14 動物は危険と思ったらすぐに逃げる。しかし、人間は……
「へっ。そうおびえんなよ。別に食おうって訳じゃねェんだから」
堀の深い顔面、顎を覆う髭。まさにワイルドといった感じの男。左腕には襲われたときに見た炎のようなマークがあった。間違いない。こいつが俺達を襲ってきたんだ。だが、俺達が襲われた時には十数人くらいいたけど、今はこいつしかいないのか……?
「さてと。来てもらうぜ。俺だって意味もなくてめえらを捕らえたんじゃないからなァ」
そいつが歩き出して行ったので、俺達もついていく。逃げれそうにもないしな。
「なら、捕らえた理由を聞かせてほしいわね」
「なァに。すぐわかるさ」
そういってそいつは開けた場所に出ていった。俺達も続けてその開けた場所に出ていく。
そこには半径が二十メートルくらいある、周りを壁で囲まれた円状の空間だった。これって、よくゲームとかでもある……。
「闘技場ですよ。御二人さん」
その空間の真ん中にスーツを着て、メガネをかけていて痩せている男がいた。
「……どういうつもり?あたしたちを捕らえて、こんな所に連れてくるなんて」
凜が疑うように言う。その細身の男は口を開いた。
「……わたくし達が、多数の人間とフレンドになっていることは知っていますか?」
やっぱり、凜の言う通りだったのか……!
「まあ、そのわたくしのフレンドは今はここにいないですけどね。これからすることは、最重要機密ですから」
「何を……するつもりだ?」
「究極魔法ですよ。そしてわたくし達は、『神』を倒す」
「か……み……?」
何を、何を言ってるんだこいつは……?
「おっと。これ以上は言えませんね。つまりあなた達は、私の新しい魔法の生贄になるのです」
「新しい魔法?待ちなさい!そんなことは――」
「できるんですよ。『魔法表』あれが何故あるのかというと、あなた達凡人が想像しやすいようにするために存在する。わたくしなら、全く新しい魔法を作り出すことが出来る」
「それなら俺達を捕らえた後、眠っている間にやればよかったじゃないか。なぜ俺達をここに連れてきた!」
「ああ、それは針田――こいつがサディストだからよォ。お前らが苦しむ姿を見たいんだと」
「そのためにあなたを呼んだのですよ。河木。……さて、見せてください。悶え苦しむ姿を。そして、わたくしが紡ぐ物語の踏み台になるがいい!」
針田は興奮した様子で話を終えた。
「……舐めた真似してくれるじゃない。あなた達こそ後悔しなさい!あたし達を拘束もしないでこの場所に連れてきたことを!」
凜の声と共に、俺は動き出す。俺だからこそできる。
針田と呼ばれた奴に素早く詰め寄る。こいつが究極魔法を使うと言うなら、まずこいつを叩く!
おそらく見た目の細さからしても針田は戦闘能力が低い。俺の素早さなら、針田は避けれない!
「食ら――うっ!?」
え……な、なんで俺は、針田に攻撃をしようとしたはずなのに、何で――
(真横に吹っ飛んでいるんだ!?)
そのまま俺は吹っ飛ばされ、壁に打ち付けられる。
「ぐあっ!!あ……く……」
そしてそのまま、地面にうつ伏せに倒れてしまう。
「おっと、言っておきますが、河木はわたくしの魔法――『ブレイブ』で、戦闘能力を大幅に上げています。と言っても、遅かったみたいですが……」
ってことは、一瞬で俺の元に河木が来て、タックルかなんかで吹っ飛ばしたっていうのかよ……。そんなの、ありかよ……!
「さあ、立ってくださいよ。それとも、もう終わりですか?」
…………
……………………
「……言われなくても、やってやるよ……てめえの欲望?究極魔法?踏み台?くそくらえだ!」
倒れていた体を無理やり持ち上げる。大丈夫だ。俺はあれくらいでへこたれたりしない……!
「ぶっ倒す。てめえらのその余裕そうな顔をボコボコにしてやらあ!!!」
「蘭……次……?」
俺はこういう奴らが嫌いだ。まるで自分たちが勝つのが決まっているかのように、余裕そうにしてる奴らが。
大丈夫。きっと倒せる。なぜなら、こういう奴らは俺の妄想の中で倒してきたからな!!
本格的に中盤に差し掛かってきました。蘭次達の行方、どうか見届けてください




