2 おかしい、これは異世界じゃない
「……は?」
「さあ!それじゃあいきますよ!」
「いやいやちょっと待て!いったいお前は何なんだ!?」
「え?だから私は天界からき――」
「そんな話が信じられるか!」
思わず声を荒げる。そりゃそうだ。天界から来たなんて信じられるはずがない。
だけど同時に、もしかしたら異世界に行けるかもしれないと。そんな思いが頭のどこかに浮かんできたことも確かだった。
「じゃあ……本当に天界から来たのか、証拠を見せてくれ」
『もしかしたら』が段々『たぶん』になってきて、いつの間にか『きっと』になっていた。
「証拠?うーん。そうですねぇ……あ、私の体の造形は一般的なアニメとかを参考にしてますよ」
そう言われてみると……目はかなりデカくて、あごはやたらと細くて、ハイライトが入ってるようにも……見えなくもないな。
「後は周りをキラキラさせたりとかはできますけど……」
「あ、いやもういいよ」
「それじゃ!新しい世界を創らせてくれますか」
正直な所、この魔崎という子が来た時から俺は何かを期待してたのかもしれない。突然きた非日常に、俺の心は抑えてたものがどんどんあふれ出していく気がした。
「……わかった。よろしく頼むよ」
賭けてみよう。魔崎に。
「それでは、まず魔力を吸い取らせていただきます」
「え、何それ」
「世界を創るには魔力が必要なんですけど、私たち天界の者たちの魔力では足りないので、人間から魔力を抽出するんです」
「よくわからないけど……魔力取っちゃって大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。人間界で魔力を使ってる人はいません」
そうなのか。なんか勿体ないな
「それじゃあ、世界を展開させていただきます」
「でも魔崎、お前は俺の願いを知らないんじゃ」
「それも大丈夫です。魔力を抽出した時に蘭次様の記憶も見ました。バトル物ですね」
ということは自分の妄想を全部見られたってことか……なんだか恥ずかしいな。
「新たなる世界へ!レッツスタート!」
「もうちょっと凝った英語にしなよ……」
魔崎の掛け声とともに周りの景色が泡のように溶け、金色の光に包まれた。
少し緊張するな。ずっと望んでた、二次の世界へ……。
「所で、魔崎」
「はい?」
「なんで俺が選ばれたんだ?」
「蘭次様がこの世で十万回異世界に行きたいと思ったからです」
「そんなに考えてたのか……」
「さあ、そろそろ世界が創り終わりますよ!」
そうか。俺の願いが……ついに。
「世界、創り終えました。それでは、幸運を祈ります!」
ついに、叶うのか!
――目の前には、見渡す限りの荒野。片手にはアルミ製の剣。体を包む段ボールの鎧。頭を守るゴム製の兜。
「おかしいだろぉぉぉーーーーーー!!!!!!」
今世紀最大の叫び声が荒野に響き渡った。
読んでくださった方、ありがとうございます。まだまだ続いていくのでよろしくお願いします。




