第十三話
「地球が危ないって?あの、社長?」
「社長?」
社長がハッと何かに気が付いた表情をしてプルプルと小さく頭を振った。
「ああ、そうか、ここは地球だ……えっと、あの古田さん、信じられないかもしれないけど、どうやら僕は前世の記憶が戻ったらしい……」
へ?
次のゲームのネタでしょうか。
転生物って、小説ではよく見かけますが、ゲームで前世の記憶もちチートって確かにあまり数は多くない気はしますが。
「えーっと、前世は勇者か魔王ですか?私は昔前世占いで錬金術師だって言われたことがありますよ。友達なんて、前世はクレオパトラに殺された奴隷だとか言われてましたけど。それでおかっぱ頭を見ると心がざわざわするのかと妙に納得してましたが」
と、とりあえずゲーム会社に10年も務めていたのにあんまりゲームの知識がなくて話を聞いてあげられないので、申し訳なくてどうでもいいことをペラペラと話す。
「そう、だよな……。ごめん。いきなり前世の記憶が戻ったと言われても困るよな。僕も、まさか、……こんな……」
社長が手を開いて、手の平の上のベーゴマに視線を落とした。
知らない間に強く握りしめていたようで、指先が白くなっている。
「……これがきっかけ?」
「社長、すごいですね。ベーゴマをゲームに使うのもいいかもと言っていましたし、アイデアが湯水のように頭に浮かんだんですよね?。地球が危ないと言っていましたけど、ファンタジーじゃなくて地球が舞台のゲームですか?昔のゲームで女神の転生とか、あ、あれも転生物なんですか?私よく知らなくて」
社長が困ったような顔を私に向ける。
すいません。ゲームのこと知らないのにすごく適当なこと言っちゃったのかなぁ。
「こうしちゃいられない。ありがとう。じゃぁ、ピョルンごちそうさま!」
社長が店を慌てて出て行った。
いや、だから、ピョルンではないのですが、……うーむ。混乱してるのかな。大丈夫かな。どんなゲームを思いついたんだろう。
……今までゲームはあまりしたことないけれど、社長がああしてアイデアを出して作っているんだと思ったら、急に興味がわいてきた。せめて、もう少しピョルンのことを勉強しておこうかなぁ。
「おっと、こうしちゃいられない、明日からの準備、買い物に行かないと!」
まずは店の入り口にしっかり鍵をかけて。あそうだ。黄色の回転灯が消えているのを確認。ドアのプレートが準備中になっているのも確認。
いや、準備中と営業中しかプレートないけど、定休日っていうのも作ったほうがいいのかなぁ。
金曜日。
プレートを営業中にひっくり返す。
日替わりモーニングの写真をプリントアウトしたものをボードに貼る。
それから黄色の回転灯のスイッチをオン。
よし。
今日も喫茶ふるる、営業スタートです。
時計の針は、午前7時1分。
お店の営業時間、7時は早いと思う地域の人もいるかもしれないけれど、愛知県ではごくごく普通。
出勤前の朝食として喫茶店でモーニングを食べてから会社へ行く人も多い。早い店は、午前5時からオープンしている。
さすがにそれにはびっくりしたし、とても真似はできない。
……それから、1か月営業してみての感想なんだけれど、このあたりは土日に出勤する人は少ないみたいなので、土日は8時前後からの来客が多い。平日は7時からで、土日は8時からの営業にしてもいいかもしれない。3か月ほど様子を見てから変更も視野に入れている。
チリンチリン。
「いらっしゃいませ」
今日一人目のお客さんは、留さんだ。
「あれ?留さん?」
思わず驚いて声が出る。




