実験その1です
「いや、そこまでは必要ないが……その、ふるちゃんの手を煩わせるのもなんだけれど、牛乳があれば少しもらえるかい?」
留さんがコーヒーフレッシュ……ミルクの入っていた器を持ち上げた。
「はい。持ってきますね」
牛乳を注いですぐに席に戻って手渡す。
「ありがとう。さて、実験だ」
実験?
どっちが美味しいか飲み比べでもするのかな?
気になったけれど、オーブンが私を呼んでいる。ああ、留さんとサファルさんにアフタヌーンサービスも出さないと。何がいいかな。同じスコーンでいいかな。それとも、疲れてそうだし、夕飯前でお腹が膨れないようなものの方がいいかな?ゆで卵のように食べずに持ち帰れるものの方がいいかな?
「サファル、左ひじを見せてみなさい、確か受け損なって怪我を負ったんじゃないか?」
留さんの言葉にサファルさんが鎧の一部を外して左ひじを出した。
「ああ、ばれていましたか。ちょっと腫れたくらいで骨まではいってません」
怪我したんだ。大丈夫かなぁ。
と、ついつい聞き耳を立てながらアフタヌーンサービスを何にしようか考える。うーん、めんどくさいや。スコーンでいいや。
留さんは小倉トースト食べるし、サファルさんはコーヒーが苦いと砂糖を入れるから、二人とも甘いものがダメってわけじゃないよね。
留さんが、牛乳をサファルさんの飲みかけのコーヒーに入れた。
「飲んでみろ」
サファルさんがコーヒーを口にするのを確認すると、留さんがサファルさんの腕をつかんで凝視する。
「ああ、思った通りだ。カフェインに糖分の効果があれほど即効性があり強大だったんだ。肉体を形作るたんぱく質の効果も……」
思った通り?
どうなったんだろう。
「手品?」
社長が首をかしげている。
「ああ、そうだな。まるで手品みたいに見えるな。そう、手品ということにしておこう。ゲームの中のようなことが現実に起こるなんて誰も信じないだろうからな」
手品?
「どうぞ。アフタヌーンサービスです」
スコーンをのせた皿をテーブルに運ぶ。
「いや、あの、すまんが金が……いや、あるんだが、また、収納から取り出してくるのを忘れて……」
「大丈夫ですよ。こちらは飲み物を注文下くださった方にサービスでお出ししているものでお金はかかりません。それからコーヒー代は、チケットでいただきますから」
サファルさんが訳が分からないという顔をしている。
「ああ、説明しておくよ、大丈夫。ふるちゃんはすることがあるだろう?こんな時間に悪かった。あのなサファル、こっちではお前の世界とは貨幣価値が違ってな」
おっと、コインを返すチャンスだ。
しまっておいた金貨などを持ってテーブルに置く。
留さんが金貨を1枚手に取って説明の続きをしてくれた。
「これ一枚あれば、コーヒー……そのエリクサーが100杯は飲める」
ですね。チケットなら8枚3000円なので、100杯で30000円。小金貨がそれくらいの値段でしたね。
「え?」
「で、先払いというシステム、まぁコーヒーチケットを買って預けるという便利なサービスもあるから、とりあえず金貨1枚分はチケットにして預けておくといい。お金を忘れても飲めるから便利だぞ」
スコーンを食べ終えると、留さんが立ち上がる。
「こんな時間にすまなんだ。ほれ、サファル、もう営業時間は終わっているから帰れ。ふるちゃんにこれ以上迷惑をかけて嫌われたら二度とコーヒーを売ってくれんぞ?」
留さんの言葉にサファルさんは慌てて立ち上がった。
「えっと、その代金は、本当にそのチケットとやらで足りるのか?」
「はい。ありがとうございます。サファルさんのチケットはあちらです。おつりはこちらに」
と、残りの日本円を渡そうとしたら、断られた。
「取っておいてくれ」
いや、さすがにそれは……。
「ではすべてチケットにして、半端な分は何かお付けしますね」
海外ではチップの文化があるし、小銭を受け取らないというのも普通かもしれないけれど、日本で過ごしたことのない私は現金を余分に受け取るのはちょっと気が引ける。
「ありがとう。じゃぁ」
サファルさんが店を出ていく。
いつもありがとうございます。最近あとがき長すぎなんで今日はお休みです。




