23 元々俺はツッコミ気質なのだ
「蘭次様、もうすぐ一時間経つんですけど……どこに転送させればいいでしょうか」
魔崎がずっと聞きたかったことを吐き出すように言ってきた。
「そういえば……あいつらどこにいるんだ?魔崎、わからないか?」
「すいません。そこまではわからないです……」
「だよなあ」
あの闘技場がどこかもわからないし、凜にどうやって合流しようか……。
あ、そういえば椎名が異世界戦の会場で待ってるんだっけな。
「じゃあ異世界戦の会場で頼む」
「はい。それでは……クリエイション――!」
何度も見慣れた光景が広がる。世界は金色の泡となり、俺の体は浮遊感に包まれる。
その浮遊感が段々と無くなってきて、いつしか俺の足は地面に着いていた。
「転送、完了しました!」
「うん。ありがと」
降り立ったのは……アーケード街のように開けた場所。
人がやたらと多い。空から見たらゴミのようだろう。
多くの雑踏が俺の周りを過ぎ去っていき、俺は椎名を探す。
「蘭次様、私が案内しますっ」
「お、なら頼むよ」
「任せてください!」
~五分後~
「こっちです蘭次様ー!」
「わかったから走るな!他の人とぶつかるぞ!」
~ニ〇分後~
「えっと、確か……あ、この道かな……?」
「おい大丈夫か……?」
~四〇分後~
「あれ、あれれ?でもここはさっき通って、あっちもだから……こっちですね!」
「……」
~1時間後~
「わがりまぜんんんん」
「なんとなく察したよ」
フラグしか建ってなかったもん。
「ってああもう何してんだよ!もう一時間も経っちまったじゃねーか!!」
「ずいまぜぇぇぇんん」
「ああもうわかったから泣くな!後鼻水拭け!」
「あい……」
チーンとどこからか取り出したティッシュで鼻をかむ魔崎を少し宥め、改めて周りを見渡す。
(……どこだよ……ここ……)
迷ってた間の記憶をフル回転させてみるも、なんにもわからん。
「……クソッ。せめて椎名にさえ会えれば……」
「ああ蘭次様!」
「なんだ!!」
「もうすぐ異世界戦が始まってしまいます~!」
「そんな場合じゃないけどそれやばくない!?」
そういえば元々異世界戦をするためにこの世界に来てたっつうのに、どうしてこうなったんだよ……。
「ああ、こっちか!?」
「そっちはさっきも通りましたよ~」
迷っていたのに何ほざいてやがる。と思ったが口には出さなかった。
「どっちだよ全く!」
「わからないです~」
凜や椎名を探してきたのに俺達は仲良く迷子になってるなんて無様すぎる。早く……早くしないと。
「ならいっそ周りの人に聞い――」
「そこで何をしている、魔崎奈美!」
――魔崎奈美。
それは、こいつのフルネーム。
「す、澄香さん!?」
魔崎の名前を呼んだのは、スレンダーで釣り目の少しキツそうな女の人。
――って、前もこんな事考えたような。
「探したぞ魔崎!こちらが忙しくなったから来て手伝えと言っただろう!何をしていた!」
「あわわわわ澄香さん……実は、迷っちゃってました……」
「またか!何度言ったらわかるんだ貴様は!」
「ひえええすいませぇぇん」
うわー。めっちゃ怒ってる。てか、何でこの人にあったような気がするんだ?
「全くこれだから貴様はいつまでも……」
その女の人はこちらをキッと睨んだ後、驚愕の表情を見せた。
「き、貴様は何故ここにいる!?」
――はい?
何を言ってるんだこの人、怒りでおかしくなったのか。
「と、ととととにかくついてこい!話はそれからだ!魔崎も早く来い!」
「すいませぇぇぇん」
「お、おい!」
……よくわからないけどとりあえず魔崎の知り合いみたいだし、おとなしくついていくか。
……できればもっと早く見つけて欲しかったけど。




