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そう簡単に異世界を味わえると思うなよっ!  作者: はれ
第6 一ノ関歩
38/97

37 いつも突然現れるアイツ

  終わった。


  敵――犬と呼ばれたソイツの剣は俺の頭上に来ている。右にも、左にも避ける事は出来ない。

 完全にミスった。俺はムキになっていたんだ。一ノ関の純粋な魔力が創り出したバカみたいな強さの『犬』に真っ向からぶつかろうとしたのがいけなかった。倒すのは犬ではない、本体である一ノ関の方だ。

  

 この大会――異世界戦は、後は俺の頭に剣が振り下ろされて――


 (されて……)



 

 

 「たまるかよ!!!」

 

 自分の戦闘能力を最大限に活かせ!決して諦めるな!今まで防御に使ってた剣は弾かれて、右にも左にも避けれなくても、必ず何処かに……何処かに勝つ道があるはずだ!


 「うおおおぉぉぉぁぁぁ!!!!!」


 振り下ろされてくる剣に、両手を――

 

 ――で、出来た。

 到底無理かと思ったし、空想上での技かと思ったが、俺の高い伝統能力のおかげで、やった。取れた。


 「なっ……!」

 一ノ関が驚嘆の声を上げる。それはそうだろう。俺だって出来るとは思ってなかったよ。

 

 「真剣白刃取り(・・・・・・)だと……!?」

 そう、真剣白刃取り。日本でも多くのフィクション漫画などに出てくる技だ。漫画なんかだと頭上に振り下ろされる剣を両手で挟んで止めるが、現実の白刃取りは剣を避けた後に挟む技だったらしい。もちろん俺がやったのは前者だ。どれもこれも高い戦闘能力のおかげだ。そして、一ノ関を倒すのに、この戦闘能力の違いが仇となる。

 

 一ノ関は完全に気を取られたのか、今俺が挟んでいる剣に伝わる力がフッと消えた。

 (――来た!)

 俺は挟んでいる剣を反転させる。力が少なくなっている犬相手なら簡単に剣は犬の手から離れた。

 「……しまっ……!」

 

 「椎名!今だ!」

 椎名――。俺達と共に戦いを続けているアイツが、何故かずっといなかったんだ。俺はどっかに隠れているものだと思ったが、どうやらそういうわけでもないみたいだ。だから、この声は椎名に呼び掛けた訳ではない。

 「――!?味方が近くにいるのか!?」

 俺がかけたブラフに、一ノ関は簡単に引っ掛かってくれた。あいつの意識はもう、俺には向いてない!

 俺は犬から取った剣を、刃を一ノ関に向けてやり投げの様に腕を振るう。

 (一ノ関にこの剣を、ぶん投げる!)


 「いっっけぇぇぇぇ!!!!」


俺が投げた剣は綺麗に飛んでいき、一ノ関の胸筋の辺りに突き刺さる。

 「がっ……あっ……」

 苦しそうな声を上げる一ノ関。今まで自分に攻撃が及ぶことなんて無かったんだろう。その痛みはかなりキツいはずだ。

  

 犬に弾き飛ばされた剣を拾い、矢の様に一ノ関の元に走る。一ノ関は犬を防御に使おうとしたが、まるで動かせてなかった。

 「これで……終わりだ!一ノ関歩!」

 俺は剣を一ノ関の腹部に深々と突き刺す。


 


 ――今ここに、準決勝の勝敗が決まった。

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