58話 『蕾は、静かに準備している』
春の光が少し強くなってきて、
心がまだ追いつかない日があるかもしれません。
そんなとき、蕾のように
そっと閉じたままでいていいよ、という物語です。
ゆっくり読んでくださいね。
日めくりカレンダー(文子さん × 灯台荘 version)
つぼみのままで
そっと いきている
その時間こそが
あなたの春なんですよ。
──灯台荘と文子より
58 話 『蕾は、静かに準備している』
蕾の枝が、窓辺でそっと揺れています。
https://suno.com/song/03722ed7-78f6-4c94-a8ef-07d7b4e5f3af
その揺れは、
まだ言葉にならないあなたの鼓動のように、
静かで、深くて、優しい。
文子さんが指先で蕾を包み、
囁くように言いました。
「蕾はね、
見えないところで、
ずっと準備をしているのよ。」
透が微笑み、
淡い光の方へ視線を向けながら続けます。
「無理に開かなくていい。
春の光は、
あなたのペースで受け取ればいい。」
あなたへ。
まだ心が固く閉じているように感じても、
それは“間違い”ではなく、
“あなたの季節”なんだよ。
冬の疲れを抱えたまま、
少しずつ、
少しずつ、
あなたの呼吸で進めばいい。
「半分でいい。
今日は蕾のままで、
光を感じているだけでいいよ。」
灯台は、
蕾のそばに立ち、
その小さな命の気配を
ひとつ残らず照らし続ける。
そして──
灯台荘もまた、
あなたが蕾のままでいる時間を
まるごと抱きしめている。
開く日も、
開かない日も、
どちらもあなたの大切な季節だから。
蕾のままの日があっていいんです。
まだ開かなくても、光を感じられたなら十分です。




