73 やるしかない
「凜、お前……知ってたか?」
「……天界がいつか、私達に対し何かしてくるのは感づいていたけど……まさかここまで早いとは思わなかったか」
「そうか……」
俺達はどこかに飛ばされたみたいだが……ここはどこだ?
「凜、ここがどこか分かるか?」
「さあ、見当もつかないわね」
「クッソ……魔崎、お前何か――」
知らないか。そう言おうとした時、俺は思い出した。
魔崎は俺をこの異世界に連れてきた存在だ。つまり、天界の人間なんだ。今の俺達にとっては……敵、なのか?
「ま、魔崎……なあ魔崎!これってどういう事なんだよ!何がどうなってるんだよ!教えてくれよなあ!」
俺は魔崎を問い詰める
魔崎にいつもの明るい様子は無く、顔が前髪に隠れるほど俯いていた。
「……私は……天界の人間だから……だからあなたたちを、攻撃しないといけないんです……!」
――ポタ、ポタ。と、地面にしずくが落ちる。
「魔崎……そんなの、そんなのあるかよ……!」
どうしてこうなったんだ?おかしいだろ。何で俺と魔崎が……戦わなくちゃいけないんだよ!
「さよなら……蘭次様今まで、ありがとうございました――」
魔崎が顔を上げると、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。
違う!こんなのは間違っている!魔崎が苦しむ必要があるわけないんだ!
「魔崎、お前は俺と戦う必要なんてないだろ!!」
「――そうだよ。魔崎ちゃんがやる必要はない。だって君達は……僕が殺すから」
まさか――
「嘘だろ。なあ嘘だって言ってくれよ、有り得ねえだろこんなの。おい、どうしてなんだよ……」
この、声は――
「どうしてなんだよ!!!椎名!!!!!!」
椎名が、俺達に銃を向けていた。
「……やっぱりね。あなた、私を監視してたでしょ」
「あー……バレてたんだ。なんとなく気づいてるんじゃないかと思ってたんだけど」
「凜、知ってたのか!?」
「まあね。それはそうと……やるって言うならその前に話しなさい。これは一体どういう事?」
凜が戦う前に話すことを促してくる。
「そうだね。何も言わないのもよくないだろうし……じゃあ、説明するよ。まずこの状況だけど……天界が人間からこの世界を奪うために行われている」
「なっ……!!」
それって、前に針田が言ってたことじゃ……。
「それでどうして世界のシステムを変える事になるのよ。『これからこの異世界は、本当に死ぬ世界になった』って、今まではこの世界で死んでも現実世界に戻されるだけだったけど、今は現実世界には戻らず本当に死んでしまうってなったんでしょ?」
「確かにその通りだよ。所で蘭次君、この世界は何で出来ているか知ってる?」
「この世界……?確か、魔崎が俺から魔力を抽出して――」
「そう。人間の魔力。これは物凄い力を秘めてるんだけど、人間自身に扱う事は出来ない。だけど――天界の一部の存在は……魔力を巧みに操り、世界を構築することが出来たんだ」
俺がこの世界に来る時、魔崎は俺から魔力を抽出して、この世界を作ったが、『自分が世界を作ったわけではない』と言ってた気がする。
「そして……その魔力は異世界に来てからも常時放出されるんだけど……『生死をかけた戦い』の時、莫大な量の魔力が出ることがわかったんだ」
「ちょっと待って。それじゃあこの状況は――」
「――人間から大量の魔力を奪い、人間の力無しでこの世界に住む。天界の目的はこれだよ。君たちは……僕ら天界の者に搾取される側になるんだよ」




