ラジオ
「あー、夕方また来るよ。サファルが来たらそう伝えてくれるかい?」
留さんもドアに向かったので一緒にドアに向かう。用意しておいた日替わりモーニングのメニューを書いた紙を、看板に貼って駐車場からドアへと続く通路の前に設置。
ドアのプレートを営業中にする。
「ごちそうさま」
留さんが振り返って手を振る。
エリカちゃんのおじいちゃんとおじさんのようなものだと思ってくれ……か。
私も、お客さんは家族のようなものだと思って接客しているつもりだけれど……。こうして店の外で振り替え合って手を振ってもらえるのは、こんなにうれしいんですね。家族みたい。行ってらっしゃい留おじいちゃん。いや、おじいちゃんと呼ぶには失礼かもしれないけどね。
店の中に戻って回転灯のスイッチオン。日曜の7時代はやはり客足は悪い。
誰も来ない店はシーンと静まり返っている。先ほどまで人がいたからなおさら静かに感じる。
ラジオのスイッチをオンにする。
「緊急ニュースをお伝えいたします。占拠が続いているアメリカのハートキャッスル奪還のため、アメリカ軍が特殊部隊を投入しましたが連絡が途絶えたということです。アメリカ大統領が緊急声明を発表。ハートキャッスル周辺20キロにわたって閉鎖。住民は直ちに退避することとなりました。これを受け日本政府は、カリフォルニア州に滞在中の邦人の安否確認を進めています」
ああ、世界同時多発テロだっけ?のニュースの続きだ。
ハートキャッスルって聞いたことないけど有名な歴史的建造物なのかなぁと思ったら1919年のもので、比較的新しいって言ってたんだよね。マチュピチュはインカ帝国の遺跡だし、ウチヒサル城はカッパドキアのなんとかでヒッタイト帝国滅亡後になんたらとかとにかく歴史的価値が、ハートキャッスルの比じゃないらしい。テレビやラジオでいろいろ専門家が言ってた。
だから、最初に動くのはアメリカのハートキャッスルじゃないかって。万が一城が傷つくこととなっても、痛手は他の場所よりも少ないだろうと。それからアメリカはテロには決して屈しないという精神が強い。今の大統領の考えもそうらしい。
ニュースが伝えられると、パーソナリティーが自分たちの感想を話し始めた
「いやぁ、大変なことになってきましたね」
「ですねぇ。特殊部隊って何人くらいが投入されたんだろう?」
「20キロって結構な広さですからね。住民を退去させるって、戦争でもおっぱじめるんですかね?」
「どうなんですかね。無用な混乱を避けるためというのもあるかもしれません。どうも住民にテロ組織のメンバーが混じっているという噂も広まっているようで住民同士が疑心暗鬼になっているようで」
「ああ、発砲事件も頻発しているというの見ました。アメリカならではですよね」
「テロ犯はなんでも特殊装備でピストルの弾なんてはじいちゃうって話までありますからね」
「特殊部隊の兵器もきかなかったってことですかね?しかしそうなってくるとまるでアメリカンコミックみたいですね。スーパー○ンやスパイダー○ンって、テロは悪だから、その敵に当たるのか、悪役の名前ってなんでしたっけ?」
いつもありがとうございます。
ラジオから物騒な内容が流れてきましたよー。
……。それにしても、コロナの影響で喫茶店がどうなるのかヒヤヒヤしてます。
助成金もらえないんだって。8時以降営業してる飲食店は50万もらえるけれど、喫茶店は8時にはほとんど営業してないから。
……営業自粛……あ、テイクアウト始めてる喫茶店あるみたいです。モーニングのテイクアウト。
すごいよね。
しかもやり方がほんわりするよ。「皿とコップ持ってきて」(正確には飲み物こぼれず持ち帰れる容器、水稲やタンブラーや蓋つきコップなどと、タッパーみたいなやつだけど)
(*´▽`*)なんか、ご近所のおじーちゃんおばーちゃんに向けて「ご飯食べれてる大丈夫?皿持ってきたら持ち帰れるで、来てね」って声が聞こえてくるよ。
容器を用意して特別持ち帰り用メニューを新しく作らないというところが素敵。
あったかさを感じる。
と、ほっこりしてる場合じゃないんだよね。
どうか、一日も早く収束して、喫茶店が潰れませんように。
あ、もちろん他の業種もだけど……。
医療をはじめとした、現在懸命に働いている皆様本当にありがとうございます。
私だけではなく、多くの方が何か感謝の気持ちを表せればと思っていて、でも、何もできなくて……と思っていると思うんです。
でも、一つだけ感謝の気持ちを行動にうつせることがあります。
「家にこもる。感染を広げない。家族や周りの人にも家にこもる大切さを教える」
というわけで、みんな頑張ろう。
医療関係者、今も営業を続けて感染を恐れながら働いているお店の人、品物を届けてくださっている方、それから保育、介護など、休むことができない方……
本当にありがとうございます。
ほっと息抜きに、私の書いた小説が少しでも役にたっていると嬉しいです。




