78 再起
「それで、どうやってこの世界を救うんだ」
「知らないわよ。わかったら苦労しないでしょ」
「そもそも、何をもって『世界を救う』ってことになるかだよね」
あ、そっか。世界を救うって言っても、今回は世界が滅ぶとかそう言う状況じゃないからな。
「えっと、まずこの状況ですが……」
・従来と違い、今はこの世界で死ぬことは本当の死を示す。
・天界は殺し合いの際に生まれる魔力を利用しようとしてる。
・天界の人間が潜伏しているパーティーがある。
と、魔崎が説明してくれた。
「ってことは……やっぱり殺し合いを止めないといけないな」
「でも天界の人間が潜伏している以上、扇動されて殺し合いは避けられないわよ」
「じゃあ、天界の人間を全員捕らえるか?」
「普通の人間と見分けがつかないから、現実的じゃないと思うよ」
俺は思いつく限りの方法を出すが、凜、椎名、にそれぞれ否定されてしまった。
(ならどうする……?何かいい手はないのか?)
更に頭を働かせ案を考え続けるが……いい案は思いつかない。
「なんかいい案はないのか?」
「とはいっても、やっぱりこの状況は厳しいね」
「そんなこと言われてもなぁ……」
俺はウンウン唸りながら方法を考え続ける、えーっと、今は世界の設定が変わって『本当に死ぬ世界』になってるから……
「今の世界は人が本当に死ぬ世界だ。それなら……また設定を変えて、死なない世界に戻すことは出来ないのか?」
「どうでしょう、異世界の設定を変える場所は、天界で最も厳重な位置にあります。あわよくば設定を変えられるかもしれませんが……すぐ天界の人間に鎮圧され、変えた設定も戻されるでしょう」
やっぱりだめか……どうしたらいいんだよ全く。
(待てよ……この世界は魔力によって作られているんだよな)
「あ……」
これなら、あるいはできるかもしれない。
「あのさ、殺し合いで魔力を集めるって言ったよな?集めるって事は、どこかに魔力を貯めている場所があるんじゃないか?そこを壊せば……」
「……やっぱり、そこに辿り着くしかないんだよね」
俺の発言を受けて、椎名が暗い顔で言った。
「……確かに、今までの中では一番可能性がある方法だよ。でも、僕らは四人しかいない。それだけで『魔力の溜め池』までたどり着くことは不可能なんだよ」
椎名はそう続けた。そうか、不可能なのか。それなら――
「よかった。不可能なんだな?」
「—―え?蘭次君、それはどういう――」
「椎名、言ったろ?俺とならなんでも出来るって。それなら――不可能な事を可能にするのは、なんでもできる俺達しかいないんだよ。それに椎名、他にこの世界を救う方法があるか?」
「それは……そうだけど。でも、」
「ならやるしかないだろ!!やってやるぞ。魔崎!『魔力の溜め池』……だったか、そこはどこにあるんだ!?」
魔崎にその場所を探す、時間は無い、一刻も早くその場所に行くんだ!もう方法は――これしかないんだから。
「それは……天界のどこかにあるらしいんですが、詳しい場所は――」
「なら探す!行くぞ凜!椎名!」
「ちょ、ちょっと蘭次!あんたまさか今から天界に乗り込む気!?」
「それしかないならやるだけだろ!!」
俺は皆を急かす。
「魔崎、俺と凜も天界に運べるよな!」
「は、はいっ!」
よし、今から天界に……殴りこむっ!!
「……まいったなぁ蘭次君は、君の言葉を聞いてると、本当に出来そうになってくるんだから」
椎名が呆れたように言う。
「トランスファー!!」
魔崎の言葉で俺達の周りは金色に包まれる。初めて異世界に行ったあの時のように。
俺は現実世界から異世界に行き、今度は異世界を作った天界に行こうとしているのだ。
俺はこの異世界を作る魔力を無くそうとしてる。つまりそれは、俺の戦いは……ここで終わりという事を指していた。




