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そう簡単に異世界を味わえると思うなよっ!  作者: はれ
第7 美永翔
55/97

52 チート能力は必ず穴がある

  俺は……絶句する。


 有り得ないことが起こると、人間は思考を停止させてしまうものなのか。

 凜の魔法をはじき返した、その魔法を使ったのは……翔。

 翔の特性は分かっていた。俺と同じ近接系アタッカーで、魔法は一切使わない――そのはずだったのに。

 (駄目だ……動けないっ……!)

 俺の頭はそう思った、だが体は――動き始める。

 ここで止まったら殺される。そう感じたままに俺の体は反射的に動いていた。翔に向かって。

 「うわああああああああああ!!!!!!!」

 俺は叫びながら翔に剣を振るう。


 感覚は……無かった。避けられたんだ。それはそうだろう。そう簡単に当てられはしないだろう。

 「目を閉じなさい!!フラッシュ!」

 凜が魔法を唱える。その瞬間周りは光に包まれた。『逃げろ』のサインだ

 「ちくしょう……ちくしょう……!」

 俺は目を閉じて一目散に逃げる。

 しかし、それにしてもどうしてなんだ。どうして翔は魔法を使えた?あいつは実は魔法を使えるのか?駄目だ……悲しいかな俺の知力じゃ何もわからん。

 「ちっ、逃げんのかよぉ」

 また訛った声に戻った翔の言葉を背に、俺は宿屋から逃げ出した。



 「やっと見つけた」

 しばらくたった後、凜と椎名に合流した。

 二人とも疲れた顔をしていた。仕方ないだろう。俺達は二回も負けたんだ。

 「椎名。翔はまだ宿屋を出てないわね?」

 「うん。あの部屋に窓はないし、宿屋の出口は一つしかないからね」

 「わかった。見張りをしながら聞いて。蘭次に聞くわ。洞窟の下で翔と初めて戦った時のこと、覚えてる?」

 「あ、ああ。今日の事だからな、はっきり覚えているよ」 

 「翔と戦った時、先に仕掛けたのは翔?それとも蘭次?」

 先に仕掛けたの?確か……

 「俺が攻撃して、翔がそれに対応したんだ」

  

 「それで十分よ。奴の能力が分かったわ」


 「はあ!?」

 「えっ……?」

 俺と椎名は驚嘆の声を上げる。これだけの情報で翔の能力が分かったのかよ……これからは参謀凜と呼ぼう。

 「簡潔に言うわ。奴の能力は……敵の能力をコピーすることよ」

 参謀凜はさらっと言ったが……コピー?じゃあ、

 「翔は凜の魔法をコピーして使ったのか?」

 「そういう事になるわね」

 なるほど……それなら翔の戦闘能力が高かったり、魔法を使えたり出来るのは納得いく。

 「でも、どこまでコピーできるもんなの?」

 「おそらくだけど、見た能力なら同じように使えるわ。奴は頭がいいみたいだし、本人以上に能力を上手く使えるかもしれないわね」

 そういえば翔は、『わかってない』そう俺に言っていた。あれは自分の方がうまく能力を使えるという意味だったのか。

 「それと発動条件だけど……コピーしてる対象を見てる時じゃないとコピー能力は使えないみたいね」 

 それだと比較的限られた能力に思えるが……それでも大きな脅威だ。

 「いい?翔はもうすぐ大山を抱えてあの宿屋を出ると思うわ。そうしたら……奇襲をしかけるわよ」

 「分かった」


 この出来たばかりの静かな街中、その角で、大きな戦いが幕を開けようとしていた。

 

 

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