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第十二話

「おや?これはベーゴマ……?ずいぶん渋いものを置いてますね。ああ、そうか、ベーゴマ……ベイブレー○ではなく、昔ながらのベーゴマをゲームに出すのもいいかもしれないですね」

 おや、何かアイデアが浮かんだようです。

「よろしければどうぞ。お客様からのいただき物なのですが」

「え?いいの?」

 留さんと、エリカママと、社長にあげたら残りは一つだね。さすがに一つはそのまま飾っておこうかな。

「どうぞ。他のお客様にも差し上げてますから」

 と声をかけると、社長は遠慮気味にベーゴマに手を伸ばした。

 そして、持ち上げたとたんに、動きが止まった。

「社長?」

 社長の顔をしたから見上げる。

 身長差が30センチもあるので、本当に見上げる形だ。

 視線がどこを見ているのか分からない。

「社長?」

 目の前に手を差し伸べてひらひらと振ってみる。

 反応がない。

 ……これ、もしかして……何か閃いたアイデアが頭の中でぐるぐると渦巻いてる状態?

 時々考え事をしていて人の話を聞いてないとかあるけれど、クリエイター系は、本当に意識の深いところまで思考が沈んで周りが見えなくなるっていう話は聞くけれど。

 どうしようか。邪魔するのも悪い?

 レジ前でずーっとベーゴマを握りしめて立ち尽くしている長身の男。うん、怪しいけれど、幸い今日はお店は休みで、他にお客さんはいないのでまぁ、問題ないですよね。

 さて。

 ホットケーキは社長に大好評だったので明日の日替わりモーニングは大丈夫そうです。

 どれくらい準備しましょうか。

 カウンターの上の食器をかたずけ、ノートを開く。

 明日はホットケーキ、明後日はうどん、しあさってはおにぎりで、いいですね。梅肉プチおにぎりと昆布プチおにぎりに味噌汁のモーニング。ゆで卵は当然つきます。

 これが結構好評なのです。5日1回ペースで日替わりモーニングに登場してます。常連さんには今日はないの?と残念がられることもしばしば。

 ちなみに、モーニング文化のない地域の人には驚かれることがありますが、コーヒーにおにぎりなんてすごく定番メニューです。

 コーヒー注文して、味噌汁と昆布茶とお腹がたぷんたぷんになるほど水分提供されるのも普通です。

 うちはおにぎりは日替わりだけれど、定番メニューのモーニングで出している店も20件に1つくらいはあるんじゃないでしょうか。

 片付けてメモして、その間5分ほど。

 レジを見れば、まだ社長は同じ姿で立ち尽くしていた。

 考え事するなら座って落ち着いた方がいいんじゃないかな?

 と、ちょこっと腕をポンとたたいて声をかける。

「社長?」

 すると、社長の口が動いた。

「僕の名はアルク……地球は、狙われている」

 は?

 トリップしてます?

「アルク……?地球が狙われている?」

 高橋有玖、あれ、アルクって読むのが正解だったのかな?

 どうやら、何かアイデアでも浮かんだようだ。

「社長、もしよければ座ってください」

 もう一度声をかけると、社長がぐりんと振り返って私の両肩をつかんだ。

「ピョン、大変だ、地球が危ないっ!」

 待ってください、私はピョンじゃないですし、それに、社長、早く現実に戻ってください。



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