84 菓子の一つでも
『なあ魔崎、もう異世界の新設定の話は飽きたぞ』
『あ、やっぱりそうですか……なんとなくそうかなって思ったんですけど』
『お、おいそう落ち込むなよ。ほらポッキー食え』
『ありがとうございます。そうですね……天界に伝わる昔話でも話しましょうか』
『昔話?』
『むかーしむかし、あるところに、天界に住む少女がいました』
少女はひょんなことから禁止されている天界への転送を行ってしまいました。
しかし少女は人間界で少年と恋をしました。
少女と少年は結ばれました。
ある日、天界の人間が少女を処分しようと二人の元へやってきました。
それでも、少年と少女はお互いの愛で危機を切り抜けました。
『それから、二人は末永く幸せに暮らしましたとさ。おしまい』
『おい、それって……』
『はい、少年が発した魔力を、少女が発現させたお話ですね』
『なるほど……それが異世界に繋がるとはな』
『一人の魔力では、やっぱりその一人分の世界しか作れませんけどね』
『でも、今では普通に他の人と異世界で会えるだろ?結局なんでなんだ?』
『うーん、私もよくわからないんですよね。他の人と会うって事は、自分と他の人の魔力を連結させる必要があるんですよ』
『さっぱりわからん』
『でも、魔力を連結させられるほどの存在は天界にいないはずなんですよねー』
『だからわからんって』
――
――――
「魔力を吸収!?それでは……あなたが……!」
魔崎が驚いたように言う。魔崎も魔崎で今の神の発言に思い当たるところがあったのだろう。だが、今はそれよりも……。
(異世界に来た人間全員の能力を使えるって、俺の戦闘能力も、凜の魔法も使えるって事かよ……!)
そんな相手に、勝てるわけがない。どうするんだ蘭次、このままじゃ……。




