60 仲間が一人の時
「世話になったなじいちゃん」
「ん。お前はずっと寝ていたな」
俺はじいちゃんの家を出る。もう体力は回復したし、大丈夫だろう。
「あ、そうだ、最後に聞きたいことがあったんだ」
「ん?なんじゃ?」
俺はじいちゃんの目を見据えて、ゆっくりと告げる。
「なんでここにいるの?」
「—―それが嫌いで、ここにいるのじゃ」
じいちゃんの家を出ると、辺りは見渡す限りの荒野だった。
「とりあえず、人が多そうな所に行かないとな……」
空気は醒め、優しくとも強い陽光が降り注ぐなか、灰色の地面を歩く。
誰もいない。魔物さえいない。
ただひたすらに歩き続けるも、荒野の終わりは見えてこなかった。
「なんでここにいるの。か……」
――俺はどうだろう。俺は何のためにここに居るんだろう。
じいちゃんの部屋にあった本。活気にあふれた町。皆、やりたいことがあった。だからこの世界にいるんだ。
――俺はどうだろう。俺は何のためにここに居るんだろう。
戦うためだけに居る人ばかりじゃない。現実世界で色々な理由があってやりたいことが出来なくなった人が、この世界でやりたいことを果たそうとしている。
――俺はどうだろう。俺は何のためにここに居るんだろう。
この世界は、魔物もいれば魔法だってある。望んていた物が、ここにはあるんだ。
それでも、それでも……俺はここの住人じゃない気がする。ここは俺が望んできた世界じゃない気がする。
(贅沢……なのかな?)
違う。多分、俺はこの世界に来たところで、何も変わってないんだろう。現実の世界で意味もなくだらだらしてたあの頃と何も変わっていないんだ。
俺、ここにいるべきじゃ……ないのかもな。
「……あ。あれ……」
『異世界戦』の会場が見えてきた。良かった。方向はこっちで合ってたんだ。
そういえば決勝戦の準備はどうなっているんだろうか。もうすぐできるらしいけど……。
「せめて決勝戦だけはやっていくか」
俺は異世界戦の会場に向けて足を踏み出した。
かなり更新が途絶えてしまいました……
中々うまくいかないですね。もう少し頑張ります。




