471話 「雪乃の灯火と、遥かなる勇気の物語」
471話 「雪乃の灯火と、遥かなる勇気の物語」
春の穏やかな午後、詩織さんから分厚い封筒が届いた。
中には雪女の起源に関する資料とともに、詩織さんが調べてくれた「世界の灯台守りたちの物語」が同封されていた。特に目を引いたのは、アメリカの女性灯台守り「アイダ・ルイス」の記録だった。 凛はフサエさんと庭の桜の木の下で、それを読み始めた。
アイダ・ルイスの物語 〜雪乃に通じる灯台守りの勇気〜1842年、アメリカ・ロードアイランド州ニューポート。
アイダ・ルイス(本名:Idawalley Zoradia Lewis)は、12歳の頃、父が灯台守りに任命されたLime Rock(石灰岩の小島)の灯台で暮らすようになった。 父が重い病で倒れた後、15歳のアイダは母とともに灯台の灯りを守る実質的な責任を負った。
公式に灯台守りとなったのは1879年、37歳のとき。彼女は生涯で54年間この灯台に関わり、公式記録で18人(非公式では25人以上)を海から救ったという。 有名な救助の一つは1869年のこと。
吹雪の夜、フォート・アダムズから帰る途中の二人の兵士がボートを転覆させ、冷たい海に投げ出された。
アイダは母の叫び声を聞き、即座に小さなボートを漕ぎ出し、凍てつく波の中を進んで二人を救い上げた。この出来事は新聞で大きく報じられ、彼女は「アメリカで最も勇敢な女性」と称賛された。 他にも、4人の少年を救った15歳の頃の初救助、氷の上を這って兵士を助けた話、羊まで救ったという逸話など、数え切れないほどの勇気ある行動を残した。
彼女は最高の給料を得る灯台守りとなり、金の救命勲章(女性として初)を受け、灯台は死後に「アイダ・ルイス灯台」と改名された。1911年、69歳で灯台の灯りを点けている最中に脳卒中で亡くなるまで、彼女は灯台を守り続けた。
凛は資料を閉じ、桜の花びらが舞う中、静かに息を吐いた。 「雪乃さんも……アイダさんも、同じ光を灯していたんですね。
失ったものを抱えながら、誰かの命を、誰かの帰りを、守り続けた……」 フサエさんが優しく頷いた。
「灯台守りという仕事は、ただ灯を回すだけじゃない。
心を回し続ける仕事じゃよ」 凛の胸に、二人の女性の物語が重なった。
雪乃の吹雪の夜の扉を開けた勇気と、アイダの凍てつく海にボートを漕ぎ出した決断。
それはまさに、今の自分が歩もうとしている道だった。雪乃とアイダ
遠き海の向こうにも
同じ灯を 守る者がいた
雪乃は 吹雪の扉を開け
アイダは 凍る波を 漕ぎ渡った 失った光は 胸の奥深く
生きる光は 外へ 強く 招く
私はその系譜を 継ぐ者
日本 の冬の灯台で
世界の勇気を 胸に




