51 銃、剣、魔法
思いっきり開けたドア――その部屋の中に、
(――いた――!!)
大山を攫った男、翔の姿があった。
パァン――!
誰よりも早く、椎名が発砲した。だが、この距離なら翔は避けるかもしれない。いや、避けるだろう。俺と戦った時のあいつの能力なら当たらないはずだ。
俺はそう思ったが、
「ぐっ……!」
(……当たった!?)
見間違いではない。椎名が撃った弾は、翔の腹部に当たっている。だが、服の下に何か防弾性の物を仕込んでたのか、ダメージは打撲だけで済んだようだ。
……チッ、だが、それならそれで構わない!
「……うーん、避けにくいお腹の方を狙ったんだけど、これなら頭でも狙った方が良かったかな?」
苦笑いしながらそう呟いた椎名の声を背に、俺は駆ける。さっきの動き――椎名の銃弾を避けれない程度の動きなら、俺は翔を倒せる!
「食らいなっ――!!」
俺は真っ直ぐに剣を突き出す。狙いは、避けにくく致命傷になりやすい肝臓だ。
「ああクソッ、面倒くせえ奴らだなぁ……!」
翔は苦々しく吐き捨て、俺の剣を――
避けた。
(――!?まずいっ……!)
避けられた。椎名の弾は避けれなかったのに。だが、問題はそこではない。
剣が……木造の部屋に俺の剣が刺さってしまった。変に刃が噛んでしまったのか、抜くのにも時間がかかるぞ。
「……っ!!」
仕方なく一旦前転で距離を取る。そしてさっきまで俺の頭があった位置に、翔の拳があった。
「全くよぉ……しつけぇ奴らだぜ。うっとおしいんだよ!!」
なおも翔は俺に迫ってきたが――
「エアロ――!!」
凜の魔法が翔に襲い掛かる。翔はそれをまともに受ける。
「ぐぅぅ……!」
翔は倒れこそしなかったが、苦しそうな声を上げ、片膝をついた。
「蘭次君!!」
椎名が発砲する。その銃弾は二度は翔には当たらなかった。だが、その避けた挙動に隙が生まれ――
(――今だ!!)
椎名が発砲した隙に素早く刺さった剣を抜き、超スピードで翔に迫る。そして、剣を振りかぶる。
俺はその振りかぶった剣を――空中に放り投げた。
そう、俺の動きはフェイント――狙いは、
「エアロッ――!!」
さっき翔に大きなダメージを与えた、凜の魔法――!!!!
「エアロ――」
(……え?)
今のは……誰の声だ?いや、誰って、凜に決まってる。だって、魔法を使えるのはこの中では凜だけで、だから凜が言った言葉に違いなくて――
(……違う、今のは……!)
凜でも、椎名でも、俺でもない。
――翔――
こいつが、凜と同じ魔法を、凜が放った魔法に向かって、
放ったのだ――
いやーしばらく更新が遅れてしまいました。誠に申し訳ありません。
これからはガンガンに更新していきますのでどうかお許しを




