6 この世界って結局
今までより少し長くなってしまいました。申し訳ありません。
皆は校長っていうとどんなイメージを持ってるだろうか。話が長い。とか太ってる。などだろうか。俺は、俺は……
「校長ぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!!!!!!」
この世界にあてはめたら確かにボスキャラの印象はあるかもしれない。
「ちょっと、え!?ナニコレ!?」
「だからボス敵ですよ。頑張って倒してくださいね」
「いやいや何故に校長!?しかもそれはまだいいとして――」
校長の体にはメカメカしいという言葉がぴったりなほど、機械に包まれていた。
「なんで校長はロボット化してるの!?」
シュールだ。五十過ぎたおっさんがロボット化してこっちに向かってくるなんて、いくら何でもシュールすぎる。
……冷静に考えてみると、この世界は俺の世界や記憶を基に作られてるから、俺がこの校長の恰好をさせてるってことなのか?
でも、俺はそんなイメージは――
『私は子供のころ、大きくなったらロボットになりたいという夢がありまして』
……あったなそんなこと言ってた時が。
剣を構え、相手の攻撃に備える。
(攻撃してくるとしたらあの腕みたいなアームか?校長ロボット自ら突っ込んでくるってこともありそうだな……)
どちらにせよ、躱して向こうに剣をたたきこむ。と動きやすい姿勢で待ち構えていると、校長が喋りだして、
「う……ア…………おおおおおおおおお!」
すると腕みたいなアームが変形し、銃口のような形になりこっちに照準を合わせてきた。
(銃口のようなっつうか、こいつは……)
「……ッ……!」
咄嗟に横に飛び跳ねる。俺が飛び跳ねたのと同時に校長は銃口から何かを発射し、さっきまで俺がいた位置に〝それ〟は着弾した。
「くぅぅ!」
俺は着弾した位置から結構離れていたが、それでも爆風が届いてきた。
(これ、普通の銃弾なんてレベルじゃねえぞ……!)
次の攻撃に対して身構える。すると校長は、全身の機械の鎧の繋ぎ目からさっきと同じような銃口を無数に出してきた
「なっ……!」
そして校長は銃口から次々と弾を発射してきた。
今度も横に逃げる。が、今度は跳ばずに走る。俺の後ろに次々と銃弾が落ちていく。
「冗談じゃねーぞぉぉぉぉーーー!!!」
ギリギリのところで何回も銃弾をよけていく。銃弾が撃ち尽くされた。と思ったら、
「って、ええ……」
今度は銃になっていた腕がアームに戻り、こちらへ腕を振ってきた。
「ちょっ……そんなのありかよ!」
間一髪で横によける。校長の腕はまだ地面に刺さったままだ。
(……ここだ!)
相手の懐に入り剣を構えるが、
「って、よく考えたらこの剣で通用するわけがないだろーーーー!!!!」
アルミ製の剣ではどう見ても金属で出来ている校長の鎧を貫けるわけがなかった。
「お、おい魔崎!こんなの勝てるわけないだろ!」
「そんなわけないですよ!頑張ってください!」
「でもこれじゃ……どうやっても向こうにダメージを与えられない……!」
このままじゃ……勝てない!
その時、向こうからの弾が今までで一番近くに来た。
「うわっ!」
爆風で体が吹き飛ばされる。
「……くそっ!こんなのどうしようも――」
「蘭次様!!」
俺の諦めともとれる言葉は、魔崎の声にかき消されていた。
「どんな敵にだって、弱点はあります!特にこの世界では、それが顕著に現れます。それをつけば、いくら強くても必ず倒せます」
「弱点って、そんなのわかるわけないだろ!」
「わかります!!この世界は、蘭次様の記憶が基になってるんです!きっと、蘭次様の頭のどこかに、敵を倒す方法があるはずです!」
「……俺の……記憶……」
校長、校長と話したことはほとんどない。でも校長の話を聞くことはよくあった。その時俺は何を思っていただろうか。
そして、その記憶を今の校長に当てはめると……。
「あ……」
もしかしたら、これかもしれない。
「でも、本当にこれだったら笑っちゃうよなぁ……」
とは言っても、他に弱点なんてあるように思えない。
「……おっし、やってみるか!」
「蘭次様……頑張ってください!」
魔崎の言葉が終わると同時に走り出す。目標は校長。
当然校長はまた銃弾の嵐を浴びせてくる。俺はそれをなんとか躱しながら、校長の腕に注目する。
(さっきと同じ攻撃で来るなら……それなら弱点を突ける!)
校長は弾を打ち尽くし、さっきと同じように腕のアームで攻撃してきた。
(……きた!)
必要最低限の動きでそれをかわし、地面に刺さったアームの上によじ登る。
弱点のある校長の頭は俺の背丈の三倍はある。アームを伝ってよじ登るしか方法はない。
ある程度上った所で、俺を振り落そうと校長が腕を振り回す。
俺は振り落とされそうになる。それでも――
「く……だぁあああ!!!」
その動き始めたタイミングで、俺は跳ぶ。校長の、弱点へ。
「いっっけぇ!!」
手を伸ばす。弱点へ
「…………!……」
駄目だ。届かない。飛んだあとの最高点につく前に気づいた。これじゃ校長の弱点にほんの少し、足らない……!
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
諦めるか!ここまで、ここまで来たんだ!ここで……
(諦められっかよっ!!)
「エアロ!!!!!」
ここで切り札『魔法』を使う。エアロとは、アニメやゲームでは相手を風で吹き飛ばしたり、風自体を刃に変形させて相手を切り刻んだりしてることが多い魔法だ。
もちろん俺もそんなイメージを持っている。だがこの世界では俺の考えはまず反映されない。さらにそれらは俺が考えてるよりも低いレベルで出てくることが多くなっている。
それならば、この魔法はどのような形で俺の前に現れるだろうか。俺が思うにレベルが低く、風を送るとなったらそれは……
目の前に現れたもの。俺はそれを手に取り、落ち着いて『強』と書かれたスイッチを押す。
そう、扇風機。風を送れるとなったらこれしかない。俺が手にしていたのはコードがついてない充電式の扇風機だった。ハネが動き始める。風を送る意味、それは――
うちの校長は、不自然なほど髪がフサフサだ。それはもう、五十過ぎのおっさんとは思えないくらいに。
そんな人がよく俺たちの前で話をしたら、誰もが一回は思うことがあるだろう。
そう、校長の〝弱点〟それは……。
(カツラだ!校長!!!)
校長のカツラは風に煽られて、ふんわりと持ち上がっていく。そして、ついにカツラは完全に校長の頭とは離れていく。俺はそれを見て、校長の体に一度つかまってから地面に着地し、歩いていく。校長とは逆の方向に。
「校長……」
校長は仰向けに倒れ、もうピクリとも動かない。
「お世話になりました」
これで序盤は終わりとなります。これからも引き続きよろしくお願い致します。