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そう簡単に異世界を味わえると思うなよっ!  作者: はれ
第3 美永凜
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11 走れ!他よりは早く!

 「はああ……エアロッ!」

 凜が唱えた魔法は俺が前に唱えた時とは違い、風が鋭利な刃のような形をして敵に飛んでいく。でも――

 「く……っ!いったいどうやって攻めればいいのよ!このガラクタ!」

 ――機械の敵にはいともたやすく弾かれた。さっきからずっとこんな感じで相手がびくともせず、こちらがただ消耗するだけの状況が続いていた。

 「凜ちゃんは一旦離れて!蘭次君、どこか弱点のような所はある?」

 「わからん!そもそも、弱点あるのか、こいつ……?」

 「あります!運営が出した敵でも、きっとどこかに弱点があるはずです!」

 椎名と俺と魔崎がそれぞれ焦った口調でしゃべる。

 「弱点があるって言ってもな……校長と違って、こいつはどこにその弱点があるかのヒントすらどこにも……」

 (いや待て、出てくる敵自体が運営が出した敵だが……そもそもチームを組んだ時点で俺と椎名と凜の三人分の現実や、記憶を基にして作られている。それなら敵の弱点のヒントは、どこにもないんじゃないか……?)

 「蘭次君!危ない!」

 「え……?」

 いつの間にか考え込んでいた俺が見上げるとそこには敵の巨大な手が――


 「なにボサッとしてるのよ!!!」


 凜の声と共に俺の体が吹っ飛ばされる。どうやら凜の魔法を俺にぶつけたらしい。 

 「わ、悪い。すこし、ぼんやりしてた」

 「この戦いはチームとしての出場資格を試されている戦いなのよ!一人でも倒れるわけにはいかないの!ただでさえこの敵は弱点が全然見つからないって言うのに……!」

 「弱点……」

 校長の時は結構簡単に見つかった弱点。しかし、今回の敵はなかなか見つからない。

 「うーん。蘭次君。凜ちゃん。どこか弱点になりそうな所はないかな」

 さっきから攻撃を重ねてはいるんだが、文字どうり歯が立たない。剣は弾かれ、魔法もまるで効かない。


 (でもそれなら、まだ攻撃してない箇所に弱点がある……?)


 改めて敵を見つめる。五メートルはありそうな敵には、まだ下のほうにしか攻撃を加えていなかった。

 「ってことは……椎名!相手の後ろに回って、相手の体の上の方に何かないか見てくれ!俺は前方を見る!凜はサポートを頼む!」

 それなら、まだ攻撃してないところに弱点があるかもしれない。

「オーケー!必ず弱点を見つけてみせるよ!」

 「あんたたちのサポートなんて片手で済むわ。あたしも弱点を探す」

 二人の頼もしい言葉。俺も全力で弱点を探す。

 「どこかに、あるはずなんだ――っとと」

 弱点を探す間も敵から攻撃が来る。でも拳でしか攻撃してこない上に動きはスローだ。ちゃんと見ていればよけるのは容易い。


 「蘭次君!ちょっと来て!」

 「あったのか!?」

 相手の攻撃に注意しながら椎名のもとへ向かう。

 「あれ。よく見ると亀裂が入ってない?」

 「たしかに……そういわれてみると」

 傷一つないメカのような敵の後頭部には、たしかに小さいながらも十センチくらいの傷のような溝があった。

 「どれよ……見えないわ。まあ、あたしは視力が悪いからね。見えない以上。あたしの魔法でその亀裂とやらに当てるのは無理ね」

 凜もこっちに来てそんなことを言ってくる。

 「椎名、銃であそこに当てられたり出来ないか?」

 「うーん……あそこまでここから六メートルくらいだからね……あんな小さい所にうまく当てられるかというと、少し厳しいかな。僕は元々戦闘は苦手だしね」

 「ってことは……」

 「あんたが上っていけばいいでしょ」

 「僕たちも頑張って手伝うから。蘭次君。頑張って」


 「やっぱりそうなるのか……」


 てか、椎名は結構戦いに慣れてると思ってたんだ。だって敵の前でも余裕だから。でも『戦闘は苦手』って、それなら今まで敵をどうやって倒してきたんだ?魔法を使ってる所も見たことないし。

 「じゃあ、どうやってあそこまで登っていくかだね」

 「あ、ああ」

 椎名にそう言われて我に返る。そうだ。今はそんなことを思ってる場合じゃなかったんだ。

 「それなら、途中まであたしの魔法で運べるわ。エアロ」

 さっきも使っていた魔法の名前を凜が唱えると、俺の体は宙に浮き、一気に相手の腰あたりまで運ばれていった。

 「お、おお!すごいなこれ」


 「さて、そこからはあたしの魔法では届かないわ。後は自分で行きなさい」


 「え……まじかよ」

 まだ亀裂までは三メートルくらいある。これを上るのは大変だぞ……。

 「蘭次君。腕を伝っていくといいよ」

 椎名がそんなアドバイスをくれた。確かに、腕は凸凹が多くて掴んで上りやすそうだ。

 「よっ。ほっ。よいしょ」

 前にテレビで見たボルダリングのように上る。現実ではコツとかがあるんだろうけど、この世界の俺の運動能力ならしっかり上っていける。

 「蘭次君!相手が動くよ!」

 椎名がそう言うのと同時に、敵が俺を振り落とそうと腕を振ってくる。


 「く……くぅ……!」 


 俺は振り落とされないように必死に敵の腕にしがみつく。前の校長の時は跳んで行ったが、今回はそうもいかない。敵の弱点までの距離がまだ二メートルくらいあるからだ。


 (落ちるなよ……こんなとこから落ちたらたまったもんじゃないからな……)

 耐える。とにかく耐える。だが、敵の腕はしつこく俺を振り落とそうとしてくる。


 (も、もう限界だっ……!)


 クソッ。頼むから止まってくれ。止まれ、止まれ、

 「止まれぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!!!!!!」


 止まっ……た。


 俺の声に命令されたかのように、敵は硬直していた。

 (今だ!)

 なんで止まったのかはわからない。けどそんなことはどうでもいい。今が最大のチャンスなんだ。

 

 (だから、走れ!)


 「いけええええええええ!!!!!!!」

 素早く敵の腕を上り相手の亀裂までたどり着く。そして渾身の一撃を、敵の亀裂の部分に――





 「ごめん蘭次君。僕は君を騙してた」





 不意に頭に響く椎名の声。下を見ると、椎名が手に持っている拳銃の銃把(グリップ)で相手の右ひざの裏あたりを突いていた。そこには、赤いボタンのようなものがあった。


 「ここに弱点があることは前から分かっていた。でも誰かが近づくと、ひざを折り曲げて隠してしまうんだ。だから攻撃の仕様がなくてね。しょうがないから蘭次君を上に行かせて注意を向けてたんだよ。そしたら相手の弱点は見えたんだけど、僕が近づこうとしたらまた隠そうとしてね」


 敵の体は弱点を突かれた右ひざから崩れるように倒れていく。

 

 「やっぱりだめかと思ったんだけど、その弱点が隠れきる前に敵の動きが一瞬止まって、僕は弱点を突けたんだ。よく考えるとあれはなんだったんだろうね?まったく――」


 俺が地面に落ちる前に見た椎名の顔は――


           「—―不思議なもんだね」


          ――ぞっとするくらい、底の知れない不敵な笑みだった。

 

  

はい。椎名怖いですねー。みなさんもこういう男には気を付けて、顔とかだけで決めては駄目ですよ!(いいえ違います。けっして私が不細工だから妬んでるわけではありません)いやーアクションはきついですね。なかなか白熱したバトルが書けない。でも、これからどんどん迫力ある戦闘シーンが見れますよ!約束します!乞うご期待!

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