41 男:2 女:2
「へ?な、何言って――」
「あの大会見て感動したんです!お願いします!仲間に入れてください!」
こ、この子突然こんなことを言ってくるとは……そりゃあ椎名も困り顔になるわけだ。
「ちょっと、ちょっと待ってよ!まず……名前、そう!名前を教えてくれる?」
「名前……ですか?大山加奈です。」
「あ、うん大山さんね。で、仲間になりたいと」
「はい!」
目を輝かせ言ってくる大山。うん、その心の熱さは伝わるんだけど……
「ちょっと待ちなさい。急にそんなこと言われても困るわよ」
凜がそう言った。うん。俺も同感だ。
「そ、それはすいません……でも私だって――」
「そもそも、私達は同じ人間に脅かされた事だってある。それなのに仲間に入れて欲しいからってはいそうですかなんて言えるわけないでしょ」
凜の言う、人間に脅かされた。それは針田たちに脅された時の事を言ってるんだろう。
しっかし、俺達三人が仲間になった時を思い出すと……とてもこんな偉そうな事は言えないよな。
「……そう……ですよね。私なんかが仲間になれるはずがないですよね。……すいませんでした、余計なこと言って、迷惑でしたよね」
あれ……もっとがっついてくるかと思ったが、思ったより早く引いたな。
「え、いいの大山ちゃん。仲間になりたかったんだよね?」
「いいんです。では、さよなら」
そう言って大山は歩いて行ってしまった。
「……えっと……とりあえずどうする、凜」
「……そうね。とりあえずは……あそこに入りましょう」
凜が指したのは、異世界戦の会場?
「え?でも凜ちゃん、今あそこは不具合の調整中で――」
「だから行くのよ」
――
「何だ貴様ら、何をしに来た」
会場の入り口で中谷さんに呼び止められた。
「針田に会わせて欲しいって約束、忘れたとは言わせないわよ」
「……今は忙しいんだ。せめてもう少し後にしてくれないか」
「なるべく早くしてほしいんだけど」
「そっちこそ、『異世界戦が終わったら会わせて欲しい』って言った事、忘れてないよな?まだ異世界戦は終わってないぞ」
な……なんだこの雰囲気、つかどっちも強気な女だから何が起きるかわからん。
「……まあいいわ。なるべくはやくしてよ」
「ああ。なるべくな」
お、収まったの……か?
「……じゃあ行くわよ」
「い、行くってどこに?」
「ミッションよ」
み、ミッション?
「ああ、新しく天界が作ったシステムのことだよ蘭次君」
「いやそれは知ってるが……一体それが――」
「もうミッションは受けてある。東の洞窟の探索よ」
「えっ?まさか、今から行くってわけじゃあ……」
さすがに急展開すぎやしないか?さっきまで何してたんだっけ……ああそうだ、大山とかいうやつが仲間に入れてほしいって……ちょっと忙しいなこの状況。
そう思いながら足を踏み出す。さて、東の洞窟の探索か……あくまで天界が作り出した世界だが、その構成は一人一人の記憶や考えで成り立ってるらしい。ということは、誰にもわからない無限の世界が広がってるようなもんなのか。
「で、東の洞窟での探索って何すればいいんだ?」
「東の洞窟を調べてなるべく多くの情報を依頼人に教えるのよ」
「は?な、なんだよそれ」
「知らないわよ。ただ、報酬は戦闘能力が上がるアイテムだし、洞窟の敵は強いって話だったから受けただけよ」
「んな無鉄砲な……」
とはいえ、まだこのミッションシステムができて日も浅い。最初のチャレンジとしては危なっかしいが、まあいいだろう。
問題はそこじゃないんだ。
「……なあ凜、椎名。気づいてるか?」
「うん。いるね」
「そうね。いるわ……後ろにずっと」
尾行してきているんだ……さっき仲間になりたいとか言ってた大山が!
あいつ、いなくなったんじゃなかったのかよ。
「ど、どうする……?」
「……まあ、ほっときましょう」
「え、マジかよ……」
このミッション、なーんか嫌な予感がするぜ。




