42 大変で大変な洞窟探索
「……思ったより中は明るいな」
洞窟の中は、いくつか壁に穴が開いていて、そこから日の光が差し込んで結構明るかった。
「そうね。一応ランプは持ってるけど……使わない状況を願うわ」
「でも、何があるかわからないからね。後ろからも女の子が一人ついてきているし……」
そう、俺達を尾行している存在もいる。
――大山加奈、さっきまで俺達の仲間になりたいとゴネていた彼女がついてきているのだ。下手な尾行だからバレバレだが。
「魔物が出るらしいけど……そんな雰囲気はしないわね」
確かに、魔物の気配は感じない。だが、油断するのは危険だ。この洞窟は何があるのか全く分からないのだから。
辺りを警戒しつつ、俺達は進んでいく……
そんな中、凜が俺達にだけ聞こえるような小さな声で話し出した。
「後ろの尾けてる子、捕らえるわよ」
「――このタイミングでか?」
いつでもチャンスはあったと思うんだが。
「あたしは洞窟入ったあたりで何かしてくると思ったんだけどね。何もしてこないでついてくるだけなら、いっそ理由を本人に吐かせた方が早い」
なるほど……何をしてくるか分からないから慎重な対応をしていたのか。
「わかったよ凜ちゃん。でも、どういう方法で行く?」
「そうね……耳を貸しなさい」
――
「……今よ」
「ああ」
俺は大げさに振り返る。そして大声で、
「いつまで尾けてくるつもりだ!」
そう言い放つ。
大山はビクッっと反応して後ずさる。
「えっ、いや、違うんですこれは!いつ言い出そうか迷っているうちに尾行みたいになって――」
何か言い訳をしているが、もう遅いだろう。
「あー、その……足元――見てみなよ」
「そんなつもりは――え、足元……?……いやあぁぁぁぁ!!!!」
もう大山の足元は氷の魔法で固められている。俺が大声を出して意識をむけさせている内に凜が魔法を使ったのだ。
「ということで、動かないでね」
最後に椎名が近づいて銃を向けてフィニッシュだ。
しっかしこの作戦……こんなに適当でいいのかと内心思ったが、すげえ簡単に引っ掛かったな。この子戦闘の才能無いのかも。
「さあ、もう逃げられないわよ。あたしたちを尾行してる理由は何?吐かないと痛い目見るわよ」
「ひええ!!違うんです違うんです!私がタイミングを失っただけなんです!」
椎名が銃を近付けると大山は物凄く取り乱した。なんかちょっと可哀想だな。
「わ、私、断られた時は悲しくて辺りをさすらってしまったんですけど、やっぱり諦めきれなくて皆さんについていったんです。それでもっかい頼んでみよう頼んでみようって思ってたらいつの間にか尾行してるみたいになってて……」
「……呆れた子ね。そんなに仲間になりたいの?」
「はい……駄目ですか……?」
うっ、こう言われるとそのまま断るのは辛くなってくるな。とはいえ決めるのは俺じゃなくて凜みたいだが。
「……駄目なものは駄目よ。いくら頼んでもね……」
「ううっ……そんなあ~」
あーあ、泣き始めちゃったよ。凜も厳しいなあ。
「うっ、うっ、椎名さ~ん!蘭次さーん!」
お、おいこっちを見るなよ。俺達がなんか言わないといけないみたいになるだろ。
「…………」
だが、ここまで俺達に熱い思いを抱いてる子に、そんな厳しい事を言っていいんだろうか。断るにしてもせめて他の言い方があるよな。
「なあ凜、いくらなんでもそんな断り方は――」
ないだろ。そう言おうとした時、俺を見ていた大山の目が見開かれた。
「危ない!!!」
俺達三人は一斉に振り向き、それぞれ銃のグリップ、剣、魔法で防御する。
敵だ。人数は、三人。武器は杖、刀、魔法。俺達と似ている構成だ。左側はスキンヘッドの大男。右側は煙草を吸ってむせているヤンキー。そして真ん中のリーダー格の男は……
「……ちぇ。さすがだな」
そう言ったそいつは……金髪、ピアスと見るからに悪い感じだが、悪ガキってよりは、結構歳を食ってるみたいだ。
「なにしてるんですあなたたち!」
大島がそう叫んだ。よせ、過剰に目立つな。
「ああ?何か言ったか?」
そう言った瞬間、俺の力が抜けた。
(何だ――!?この感覚――!?)
どんどん力が抜ける、俺はもう剣で防御できない。
「――くッ!」
俺は剣を下ろしながらなんとか刀を避ける。剣を受け流す形で降ろさなかったらやられてたな。
「力が消えたか?――そうだろうな」
そいつは不敵に笑った。そして――
「きゃっ……!」
一瞬だった。後ろにいた大山が魔法で攫われた。それを認知できないほど早く。
大山は杖を持っていた奴にお姫様だっこされた。
「さて、この子が大切なら大人しく――」
「大山ちゃん!!」
大声を出し、相手に飛び掛かったのは……
「椎名……!?」
あの椎名が、こんなに豹変した……?
椎名は相手に近付いて、どこからか取り出したマシンガンを放った。大山を抱えている奴以外に。
「話は最後まで聞きな!おい、一回ズラかるぜ!」
「わかったぜ兄貴ィ!」
「待て、待つんだ!!」
大山と敵の三人、そして椎名が行ってしまった。
俺はすぐに追うとしたが……力が抜けて走り出せない。
「あんた、どうしたのよ」
凜が心配そうに声をかけて来た。
「だ、大丈夫だ」
俺はそう返答しながら、さっき起きた事を頭に浮かべる。
あいつらは……魔物じゃない。一緒だ。俺達と一緒の人間なんだ!




