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馬の走行に関するデータ

 ファンタジーを読んでいると良く出てくる移動手段として馬車や馬があります。

 馬車で一日とか二日とか書かれていますが、ではその馬車の速度は? 書かれている距離は? 他にも馬に乗って全速力で駆けるのは時速どのくらいなの? など、色々と疑問が湧き、調べてみました。

 ここではそれをまとめ、小説を書く上で参考になればと思い公開します。




 Ⅰ)移動手段別の速度と距離


 ファンタジー的世界は、殆どが中世の世界観で描かれています。

 そして殆どが電気・ガス・石油は主エネルギーではない、つまりは車や電車などはない世界観となっています。

 現代日本では当たり前にあるこの車や電車、バスなどの便利な移動手段がない中世的世界での移動手段は、大抵は徒歩や平民なら乗合馬車などであり、騎士や下位貴族の男性の場合は馬で、貴族女性や身分の高い男性貴族は馬車が主流となっています。

 ここではその移動手段の速度と距離を記します。


 ■徒歩───────4〜6km(時速)

  一日の行程────25〜40km


 ■駆け足──────10〜12km

  一日の行程────50〜65km


 ■馬(単位:時速)

 常歩(ウォーク)────〜約6km

 速足(トロット)────約13〜15km

 駈歩(キャンター)───約20〜30km

 ※「パカラッパカラッ」と表される走り方

 襲歩(ギャロップ)───約60〜70km

 ※全速力


 ■馬での一日の行程

 常歩────50〜60km(2時間毎に30分休憩を入れる)

 速足────持続時間は1時間、30km〜45km

 駈歩────持続時間は30分、最大30km

 襲歩────持続時間は5分、最大4〜5km


 ※馬で襲歩、つまり全速力で駆けての急使は、馬を頻繁に変えながらじゃないと無理という事ですね。

 つまりは襲歩で進める距離はせいぜい3kmという事になります。


 駈歩でもせいぜい30kmなので、やはり急使はその距離毎に馬を変える必要があります。


 ■馬車(時速)

 通常移動────〜6km

 中速移動────6〜10km

 高速移動────〜20km


 ■馬車での移動距離

 一日で進めるのは通常移動で50kmが限界。


 ※馬車での高速移動 (全力疾走)は長距離は無理。







 Ⅱ)移動時間と距離に関する考察


「荷馬車」なら一頭で牽かせるだろうと思われるけども、荷車に荷を積んだ場合、積載量により速度が落ちると思われます。


 場合によっては荷馬車が荷を下ろした帰りに、村までの帰りだけという条件で人間を乗せての小遣い稼ぎをするかもしれず、その場合も荷馬車の速度は人間の数によっても落ちると思われます。

 時速はだいたい4〜5kmくらいでしょうか。


 大勢の人間を乗せる「駅馬車」は、やはり速度はそこまで出せないと思われます。

 大型の幌付きの荷台を引くとなると、馬への負担が大きくなるからです。

 駅馬車は現代で言うバスの様なイメージでしょう。

 時速でいうとだいたい3〜4kmくらいでしょうか。


 そこまで大勢を乗せる訳ではない「辻馬車」は、数人乗りと言うことで現代のタクシーのイメージ。

 こちらは貴族の使う馬車よりも性能が劣るため、だいたい時速5kmくらいかと思われます。


 最後、「貴族の馬車」。馬の質も良く、普段はそこまで馬に無理をさせず、餌も豊富で上質。更には手入れも丁寧にされている。

 そんな馬が牽く貴族の馬車は装飾等が多く、上質な素材で頑丈にできていて重いが、だからこそ二頭で牽かせると思われます。

 そんな貴族の馬車は現代でいうとリムジンあたりでしょうか。

 そこから時速は6kmほどだと推察できます。


 賊に襲われ逃げる際も、最大速度の時速約20kmくらい出せるのは貴族の馬車くらいと思われますが、その速度を出せるのは最大30分。

 その30分で人里、もっと言えば騎士団や兵士が駐屯しているような街に辿り着かないと賊の餌食になるという事です。

 馬車を牽かせた状態で馬を全速力で走らせて、「馬を走らせ賊から逃げる事半日」などは現実から乖離しすぎていておかしい訳です。


 人間でも全速力で半日も走る事が可能かどうか、考えてみてください。

 いくらファンタジーや小説だと言っても、現実にもいる「馬」を出す以上、能力は現実に即す必要があります。



 ではどうやってそれを覆すか。


 馬よりも速く走り、馬よりも体力が多い「幻獣」や「魔獣」や「魔物」を取り入れればいいのです。

 そういった現実には存在しない生物は、あなたの設定次第でいくらでも強く、速く、かっこよく、強健にできます。

 その際に役立つのが、現実に存在する「馬」のデータです。

 速度、走行継続時間、1日で移動できる時間。

 それがわかっていれば、それを上回る生物を作り上げ、走行速度や走行継続時間などを設定する事が簡単に行なえますから。


 現実に即したデータでの運用であれば、国の大きさ的に首都から辺境まで何日かかるか等も逆算できます。

 例えば首都 (帝都や王都)から辺境伯領の領都までは馬車で7日と書いたとしましょう。

 馬車での移動距離は1日で50kmが限界だと書きました。

 だとすると、馬車で7日は


 50km × 7日 =350km


 となります。

 東京から名古屋までが366km、仙台までが約350kmだそうなので、距離はそんな感じになりますが、もっと遠くにしたいのなら、例えば700kmくらい離れさせたいなら倍の14日と設定するといいでしょう。


 ただしこれは馬車で通常の移動速度の場合です。

 駆足で馬を変えつつ、首都から辺境まで急使を出した場合は、時速30kmで30分毎に馬変えし、休憩を2時間毎に30分取り、1日10時間走行、休憩は合計2時間、馬変えの時間が合計2時間くらい、食事休憩が1時間を2回、睡眠時間が6時間として計算してみると、


 0.5時間 × 30km × 10時間 = 150km

 700km ÷ 150km/日 =4.6666…日


 となります。

 つまり5日目に到着するという事になります。

 道は平坦なものばかりではなく、さらに街や村などが平均的に存在している訳でもないのが殆どなので、実際はもっと時間がかかるでしょう。


 この様に、馬の速度に関するデータを知っていればかなり詳細な首都から辺境までのデータ設定ができます。


 ちなみに辺境まで700kmは、割と小さい国となります。

 日本の大きさは、島嶼部を含めて東西にも南北にもそれぞれ3,000kmほどだからです。

 日本のこの南北に長い距離よりも、中華人民共和国(南北5500km、東西5200km)やアメリカ合衆国(南北2700km、東西4330km)、ロシア(東西1万km)、カナダ(東西5550km、4630km)の方が国土は広いし長いです。

 これを踏まえて国の大きさの設定をする事をお勧めします。

 私達日本人が小さいと思っている日本の国よりも、異世界の国が帝国で強大な国のはずが実際は日本よりも小さな国だとすると、違和感になりかねません。


 今回はここまで。

 ミニ知識を思いついたら、また続くでしょう。


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