4 だめだ、いやな予感しかない
「え~っとそれなんですけど……これもあらかじめ言っておかなくてはならないことでして……」
「だから先に言ってよ!」
「すいませんすいませんちゅいません!」
「そ、そんなに謝らなくてもいいよ!噛んでるよ!」
「はい……それで、この世界なんですけど、」
少し前のリプレイを見るように、魔崎がさっきと同じように話し始めた。
「登場人物が現実を基にしているので、蘭次様の知り合いが出てくるんです」
「え……それじゃあこの世界に出てくる奴は全員俺の知り合いじゃないの!?」
「……そうなりますね……」
「いやいやいやいやいやいや、それはだめでしょ!」
「駄目ですか?」
「駄目に決まってんだろ!なんの新鮮味もないじゃないか!」
「大丈夫ですよ!知ってる人だと思わなければいいんですよ!」
「それは無理があるんじゃ――おぉぉ!?」
そんなことを言ってたら、盗賊(田中)が剣を振るってきた。
「あ、あぶねぇー!」
「……そこの女を、こっちによこせ……」
盗賊(佐藤)がそんなことを言ってきた。
「きゃー!助けてください蘭次様ー!」
「いやだから無理があるだろ!?」
「いいから!早く戦ってください!」
「俺が怒られるのかよ!――っと!」
盗賊(田中)が上から振るってきたナイフを俺は剣を横にして受け止める。
ガキンッ。と音がしてナイフと剣がぶつかり合う。
脆いと思っていたアルミ製の剣だが、意外なまでに相手のナイフをしっかり受け止めていた。
(そういえば、アルミといえども金属だもんな……ちょっとアルミを馬鹿にしすぎたかな)
相手が今度は横から振るってきた剣を、俺はかがんでよけた。
(あれ……?なんか変な感覚だな。やけに体が軽い。というか相手の動きがわかってる感じだ)
ふと魔崎の言葉を思い出す。『蘭次様が十万回異世界に思いを募らせてたからです』
(確かに、俺が頭でで考えてたことって戦いのことばっかりだったからな。現実がこの世界に反映されるなら、こんなにいい感じなのも納得だな)
相手の剣をかわした後、素早く相手の懐に迫り剣を当てる。アルミ製の剣だと斬るというより叩く。ていう感じだな
――やっぱり、いいな。
もう一人の敵もナイフで切りかかってきたが、剣で弾いてそのまま相手に叩きつける。
――そうなんだ。俺が求めていたものは。
最後の敵(山田)は弓をこちらに構えて矢を放ってきたが、これも剣で弾く。そして一瞬で倒していく。
――この世界も、悪くないな!
「わぁ~!すごいですね蘭次様!私が今まで見てきた中で一番ですよ!」
「え?そう?」
「ええ!やっぱり戦いのことばっかり考えてると強いですね!」
「それはちょっと傷付くなぁ……」
ぼやきつつ、ふぅ。と息をつく。
「そういえば、なんでこいつらは盗賊の恰好なんだ?」
「それはですね、蘭次様がこの人たちに女を欲している。という印象を持っていたからです。だから女が欲しい=女を盗む。ということで、盗賊なんじゃないですか?そういえば、蘭次様の通っている学校は男子校なんでしたよね?それが関係してるんじゃないですか?」
「……そうだったのか」
急に佐藤、田中、山田が不憫に思えてきた
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