13 魔法っていいよな。MPの概念はよくわからないけど
『違う!あるんだよ!異世界はあるんだよ!信じてよ!」
俺は……何を頼りにしてきた?心の拠り所はどこにある?人間は皆何かを頼りにして生きている。そうしないと心が保てないからだ。皆そうなんだ。
なのに、なのにあいつらは、俺が頼りにしてきたものを踏みにじってきた。
ふざけんなよ……人が夢見てきたものを、何だと思ってるんだ。許さない。許さない許さない俺は絶対に
「おめーらをゆるさねえからなあああああーーーーーーっっっっっっっ!!!!!!!!!」
「しっかりしなさい!」
「……えっ?」
俺は……えっと、あれ?どこだここ?てか、なにしてたっけ……
「凜、えっと、とりあえず、ここどこ?」
まるでゲームにでも出てきそうなここは……独房?
右を向くと、鉄格子が張られていた。看守にあたる人はいないみたいだけど……。
「あなた、さっきまで……いや、なんでもないわ」
「な、なんだよ、気になるだろ」
「なんでもないって言ってるでしょ。それに今はそんな状況じゃないってわかるでしょ?」
なんでもないって言うときって、本当になんでもない時ってないような……まあ、いいか。凜の言う通り、今はそんな状況じゃないからな。
「えーっと、それでここはどこだ?」
「見てわからない?独房よ」
「それはわかってる。何で俺達は『異世界戦』の会場近くにいたのにどうしてこんな独房にいるんだ。そもそもここはどこなんだ。って言いたいの」
「そんなのあたしが知りたいわよ」
ですよねー。
「ただ、あたしたちを襲ったやつらなら大体の見当はつくわ」
「えっ?」
むしろそこが一番わからないと思ったんだが……。
「あなたがここ一週間用事があったとか言ってたけど、あたしはその間もこの世界に来ていた。そしたら、変な噂を聞いたのよ」
「変な噂?」
「そう、『多数の人間とフレンドになってるにも関わらず、チームを作らない集団がいる』ってね」
「それって、やっていいのか?」
「少なくとも、今はチームの存在意義は『異世界戦』に出場することしかないから、問題はないわね。敵の変化はフレンドを組むだけで起きるしね。ただ……それが一人や二人ならともかく……多数となると、やっぱり怪しいわね」
「そうか。で、そいつらが俺達を襲ってきたっていうのか?」
「恐らく。ね」
「でも、なんで……」
どっかの人間がただチームを組まないということをしていても、俺達とはなんの関係もないはずだ。それなら、何のために俺達を……。
「はっきり言うわ。奴らがあたしたちを襲ってきた理由は――」
「理由は?」
「—―偶然よ」
「はい?」
あまりに予想外な回答に頭が一瞬真っ白になる。え?偶然って、ええ?
「そ、それってたまたま俺達がいたから襲われたって言うのか?意味もなく?」
「まあそうね。きっと向こうにとって、『異世界戦』に出場する人間なら、誰でもよかったのよ」
「で、でもだったらどうして『異世界戦』に出る奴に絞って……」
「……あたしは、そいつらについてもう一つ噂を聞いたわ。それは、奴らが魔法に関する研究を行っているという事よ」
「ま、魔法の研究?って、そもそも凜はなんで魔法を使えるんだよ?」
そういえば、ずっと聞こうとしたけど、聞くタイミングがなくて言えなかったこと。俺は魔法を使っても価値が下がったようなものしか出てこない。でも凜の使う魔法はゲームなんかで出てくる魔法にそっくりだ。それはなんでなんだ……?
「あんたも知ってるでしょう?この世界は魔法を使っても、劣化したように変なものしか出てこない。それは何故か。理由あ現実世界の記憶が混ざってるから」
「あ、ああ……それは知ってる」
「じゃあ、質問よ。現実世界の記憶が混じるせいで魔法が使えないなら、魔法を使うにはどうしたらいい?」
「いや質問と言っても、それがわからないから聞いてるんじゃ……」
いや待て、今、凜はなんて言った?現実世界の記憶が混ざるから魔法が使えない。それなら、魔法を使うには、その現実世界の記憶を……。
「あ……」
「気づいたみたいね。そう、あたしが魔法を使えるのは――」
「お前記憶喪失だったのか!?」
「あなた絶対わかってないよね!?」
え、違うの?
「ああ、もう……でも、原理はそうよ。今考えてることから魔法のことだけ抜き出し、それだけを頭の中で発展させていくのよ。それで魔法を使うことが出来る」
「で、でもこの世界に来る前に魔力を吸い取ったじゃないか。それならその取り出された魔力にある記憶から魔法が使えなくなっちゃうんじゃないのか?」
「……それはあたしも考えたわ。でも、どうやらこの世界で最初に吸い取った魔力は敵にしか現れないみたいなのよ」
「それってやばいんじゃないか?だって天界の掟で『人間の願いを完全に叶えてはならない』っていうのがあるんだろ!?フレンドシステムがある今、俺たちの願いはすべて叶っちゃうんじゃ……」
「あたしだってそこまではわからない。でも……いいえ。今はそれどころじゃないわ」
「そ、そうだな……それで、魔法は俺でも使えるのか?」
「さあ。でもあなたは魔法を使うタイプじゃないわ。理由として、あなたは戦闘能力が高い。魔法っていうのは、集中力を一気に高めないといけない。そんなの動き回って出来るわけがない。せっかく戦闘能力が高いのに、そんなのもったいないでしょ」
「な、なるほど」
「でも、方法がないわけじゃないわ。あなたの場合、武器を出せばいい」
「ぶ、武器?」
「そう、武器よ。実は武器も魔法なの。魔法の特徴として、出すまでは多大な集中力が必要だけど、一度空間に現れれば、多少集中力が低下しても消えることはない。魔法の場合、そこから炎とかを動かすのにまた集中力が必要になるけど、武器ならあくまでも動かすのは自分よ。それならあなたにもできるかもしれない。むしろ、あなただからできるかもしれない。あたしは戦闘能力が低いからね」
「わ、わかった」
「いい。何より大事なのは、頭の中をその使う魔法の事だけでいっぱいにすることよ。魔法でも武器でもね」
そう言われると、なんだか俺にも出来るような気がしてきた。
「話がだいぶそれちゃったわね。魔法の研究をしてる奴らっていうのは――」
「おーおー。もうお目覚めかァ?思ったより早かったな。こいつは歯ごたえありそうだぜ」
耳に飛び込んできた低くくぐもった声。子供だったら必ず泣いてるだろう。声の方を向くと、2メートルはありそうな筋骨隆々の男がいた。
こ、これは……やばいかも、しれない……
えー皆さんに謝っておくことがあります。話中に出てくる蘭次の『用事』の二文字、実はこの用事に関する話を書こうと思っていたのですが、現在書けておりません。誠に申し訳ありません。もしかしたら、どこかのタイミングで割り込み投稿をするかもしれません。これからもよろしくお願いします




