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そう簡単に異世界を味わえると思うなよっ!  作者: はれ
第5 異世界戦
25/97

24 記憶喪失とかいう子供の時何回も使う言葉

 「ここだ。入れ」


 澄香さんに言われて『管理所」と書かれているプレートが下げてある扉を開けて入った。


 「え……」

 「遅れてすみません……えっ?あれ!?椎名様と凜様!?」


 ――中には、椎名と凜がいた。

 「やあ蘭次君。遅かったね」

 「遅かったって、お前らどうしてここに居るんだよ!?」

 今ここで会えたということは針田や河木から無事に戻ったのか?


 「どうしてって、もう中谷さんが連れてったじゃないか」

 「え?中谷さんって……?」


 「……あんた、やっぱり手錠つけた方がいいな……」

 「え……あ、あの凶暴女か!!」

 「誰が凶暴女だこのドベ!」

 「ふぐぅぅ!?」


 澄香――中谷さんのローキックが膝に入る。痛ってぇ……。

 でも思い出した。この人は中谷澄香さん。確か椎名の監視役とか何とか言ってたような……。

 「そういえば先程は説明が足りなかったな。私は中谷澄香、この魔崎と同じように『異世界の願い叶えちゃいます部』に所属している。主に治安活動に参加することが多い。よろしく頼む」


 中谷さんはサクサクと自己紹介を済ませる。前から思ってたけど、サバサバして仕事ができそうな人だなぁ……。


 「それでは丹川蘭次、聞きたいことがある」


 「えっ、いや俺も聞きたいことが――」

 「こっちが先だ。単刀直入に聞こう。『アレ』はなんだ?」


 まだ一言も喋っていない凜の指がぴくっと動いたように見えた。

 『アレ』って……

 「なんですか『アレ』って」

 「とぼけるな。ここに居る――魔崎以外は皆見たんだ。貴様に黙秘する権利は無い。答えろ」

 「ちょ、ちょっと待ってくれ、俺には何の事だかわからないんだが――」


 「何を言っている!お前がやった事だろう!?それをまさか覚えてないとでも言うのか!」


 「――あ、ああ……」

 本当に俺は覚えてない。『アレ』って、俺が何か出したってのか……?


 「……なら、」

 中谷さんは少し考えたような素振りを見せて、

 「お前は針田達に攫われたんだろう?どこまで覚えている?」

 そう尋ねて来た。

 中谷さんの事を思い出したおかげで、実は記憶の殆どが戻ってきている。しっかり答えられるはずだ。

 「椎名が助けに来て、中谷さんが手錠を掛けた」

 「それ以降は?」

 「何も……」


 「……そうか、わかった」

 

 「お、おいわかったってなんだよ。そもそも俺は何で現実世界に戻ってたんだよ!俺はこの世界で死んで――」

「いいから黙ってなさい!!」

 さっきから一言も発してなかった凜が声を張り上げる。

 「皆あなたの為に言わないでいるの、なんとなくわかってるでしょう?本当は知らなくていいって、それならその考えに甘えなさい!これはあなたがあなたである為に必要な事なの!!」

 

 「な、何でそんな――」

 含みのある言い方するんだよ。そう言おうとした口は閉ざされた。

 凜の鋭い目が俺の顔を睨んで来たからだ。

 「まあまあ落ち着いて、それより中谷さん、異世界戦の件はどうなった?」

 「……ああ、それなら特例が認められた。エントリーの時間は過ぎたが、特別に参加していい」

 「それはよかった。ほら皆、せっかく出れるんだからそっちに集中しようよ」

 

 椎名に宥められて意識が背く。本当にこいつは空気が読める。じゃないけど、絶妙なタイミングで話してきやがる。どこに意識があっても聞かせられるような、そんな感覚がある。

 「……そうね、そうしましょう」

 「あ、ああ……」

 「だが貴様ら、チーム名が登録されてないぞ。まだ決まってないなら早く決めろ」

 「「「あ」」」


 そういえば決め手なかったっけ。

 「うーん、チーム名かぁ……」

 「『男二人と才女一人』でいいでしょ」

 「さらっと自分持ち上げたな凜」


 「『幸せ―ズ』とか?」


 「「……」」

 俺と凜は思わず絶句する。こいつ、ネーミングセンスの塊もねぇ……しかも凜はふざけて言ったんだろうが、椎名は至極真面目に言っているよ。

 「い、いや、それはやめといた方がいいかなあ」

 「ちょっとあたし達にはあってないかなー」

 「そう……僕はいいと思ったんだけど……」

 

 椎名が珍しくがっくりした感じに言ってくる。意外なところがあるもんだな。


 「そうだな……魔崎、何かないか?」 

 「うえっ?私ですか?そうですね……『チーム タクティクス』なんてどうでしょうか。タクティクスには、戦略や策略みたいな意味があります」

 「それあんまりいい意味じゃないような……でも確かに俺達はそんな感じだなぁ」

 弱点突くこと多いし。

 「あんたみたいに中二病こじらせてる奴にチーム名任せたくないわ」

 「中二病って……お前こそ中二病だろ!」

 「なんですってこのスカタン!」

 「黙れ引きこもりニート!」

 「いい加減に……ファイアー!」

 「ふおお!?それは反則だろう!?」

 


 結局チーム名は『チーム タクティクス』に決まった。 

次の話からアクション回です!お楽しみに!

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