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森の長とアーデンの父母

私達はビクターさんが作ってくれた お弁当で昼食を終えて森の中を散策する

縦に菱型に成っているこの森には、街とは反対側の森端に泉が有るのだけれど、正直泉と言うべきなのか悩む

水溜り?程度の大きさ縦横2m程しか無い


「泉なんだよね?これが…」


「オーディンもスペラもそうだと言ってる」


「そう、なんだ……でも、あれだけの効力が有るし下手に私達が飲んだり、汚したりしたらまずいよね?」


「そうだな、家はもう少し北側に造るか」


「そうだね、南側はユースタフに近くなっちゃうものね」


「国境も有るし大丈夫だとは思うが念のためだ」


「うん、一生物だもの頑張って造ろう!」


少しでも良さそうな場所を探して歩き回っていると先頭を歩いていたオーディンが

[ねぇねぇ、このお爺ちゃんが話が有るって言ってるよ]


「え?この大樹が?」

どんなに見上げてもその先が見えない程大きな大木では或るけれど葉は枯れ始めチラチラと落ちては裾を赤茶色に染めていた。


[うん、そう]


アーデンが大樹に手を当て何か話し出している


「絵里子、この大樹はもう直ぐ終わりの時を迎えるそうだ、だから自分の中を家にすると良いと言ってくれているがどうする?」


「え?どう言う事」


「もう直ぐ寿命が尽きる。そうしたら中を好きに切り取り住めば良いと言ってくれてるんだ」




私はその大樹を見上げた………

樹齢で言うと一体何千年生きていたのだろう、男達が手を繋いでも35〜6人でやっと一周出来るか程の大樹だ。なぜこの時に寿命が来たの?

まるで私達が来る事が分かっていたみたいに。


「額を当てても私では聞こえない」


「俺が絵里子に渡した魔力程度ではもう彼の送るイメージを読み取れない。送れる力も彼にはもう無い……答えを待っている」


「アーデン、きっとこの大樹は待っていてくれた気がするのだから私は大樹の言葉を尊重したい」


「そうか、わかった」

そう言ってアーデンはその大樹と長い事交換をしていたのだけれど


「アーデン?!」

彼が涙を流している、何が有ったの?私はその大樹とアーデンを交互に見つめながら話し終わるのを待っていた


「ありがとう、またいつか…」

そう言ってアーデンは大樹から手を離し右手の袖で涙を拭った


「アーデン?何が有ったの?何を言われたの?」

アーデンが私に近寄り肩に頭を乗せ囁くように話し出す。


「この樹は俺の両親の事を話してくれた」


「え?ご両親のことを知っていたの?この大樹が?」私は大樹を見上げた




◇それはもう、24年程前の事1人の人間と※※※※人がこの地にやって来た◇


◇我らが拒絶するも毎日毎日、雨の日も風の日も1日とて欠かす事なく※※※※※※※からやって来た。これから来るであろう我が子に言づてを頼みたいそして、渡して欲しい物があるのだと言う どれだけ愛しどれだけ大切だと思っていたかを伝えて欲しいのだと………


我らは話し合った果たして聞き入れて良いものか


息子達は言う父じゃに任せると


我は招き入れた

その者は我が母である山の民の子と※※※※人だった。その者は我以外とは話せぬゆえ泉の水とエドナを食する事を許した。


その者は言う 自分には精霊の加護が無くなり山の郷を追われた。愛する我が子を取り上げられて泣く泣く山を降りたと。

だが、どうしても諦められずこの先逢う事も叶わぬ我が子にせめてどんなに愛しく大切に思っていたのかは伝えたいと。


山の精霊の加護を持った民は必ず最後にこの地を守る為に来る事を知っていたのだと。

それがいつになるかも分からぬが、もしも我が子が来た時には伝えて欲しいそう言い残し去った。◇




良いか伝えるぞ「愛しい子リオン、貴方が産まれた日のことを忘れた事は有りません。貴方を抱きしめ、側で貴方の成長を見守れない私達を許して欲しい。貴方を置いて郷を去った事、その理由を告げられない事を許して欲しい、そして、どうか、どうか幸せになって 。いつでも、どこに居ても貴方のことを思っています。この樹に貴方への贈り物を託します 心から愛しています 精霊の加護が貴方を愛し守ってくれますように」

確かに伝えたぞ。間に合って良かった、父母から託された物は我が根元に有るまたいつの日か会おうぞ…………


「アーデン、木の葉が……」


「あぁ、別れは済んだ また、会おう長よありがとう」

アーデンは舞い落ちる木の葉を見つめながらいつ迄も「ありがとう」と呟いていた。


この森の長だからこそ人と話せたのだろう。全てはこの日の為に

そんな想いが過ぎる 長の根元を探ると布に巻かれた一本の剣が出てきた

この何年もの間根元に埋まっていたとは思えないほど綺麗な剣

錆びる事もなく、刃こぼれする事もなく持ち主になる人を待っていたかのように


「これは、何で出来ているんだろうね?」


「わからんが、見事だ」


「何故これをアーデンに残してくれたんだろう?いつ来るかもわからないのに」


「考えても仕方ない」


そう言ってアーデンが手に持ち鞘から抜き取ると

シュルルルズズズチャッ


「な、何?」


「クッ、離れない」

剣はアーデンの腕に巻き付くように絡まった


「やだ!アーデン、アーデン大丈夫?」


[騒々しい、慌てるんじゃねぇよ]


「「!」」


「ス、スペラ?」


「お前、どうした?」

全身が真っ白に変わったスペラが長の木に止まっている


[やっと素の俺に戻ったぜ]


「え?そんなスペラ可愛くない〜!」


[エリ、それは無いだろう?俺っちは152歳なんだぜ?いつまでも可愛い振りは出来ねぇよ?]


「な、長生きなんだね?」


[まぁな、色々今までありがとうな!あん時は死ぬかと思ったぜ。]


「いえ、どういたしまして?」


[それでなんだがよ、俺はこれでも一応森の知恵者とか言われててよ、長生きするし物知りだからそう言われてるんだがな。知ってる事は取り敢えず、アーデンとエリよりは多いから役には立つと思うぜ。これからもよろしくな!]


「よろしくお願いします」(ペコリ)


[それでだ、その剣の事だけどよ]


「わかるのか?」


[おい、アーデン わかるのかはねぇよ?わかるから声かけたんだぜ]


「す、すまない」


[まぁ良いって事よ、それでな、その剣は『(まと)りの剣』だな]


「纏りの剣……」


[その剣自体意思が有るんだよ、アーデンに纏付いてる位だ気に入ったんだろうなアーデンをよ]


「どうすれば離れる?」


[鞘に納めれば離れるさ]


「成る程」そう言って剣先を鞘に納めるとシュルルルと離れて普通の剣になった


[そいつは魔力が大好きでよ、アーデンの思うままに魔法を纏うんだよ。アーデンが炎を出せば剣も炎を纏うってな]


「そんな凄い剣をどうしてご両親は持ってたのかしら?」


[その剣はまぁ作れる奴はそう居ねぇな。アーデン達の郷に有ったんじゃねぇか?魔力の無い普通の人間が持つならただの剣だしよ、魔法を使える奴が持つからそいつは喜んで形を変えるだけでな]


「それじゃあ、ご両親は知っててアーデンに渡してくれたのかな?」


[さぁ?それは俺っちにはワカンねぇが良い物貰ったなアーデン]


「あぁ、そうだな」アーデンはとても嬉しそうで良かった。


「ところでスペラはこの森の事知ってたの?」


[そりゃぁよ知ってるさ、ここを目指して飛んでる最中に襲われたんだからよ]


「そうなんだ、ここに用があったんだね」


[あぁ、長の最期の見届け役に選ばれたんだからな。間に合って良かったぜありがとうな]


「え?スペラもなの?なんだか気味が悪いみんなこの時期に重なる用に集まるなんて」


「絵里子?俺は絵里子がここに一緒に来てくれた事嬉しいんだが……」


「うん、それは私も嬉しいの。ただ、何となくね」


[とにかくよ、家の場所も決まったんだろ?ちゃっちゃと進めようぜ!俺っちと馬っちの部屋も作ってくれよ]


「フフフ、チャッカリしてるわよね」


「そうだな、進めようか」


「そうだね。楽しみ!」


予定では1階にオーディンとスペラの部屋、キッチン、トイレ&バスを作り2階に応接間と調薬室そして3階に寝室を作ることにしたよ。4階まで作れそうだけど今は取り敢えず3階までにする

アーデンの魔法やオーディンの手伝いのお陰で3週間ほどで家は完成した。


アーデンが内装に着手してる間に私は外に畑を作る事にした

なるべく自分で野菜は育てようと思ったから。


泉の周りに咲いているエドナ草は効力が強過ぎて売るのはやめにしたの。

変な噂が立つと大変だし街に一軒有る薬剤店と格差が出るのを避ける為に

ただ、私の作った畑に『深き森』から根ごと取ってきたエドナ草とリッチ草を植えたんだけど泉からかなり離れてる筈なのに普通より効き目が良いみたい。


これは、『選びの森』の恩恵なのかもしれない

これ以上は逆に下げられないから仕方ないけどそのままで


不思議だけどエドナもリッチも明日〇〇本欲しいなって思うと次の朝にはちゃんとその本数分生えてるの。有り難いね












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