1 異世界への希望
ギャグ色強めで行きます。本当は恋愛要素も入れたいのですが今のところその予定はありません。
変な展開が続くと思いますが宜しくお願いします。
――君も、異世界に行きたいと思ったんだから――
「はぁ~~~~」
今日何度目ともわからない溜息。それと同時に思うのは
(異世界に行ってみてえなぁ……)
叶わない願い、そんなことはわかってる。でもそう思わずにはいられない。
平凡に小学、中学と過ごしてきたが、高校受験は都立で落ちて、私立の男子校に通うことになった俺。
今日も暑い中、男子ばかりのむさくるしい教室。
別に苛められてるとか、そういうことじゃない。けどこの世界は変化に乏しくて、刺激が少なくて、物足りないんだ。
異世界に興味を持ったのは……小二だっけな。漫画のバトル物にはまって、その中のキャラの必殺技とかの真似ばっかりしてたっけ。
あの頃から俺の願いはあまり変わってない。剣片手に魔法を唱えながら、敵を突破していきたい。そんな夢。いや……妄想かな。
つまらない学校が終わり、ただただ妄想に浸かるだけの自分の家に歩く。
『全くお前は何をしてるんだ。大学受験をして、就職して。できることなら結婚して、幸せな暮らしをすることを考えなよ。いつまでも逃げてないで、少しは現実を見据えろよ』
そんな声が脳裏でする。わかってる、わかってるよ。そんなことはいくら願ったって、俺の夢は叶わない。知ってるんだよ……そんなことは……。
……でも、でももしかしたら叶うかもしれないだろ。今は無理でもいつか……たぶん。
だから、一度だけでもいい。
異世界へ――
「あなたの願い、受け取りましたぁ!」
目の前を横切る何か。そして宙で、くるくると回るそれは――
(……ステッキ?)
なんでステッキが宙で回っているんだ。そんな考えと同時にステッキから何かが落ち、
「っとと」
慌ててその何かをつかみ、まじまじと見つめてみる。その何かは、よく子供が持ってる缶バッチのようなもので、表面にはピンク色の手書きの字で、
『異世界の願い叶えちゃいます部』
と書かれていた。
(……なんだこれ?)
なんて思ってるとそのバッチから煙が出ていき、きらりと光って、
「ばぁーん。――くるくるぱっ――っととと……うわぁっ!」
……きらりと光って、どこからか女の子が空中で出現し、効果音をつけながら回転して着地…… できずにこけて頭を地面に打った。
……状況が把握できない。
とりあえず、起きたことを整理してみよう。
・いつも通り歩いて家まで帰っていた。
・突然どこからか声が聞こえた。
・缶バッチ、ステッキとともに謎の女の子登場。
・女の子、見事なまでに着地失敗。
……なるほど。
「疲れてるんだな。早く帰ろう」
気のせいだ。うん。間違いない。
「あーーーー!ちょっと待ってくださいよ!着地ミスっただけなのにどうして無視するんですか!?」
聞こえない。聞こえない。なぁんにも聞こえないぞ。
「こうやって現れただけなのにどうしてその度に皆こういう反応するんです!?冷たいです!」
やたらうるさい奴だな……っといけない。聞こえない。聞こえない。
「別に怪しい人じゃないからぁ!話を聞いてください!」
…………
「あの……っ……話を」
「……どー考えても怪しい奴だろ!お前は自分の登場の仕方がおかしいと思わないのか!いったい何者なんだよお前は!」
ついに俺の根気が負けて言いたいことを怒鳴り散らす。そんな俺の怒りとは裏腹に、女の子は俺が反応してくれたのがうれしかったのかにっこりと笑って、
「よくぞ聞いてくれました!私は、天界で作られた組織、『人間界をちょっとは助けようの会』の中の
『異世界の願い叶えちゃいます部』に所属する、魔崎奈美といいます!」
元気に自己紹介をして、大きな声で高らかに宣言するのだった。
「あなた――丹川蘭次が異世界に募る思い。私が叶えてあげます!」
これからもなるべく早く連載してくのでご期待ください。