◯!△!□!
彼は、莉緒さんから「字が上手になるために、丸と三角と四角の描き練習もやってみて」とアドバイスをもらった次の日から、それに従って、また次の新しいノートに◯△□の描き練習を始めました。
綺麗な◯って何だろう?見本になる何か無いかな……えぇと…ぁ、あった!
彼は机の上の10円玉を手に取り、じーっと見て、ひっくり返して見たり、机の上で転がしてみたり…自分なりに綺麗な◯というものを研究しました。
そしてノートの1マスに◯を一つ描き、10円玉と見比べたり重ねてみたりしながら、そんな研究と練習を、何度も何度も繰り返しました。
『…やっぱり莉緒ちゃんが言ってたとおりだ。僕の描いた丸は、右上が尖ったみたいに長くなる…』
彼は、丸の右上が長く伸びすぎないよう気にをつけながら、ゆっくりゆっくりと◯を一つ描きました。失敗。もう一回。あ!惜しい!じゃ、もう一回…。あ!
…彼の勉強机の照明は、夜の10時を過ぎるまで消えませんでした…。
…夏休みまであと数日!という7月下旬の、とある日曜日の午後ことです。
彼の姉の紗香さんが、日曜日なのに午後になっても彼が、独りで部屋に篭ったままだったのを心配して……そぉっと…忍び足で彼の部屋へと入ってきました……そぉっと…。
……学習机に向かっていた彼は……姉が部屋に進入したことに…まだ気づいていません………。
…紗香さんは……彼の真後ろに静かに立っと………直立して大きく息を吸い込み、大声で叫びました。
『何してんのっ!!!』
『ぅっわあっ!!』
…彼は驚きすぎて、勉強机の椅子から転げ落ちました。
紗香さんは転げ落ちた彼の、勉強机の上に開げたノートに気づき、困難なく易々と手に取りました。
「……?」
ノートのページには、◯△□が、びっしりと描き込まれていました。パラパラと他のページをめくっても、描いてあるのは◯と△と□ばかりです。
見る人によっては、このノートがとても異様な雰囲気を漂わせている、と感じていたかもしれません。でも紗香さんはそうは思いませんでした。
…これは何かのゲーム?ひとり遊び?おまじない?…そう思う前に、紗香さんはすぐに見て感じていました。
◯も△も□も、もの凄く綺麗に、丁寧に描かれてる…!
それを書くのに使われたと思われる道具は、机の上を隅々まで見ても何もありません。
翔…こんなに綺麗な◯や△…どうやって描いたの!?こんなにいっぱい!
紗香さんは、それが不思議で仕方ありませんでした。




