表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そう簡単に異世界を味わえると思うなよっ!  作者: はれ
第8 異世界戦決勝
70/97

67 勝つことが勝ちではない

  俺と椎名はそのまましばらく草原を転げまわって……敵から随分離れた場所で停止した。

「……つつ……し、椎名!大丈夫か!?」


 俺は倒れた椎名に慌てて語り掛けるが、返答はない。

 だが、椎名の姿は消えてはいない。つまり、この世界で死んだわけではないんだ。まだ意識を取り戻す可能性はある。

 「椎名!おい椎名!起きろって!!」

 俺は椎名を激しく揺さぶるが、それでも椎名は起きない。

 「椎名!勝つんだろ!?ああ言い出したのは俺だよ。でもな!勝つにはお前がいなきゃいけないんだよ!!椎名!!」

 

 「……はは……厳しいなあ、蘭次君は……」

  弱々しく、今にも掻き消えそうなほど細い声を出した。

 「……でも、ごめんね蘭次君。僕は動けないみたいなんだ。だから……君の願いを叶えるのは……」


 「いや、それでいい(・・)

 

 「……え……?」

 「勘違いするなよ椎名。俺は起きて戦えと言ったんじゃない。俺達が……勝つところを見てもらえればそれでいいんだ。だから寝るなよ。瞬きも禁止だ」

 「そ、そんな……無理だよ」

 「お前はすぐ諦めるんだよ。仕方ない仕方ないってな。椎名、今諦めただろ?」

 「それは……」

 椎名はいつものような苦笑いした顔にはならず、心から申し訳ないという表情をしていた。

 「その諦めは俺が覆してやる。だからもう、諦めるのはやめろ。諦めるという行為は、人類の可能性をせばめてしまうぞ」

 俺は精一杯の笑顔を椎名に作った。

 「蘭次君……」 

 「じゃあな。しっかりそこで見てろよ」

 俺は椎名に背を向け、敵に向かって走り出す。

 覆すなんて言ったが、戦況は相当悪い。作戦なんて無い。だが……負けない!!


 「遅いわよ蘭次!」

 「待たせてごめんな!おりゃああ!!」

 凜がギリギリで相手してた三人の間に割り込む。その攻撃は当たらなかったが――

 「凜、その女の子を頼む。今度はよそ見しないようにな」

 「え……ちょっと待って!それじゃ蘭次は……!?」

 「出来る。絶対にな。じゃあ頼んだぜ」

 そう、俺はチンピラとバカ、()()()()()にするのだ。


 「……へっ、随分と舐められたもんだな」

 「……舐めていると思うなら勝手にしろ」

 「ああ?」

 チンピラは悪い目つきを一層悪くしたが、その奥には柔らかな優しさのような物がうっすらと見えた気がする。あいつも……もしかしたら根は優しいのかもしれないな。

 「それよりお前、俺のメリケンを指されたのに、出血の跡が見えないんだが、どうやったんだ?」

 チンピラが俺の腹部を見てそう言った。

 「ああ。これなら俺には刺さってなかっただけだよ」

 「……咄嗟に剣で防御したって事かよ。末恐ろしいな」

 「……えっと、本当にいいの?」

 横から違う男(バカ)が話しかけてくれた。

 「ああ。俺はそのつもりだぜ」

 「そっか。それなら仕方ないね」

 この人も、バカな見かけに優しいのかもな。バカ改め優しいバカだな。


 「じゃあ、行くぞ!」

 

 俺は駆けだす。

 ――結局この世界では、俺はガムシャラに やるしか……ないのかもな。

優しいバカの『きれいなジャイ〇ン』感。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ