76 居場所
――異世界に行こうとして、必ず一日に百回は異世界に行きたいと願った。でも、何時までたっても、異世界には行けなかった。それなのに、異世界への関心を無くさなかった。その理由はきっと――
――
「蘭次!しっかりしなさい!自分を失わないで、現実を見て!」
「無駄だよ凜ちゃん。彼は異世界に執着している。そして精神が不安定だ。そんな彼を戦闘が出来ない状況にするのは容易い事だよ。それより、凜ちゃんは僕に攻撃してこないのかい?」
「あたしは蘭次を必ず救う。そしてあなたは……あたしが仲間を救おうとする姿を見て奇襲するような人じゃない。だからあたしは今ここで蘭次を助け出すしかないのよ!」
「……裏切った敵を信頼するなんて、随分凜ちゃんもお人好しなんだね」
「蘭次様……」
――
「……異世界しか、頼れる物がなかったのか……」
やっと気付いた。俺は異世界を心の頼りにすることで精神を安定させていたんだ。俺は今までにも異世界を否定された事がある。その度におかしな行動をとったのは、記憶を消すことで精神を安定させるための発狂……ってとこか。
「……あーあ。どうしよっかな……」
ここは……どこだろうな。俺の精神が創り出した世界って感じだが、真っ暗だな、どこにいるのかもさっぱりだ。まさに今の俺だな……頼れるものが何も無い。居場所がどこにもないんだ。
「早く、凜たちの元に――」
戻らないと――そう言おうとした時、俺は自分が凜たちの世界に戻る気が無いという気持ちに気付いた。
「……そうか、そうだよな」
俺は異世界を失ったら生きていく理由が無くなるんだ。凜たちの世界に戻っても、異世界を救うのは無理だろう。それなら、俺は戻る必要性も……生きる必要も、どこにもないんだ。
そうだ。戻らなくていいんだ。もう異世界に縛られなくていいんだ。俺はこの誰もいない世界の中、静かに、何も感じず……ただ眠っているだけでいいんだ。
「……それで、いいのか?……もういいよ。もう、俺が生きる理由は――」
「蘭次様!戻ってきてください!!」
――あ……この声は、魔崎?あいつ、天界の人間なのに、なんで俺を?
「私……やっぱり蘭次様を裏切れません!蘭次様を死なせるなんて……私には……」
――魔崎……でも俺は、もう疲れたんだ。生きる理由もなく、ただ生きるなんて……
「私もあなたを裏切らない!だから戻ってきなさい!あたしと魔崎は――ここにいるから!あなたが戻ってくる場所は……必ずあるから!」
……
「蘭次様!必ず……この世界を救いましょう!それで、また皆で……笑い合いましょう!!」
…………
「蘭次の居場所は――」
……………………俺は、
「蘭次様の居場所は――」
……………………俺はそこに
「「ここにあるから!!」」
「俺はそこに……帰ってもいいのか……?」
「「帰って!!」」
――
――――俺の居場所は……そこにあったんだな――――
瞼を開く、目に飛び込んできたのは涙目の魔崎と、いつにもなく息を荒げている凜がいた。
「ただいま」
「おかえりなさい!」
「おかえりなさいです!」
ありがとう。本当にありがとうってそう言いたい。でも、それを言うのは後だ。みんな……終わらしてから、だよな?
俺は二人から目を逸らし、驚愕に目を見開いてる椎名に近付く
「椎名、ついてこい。一緒に……世界を救うぞ!」
仲間全員で、やってやるさ。




