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16 いくら不遇な扱いでも主人公はやっぱり強い……多分。

  「凜!この隙に一気に――ほっっと!」 


 倒れた針田に尚も攻撃を仕掛けようとするが、さっきより数段遅い河木の攻撃が来たため、躱していったん距離を取る。

 「……針田ァ。しばらくそこで眠ってな。こいつらくらい俺一人で十分だ」

 「よく言うぜ。さっきもやられそうになってたじゃねえか」

 「ああ。どうせ食らったって大したダメージはないんだから、防御なんてする必要なかったのになァ。確かにあれは、俺の判断ミスだぜェ」

 「……何?」

 河木の言動に耳を疑ったその時――


 「おらあ!!」

 河木の右腕が俺の首元めがけて来た。だが、

 

 (この程度の攻撃、当たらない!)


 河木の腕を屈んで避け、生まれた隙で河木のわき腹を剣で――斬る!

 ガシィィィ!!!

 という音が聞こえた気がした。いや、普段から妄想に明け暮れていたからこういう時に効果音が自動的に頭の中で響いたのかもしれない。違う。そんなことはどうでもいい。おかしいだろ……俺の剣を、

 

 (手で受け止めている!?)

 そんな馬鹿な。確かに受け止める瞬間、手を腕ごと剣の動く方向と同じように動かせば衝撃を多少は無くすことが出来る。でも、これはそんなことを一切していない。有り得ない。どうやったんだ。


 「……何で俺が、針田とここに来たか知ってるかァ?」


 剣を手で受け止めているというのに、まるで気にも留めてない様子で河木は口を開く。

 「この世界に居る奴はなァ。一人一人が戦闘について大なり小なり特徴を持ってる。お前は総合的に能力が高い。向こうの女は自分の精神をうまくコントロールでき――」 「エアロッ!」


 河木の話ガン無視で凜が放った魔法は、河木の背中に当たる。だが、効いて……ない。少し体は動いたが、ダメージはほとんどないみたいだ。

 「話は最後まで聞きな。さっき俺があの女の魔法を防御しようとしたのは、針田ほどの魔法を練れるんじゃねェかと思ったからさ。だが、これくらい屁でもねぇ」

 実はさっきから俺はずっと剣を引き離そうとしているが、河木の握っている剣は一向に動く気配がない。普通なら手は血まみれに、指はちぎれていてもおかしくないのに。なんなんだこいつは……?

 「話がそれちまったなァ。つまり俺と針田が組んだのは、この俺の能力――」

 一呼吸おいて河木は言った。その能力の名を。


 「ソールドウォール」


 「堅固な(ソールド)……(ウォール)……?」


 「そう。まさに壁さァ。体の組織――特に皮膚がカッチカチって訳さァ。それと筋肉も多少は強化されているな……まあこれは現実世界でも体はデカかったがな」


 「ば……バカ言え!そんな体だったらまともに動けるはずが――」

 「できるんだなこれが。ここは異世界だぜェ?だが……この世界が『完全な異世界』になるまではまだまだだけどな」


 『完全な異世界』だと?そういえば針田も神を倒すだとか言ってた……神?それって……


 「『完全な異世界』って……まさかお前らは……!」

 「いんや。あくまでもともと俺らは一般人だった奴らさ。お前と同じようにな。おっと。これ以上喋るわけにはいかねぇなあ。あくまで俺と河木しか知らん話さ」


 肝心な所で、河木は話を切ってしまう。

 「なら、吐いてもらう!お前らがこの世界で何をしようとしているかをな!」

 「やってみろよォ。あー。さっきは針田に魔法をかけてもらったが……いいか、確かにお前は戦闘能力が強い。だが、俺を倒すほどの力がねぇのさ。いくらダメージに耐えても、相手が無傷なら意味はないように……なァ!!!」


 河木の話が終わり、剣を握ってない方の手でラリアットを仕掛けてきた。剣は全然動かない。


 「……チッ」

 俺は舌打ちして剣を離し、ギリギリのところでラリアットを避ける。

 もう少し判断が遅かったらやられていただろう。だが……剣を失っては、攻撃ができないし、そもそも、剣が通らなかったら、攻撃の仕様はどこにもない。どうする……?


 「来ねえのかよォ。なら……俺から行くぜ!」


 河木のパンチ、キック、頭突きも含め、多彩な河木の攻撃が俺を襲ってくる。

 針田の魔法がないぶん。見切って躱すことはできるが……。こっちは何もできない。

 俺は、河木を侮っていた。針田さえ倒せば余裕だと。でも、こいつは元の力が高いから、真っ向からの力比べで相手を『削れる』俺も丸腰ではこちらがただ消耗するしかない。

 だめだ、このままでは……


 (負ける……!)

 敗北を心のどこかで意識したその時――


 

 「ダーク!!」

  

 凜が放った漆黒の塊は、河木の腕に――


 「ぐっ!?」


 河木は俺に攻撃しようとしていた腕を押さえ、片膝をつく。

 (ど、どういうことだ……!?)

 さっきは凜の魔法は一切ダメージがないように見えた。それなのに今度は確実にダメージを負わせている。

 いったいどうして――そう思って見た凜は、少し荒い息をしていて、得意げな顔をして、


 「この程度の魔法は屁でもない?あたしの本気を受けてももういっぺん言えるならいってみなさい!その前にあんたの口を利けなくしてやるわ!」


 毒を突いてみせる、笑う凜の姿があった。


いやー私は凜が好きなんで、もっと凜を目立たせたいんですけど、そうすると主人公が主人公っぽくなくなるジレンマ。

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