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そう簡単に異世界を味わえると思うなよっ!  作者: はれ
第10 丹川蘭次
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88 空白を埋めたいからな

 地面を足で蹴る。この動きは異世界に来てから何百回も繰り返している。

 神に近付き、いつものように剣を振るう。

 神は俺の動きに一瞬驚いたような顔をしたが、瞬間移動で難なく避けた。

 

 「まだだっ」


 すばやく振り向き、左前方にいる神に再び剣を振るう。瞬間移動の現れる場所は分かっているし、位置を把握するのは簡単だ。

 だが、その剣も再び躱される。だが――

 

 パァン――!!

 

 部屋中に銃声が響く。椎名が撃った銃弾だ。目標は――神が瞬間移動で姿を現すであろう場所。

 銃弾のその先に、突如神が現れる。瞬間移動で現れてからすぐには、再び瞬間移動することは出来ないはずだ。

 だが、それでも神は――防御できる策がある。さっき俺の剣を消したように……


 次の瞬間、音もなく椎名の銃弾が消え去った。


 「消えた!」


 ここまではさっきもやられた。だけど――


 「ファイヤー!!!」


 神の真後ろに、凜が立っていた。凜も神の移動先を予測していたのだ。

 椎名の銃弾と凜の魔法に、ほとんど時間差は無い。神は物体を消す能力も、瞬間移動も出来ないはずだ。

 神は、凜の方向に振り返ることすら出来ない。当たった――


 「きゃあああ!!!!」

 

 凜が――吹っ飛ばされている!?

 なんだ。また新しい能力か……!?


 「凜!大丈夫か!?」


 思わず凜に駆け寄る。

 

 「う、うう……」

 

 凜は苦しそうな表情をしているが、致命傷ではなさそうだ。

 神は続けて攻撃はしてこない。やっぱり余裕があるんだな。


 「蘭次君、凜ちゃんはどうやら裏拳を受けたみたいだよ」

 「裏拳?全く見えなかった上に物理攻撃か……ほんとになんでもありだな」

 「全くだね……向こうは余裕綽々って感じみたいだけど、蘭次君、何か作戦はある?」


 「—―ある」


 椎名の質問に、俺は応える。

 もしも、もしも俺の推測が当たってるならば――


 「—―だけど、成功する可能性は限りなく低い。他に作戦があるならそっちにした方がいい」

 「どうせ他に作戦なんかないんだし、蘭次君に従うよ。それで、僕は何をしたらいいかな?」

 「出来れば俺の神。そして『魔力の溜め池』が一直線になるようにしてほしい」

 「オーケー。じゃあ凜ちゃん、君はもうすこし休んでていい……よっ!」


 椎名が動きを誘導するために走り出す。その間、俺は……


 「全てを溶かす熱は、感覚を超え、灰すら残さぬ光――」

 「炎、水、風、氷。魔法を束ねる光は、強大な刃となる――」

 「使ってみせよ、扱ってみせよ。俺に応えよ遥かな力」

 「俺の呼びかけに応えよ!」


 「フレア(超炎)ー!」


 今までの魔法とは比べ物にならない程の紅蓮の炎が放たれる。

 炎は猛スピードで神に近付き――神の体にほんの少しの焦げ跡を残した。

 俺が放った炎はまたしても瞬間移動で避けられたが、ほんの少しはダメージを与えられたようだ。


 「効いたか?神様さんよ」

 「……貴様、どうやった?なぜここに立っているのだ」

 「お前にはわかんねえよ。ずっと一人の――お前にはな!」


 剣を神に向かって投げる。神は避ける事すらせずに、その剣を掴んだ。


 「人の子は精神が極端に弱いと聞いたんだがな」

 「間違いじゃねえよ。でもな――」

 

 俺は剣を投げた時の姿勢のまま、

 

 「波紋をもたらす空気――我の呼びかけに応えよ!エアロ(矢風)!」


 パスッ――っと、小さな風の刃が高速で神に迫る。

 

 「なっ……!?」

 

 神は瞬間移動を一瞬ためらう。俺の魔法が想像以上に弱かったからだろう。さっき大きな魔法を見た後だ、戸惑うのも無理はない。

 神は姿勢を崩したが、瞬間移動で避けた。だが、もう瞬間移動の位置は分かっている。俺は素早く足元に刺さっていた剣を抜き、神が現れるであろう場所に――投げる!


 「くっ!!」


 神は剣をさっきと同じように消した。何度も、何度もこの流れは繰り返されている。


 (これなら……勝てるはずだ!神と、俺と、あのバカでかい光を――結べさえすれば!)


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