25 俺が俺みたいな異世界の事ばかりの奴と戦うって、なんか不思議だ
「ほら、さっさと乗れ」
「……なんだよこれ?」
チーム名が決まった俺達は、中谷さんに連れられて魔法陣の様な物の前に立たされた。
「戦う場所はこの空間とは隔離された場所でやる。その場所に転生するための装置だ」
そんなのがあるのか。
「後、転送されるのに1分くらいかかるからな」
「長いなそれ……」
俺達は魔法陣の上に立つ。すると周りが異世界に行くときのように溶けて泡状に――色はいつもの金色じゃなくて青色だけど。
「蘭次。この間にしか話せないことがあるの。今は何の監視もないから」
「……凜?」
凜がこっちに近付いて椎名に聞こえない位の声量で言ってくる。
監視がないからって、そんな秘密にしなければいけないことなんて――
「針田が言っていた『神』って、何の事だと思う?」
凜は低いトーンで言ってきた。そういえばあいつ、『神を倒す』とか言ってたような……
「あたしは思うの、この世界の神――それはきっと、世界を管理している人間。この世界の『管理人』だと」
「管理人……?」
「そう、そして針田はその管理人に対抗する術を持っていた。あいつはこの世界の大半の事をわかっていたんじゃないかと思うの」
「でも、だからってそれがどう――」
「蘭次君、凜ちゃん。もうすぐだよ」
「あ、ああ……」
椎名に会話を妨げられてしまう。もちろん本人にその意思は無かっただろうが。
目の前が構築されていき、緑一色の草原に出た。遮る物が無い草原を駆け抜ける風が俺の頬に当たる。
「来たか、では少し規則についておさらいをさせていただく」
どこからか中谷さんが出て来た。
「ちなみに私は映像として貴様らの前に出ている。では言っていくぞ」
中谷さんから伝えられたことは、
・どちらかがギブアップを申し出るか戦闘不能になるまで戦い続けるデスマッチ。
・この空間で死んでも現実世界には戻されず、先程までいた場所に戻るだけ
・痛覚は普段より数段軽減されているが、相手を必要以上に攻撃過ぎるのは失格の対象になる。
・その他こちら側が不適切だと判断した行為をした場合は失格となる。
・最後に異世界戦の戦いは会場の巨大ディスプレイに流され多数の人間に見られている。
「以上だ。他に何かあるか?」
「単刀直入に言わせてもらうわ……針田に会わせて欲しい」
「なっ……!」
「はあ!?おい凜一体何のつもりで――」
「すぐにとは言わない。でも考えていて」
何を言っているんだこいつは。殺されかけた相手だぞ?それに会いたいって馬鹿か?気でも狂ったのかよ……。
「……わかった」
「え、わかっちゃうのそこ!?」
てっきり『そんな要求は受けられん!』とでも言うと思ったのに
「追々理由は聞かせて貰う。では、もう時間だ。失礼するぞ」
中谷さんが消え、静寂が訪れる。
「凜、アレはどういう理由があったんだよ?」
「後で話すわ。それより……始まるわよ」
凜の見ている方向と同じ方向を見ると、男女二人が歩いてきた。
「それじゃ、頑張ろうか蘭次君、凜ちゃん」
「あ、椎名。言い忘れてたが、本当にあの時はありがとう」
「ううん。まだ蘭次君に消えてもらうわけにはいかないからね」
椎名が言った言葉は耳を通り過ぎっていった。何かおかしな事を言った気もするんだが、全く思い出せない。
「ほら、ぼやぼやしないで蘭次君」
「あ、おう」
向いたというより向かされる形でもう一度男女を見ると……
……なんだあれ?赤と白のしましま模様の服を二人とも来ていて、手を繋いで今の幸せを噛み締めているような表情の二人が近づいてきたぞ……?
「あ、相手の方ですか?よろしくお願いします~」
「よろしくお願いしまぁす。こころんと私も、がんばっちゃうからぁ」
「こっちは僕の――」
「もういいわ」
「――え?」
「もう全て理解したもの」
「ああ、許される事ではないな」
「あたし達が制裁を加えるわ」
「いや……処刑をな」
「「この……」」
「「リア充があああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」」
初めて凜と意見があった気がする




