。
“強くなれ”と。
すると、体の奥で何かがぱちりと弾けたような感覚がした。
指先まで血が通うように、全身が熱を帯びる。
目を開けると、部屋の空気がほんのわずかに揺れていた。
「……あったかい。」
「それです。成功ですよ。」
マーリエが嬉しそうに笑った。
それを見て、私も少しだけ笑った。
悪魔の子でも、力を持っていても、
――こうして褒められるのは、やっぱり悪くない。




