74 異世界と天界
「……そんな事ができるのか?」
「出来るよ。ある存在によってね」
「ある存在?」
「知る必要は無いよ。もう喋ることは無くなった。後は君たちを……殺すだけだ」
椎名が銃をこちらに構える。その銃口は俺の頭を狙う位置にあった。
「待ちなさい。さっき生死をかけた戦いって行ったけど、他のパーティーにもあなたのような天界の人間がいるってこと?」
凜が聞けることは全て聞いておこう。という感じで言った。
「いるパーティーもあるけど、無い所にもある。でも見ただろう?仲間と思っていた人が裏切って殺す光景を」
さっきの異世界戦での会場の出来事が俺の頭で反芻される。
「それを見た人は、今近くにいる仲間も敵なのではないかという疑問を持ち始める。『死にたくない』って思いも合わさって、最終的には普通の人間同士の……」
「同士討ち。……なるほど、穏やかじゃないわね」
絶望的な言葉を凜が言う。それって、普通の人間同士が殺し合うって事かよ!
「ちょ、ちょっと待てよ!それなら今すぐ止めないと――」
「だからそれをさせないんだよ。蘭次君と凜ちゃんはね、強大な力で天界の計画を邪魔する可能性があったからね。一人ずつ監視の目をつけることにしたんだ」
監視の目。それは椎名と、もう一人は……
「そう、大山ちゃん。あれはね……魔崎ちゃんが変装していたんだよ」
「なっ……!?じゃあ、お前があれだけ大山に固執していたのは――」
「そういう事だね。同じ天界の人間だったからだよ」
大山は魔崎だったのか……たしかに、今思い返すと二人の挙動には似ているところがあった。
「あれ、思った以上に話しちゃったね。さっきもう話すことはないって言ったのに」
「椎名、俺はお前とは……戦いたくない。お願いだ。銃を下げてくれ」
「出来ないよ。僕達と君達は住む世界が違うんだ。もう……お別れだね」
椎名!全部……全部……!
「仕組まれていたことなのかよ!俺達に会ったあの時から!ロボットと戦ったのも、お前が針田から助けてくれた時も!翔と戦ったのだって、お前が……異世界戦の決勝で『なんでもできる』って言ったのも!全部……嘘だったのかよ!椎名!!!」
「そうだよ」
――
その瞬間、俺の中でなにかがトんだ。
「椎名ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
割れてしまいそうなほど強く地面を蹴り、一瞬で椎名に迫る。その勢いそのままに――俺は剣を振るうが、澄んでの所で避けられてしまった。
「早いね。そして強い。さすが蘭次君だ。だから僕は、真正面からやり合わないよ」
椎名は、いつもの何を考えてるかわからないような笑顔を浮かべた。
「――蘭次!!だめ!!聞いちゃダメ!!」
「え――」
凜が叫ぶ。俺がその声を理解する前に……椎名の口は開いていた。
「君は一体誰なんだい?どうしてこの世界にいるんだい?君にこの世界は必要かい?そもそもこんな世界――無くてもいいんじゃないかな?」
「あ……」
ダメだ、思考が薄れていく。そうだ、何度も、何度も俺は――
「この世界も君が完全に臨んだ世界じゃないんだよね?それなら――無くなってしまえばいいのにね」
「やめろ!!否定するな!俺の世界を消すな!!頼むから……」
思い出したくなかった。俺は逃げたかったんだ。だから――
「俺の居場所を……消さないでくれ……」




