3 クラスメイトは敵
「あ、すいません言い忘れてましたー」
「何を言い忘れてたらこんな格好になるんだよ!」
異世界に来たのはいいが、俺はアルミ、段ボール、ゴムの装備となっていた。
嘘だろ……せっかく異世界に来れたっていうのに……
「すいません……本当は世界を創る前に言わなくてはならないことなんですが、創られる世界は望んだ人が想像した世界を完全に再現できるわけではないんです」
「先に言ってよ……」
「本当にすいません……それでこの世界なんですが、現実を基に作られているんです。そのため、蘭次様の装備はこのようなことに……この装備は現実で装備を創ろうとした蘭次様。といった感じで……」
「……それって、現実の世界で装備を創ろうとした俺が……」
「予算不足で仕方なく作った物……ということです」
「それじゃただの痛い人じゃないの!?」
「大丈夫です。十万回異世界に思いを募らせてるような人はすでに痛い人です」
「さらっとひどいこと言ったなお前!」
案外鬼畜な人かもしれない。
「でも、なんでそんな風に世界を創るんだ?」
別にそのまま再現してもいいと思うけど。
「実は天界の掟でそうなってるんです。『天界の者は人間の願いを完全には叶えてはならない』と」
「……その掟はどうしてあるんだ?」
「それがよくわからないのです。かなり古くからある掟らしいのですが、理由は特に知られてないんです」
「ふーん……。ていうか、お前やけにこの世界について他人事の様に語るけど、魔崎がこの世界を創ってるんじゃないのか?」
「う……そ、それは企業秘密です!言えません!」
魔崎は両手を顔の前でブンブンと振って否定する。
よくわからないけど、魔崎がこの世界を創ってるわけじゃないようだ。
「……とにかく、俺は望んだ世界には居られないってこと?」
「……はい」
…………
「まじかぁ~」
思わず座り込む。どうしてこんなことに……。
「そもそも、こんなのならこの世界に居る必要ないんじゃないか?」
「ま、待ってくださいよ~!そんなこと言わずに!」
この世界に居る意味を早々に無くした俺を魔崎が必死に引き止めてくる。
「だって、どうせ俺の臨んだ世界じゃないんでしょ?」
「それはそうですけど……でも、せっかく来たんですから!あ、ほら!敵がやってきましたよ!戦いましょうよ!」
「え、敵?」
ってこの装備で戦うのか?
「ほら、あそこにいますよ!」
「どれどれ……?」
荒野の向こうからやってきたのは、まさに敵キャラと言えるような盗賊風の恰好の男が。深めに被ったべレー帽子の下に見える輪郭は――
…………
……………………
佐藤、田中、山田……
「……なあ、魔崎」
「なんですか?」
「こいつら……」
「?どうしました?」
「こいつら全員、俺のクラスメイトじゃねーかよぉぉぉ!!」
またしても俺の叫びが響き渡っていった。
どんどん変な方向へ進んでいきますねぇ。当初はこんなつもりじゃなかったのですが……。いえ、大丈夫ですよ?途中で投げ出したりしませんから!ちゃんと最後まで書くので宜しくお願いします。