第8話 ボブゴブリン討伐
本日3話目!
いよいよ、ボブゴブリン討伐です!
さぁ、続きをどうぞー。
哲也達はこれからボブゴブリンを探し始めることに。
ギルドへフェゴバルトが現れたことを話すと、おそらくこの森へ立ち入り禁止にされる可能性がある。そうなると、カレルのクエストをクリア出来なくなってしまうので、フェゴバルトのことを言う前に討伐しようと決めたのだ。
もし、またフェゴバルトに会っても戦うことはないだろう。わざわざスキルを教えて貰ったのだから、こっちを殺す意志はないのは読み取れる。
「フェゴバルトの報告は夜にしよう。それまでにボブゴブリンを倒すぞ!」
「おー」
カレルはフェゴバルトに出会ったのだから、なんでも来いやッと諦めの心情になっていた。
「フェゴバルトの奴がいたから、ゴブリン共は怖がって隠れているかもしれない。だから、まずは巣を探すぞ」
「ゴブリン達は洞窟を巣にしているから、山の近く辺りにあるんじゃないかな」
「成る程。山と言えば、フェゴバルトがいた山と……」
「頂上にはワイバーンがいる山だね。ワイバーンは自分の縄張りに入ってこない限り、襲ってこないけど行きたくないわ」
なんでも来いやッ! と思ったが、わざわざ自分から危険な場所には寄りたいとは思わない。なら、目指す山は1つだけになる。
「フェゴバルトがいた山か。まさか、雪山じゃないよな?」
「いえ、フェゴバルトが氷を操る魔物であっても、山は普通の山ですわ。山の奥に進めば、強い魔物がいますけど、行くのは山の麓までなので大丈夫でしょう」
2人にとっては格上である魔物もいるが、バクみたいな魔物を倒せた自信からやる気になっていた。もし実力が離れすぎていたら、逃げるがボブゴブリンだけは倒しておきたいと思っていた。
「今日はもう予想外のことなんて起きないだろ」
「それはわかりませんわよ……、予想外の展開は1日に何回と決まっていませんし、冒険者と言う者はいつでもトラブルを呼び込み巻き込まれるのが日常だと昔から伝えられていますわ」
「マジかよ。冒険者になったのは失敗だったか……」
哲也が冒険者になったのは、金を稼ぐためだ。決して、女神に魔王を倒してと頼まれたからではない。そんな不可能に近い頼みを受けた覚えはない。ないんだから!
山の麓に着いた2人はすぐボブゴブリンがいる巣を探していた。大きな洞穴に住んでいるから、探すのは難しくないと聞いたが、どれも空ばかり。
「住んでいた跡が残っている洞穴もあったが、ゴブリン1匹もいねーな」
「もしかしたら、もう討伐されちゃった……?」
「その可能性もあるが、フェゴバルトから逃げて洞穴を捨てたかもしれんぞ?」
「そうだったらいいけど……」
哲也はそう言ったが、違和感を感じていた。跡が残っている洞穴に布が沢山残っていて、手に持つとまだ温かいのもあった。まるで、ついさっきまで住んでいたような残り方だった。
ーーまさか!?
哲也はすぐに洞穴から出ようと、カレルの手を取って走り出すがーーーーもう遅かった。
出口には沢山のゴブリンと数体のボブゴブリンが囲むように立っていた。まさか、出口で待ち伏せされてしまうと思ってなかったので、驚いた。カレルも驚愕していたが、ゴブリンの中にボブゴブリンがいたことにやる気を出していた。
ほぅ? この数に怯えると思ったが、やる気を出すとはな。
そう考えている哲也も驚かされたが、まだ余裕があった。このくらいなら、なんとかなると思っていた。
「カレルはボブゴブリンを1体だけを倒せ。他は俺がなんとかしよう。出来るな?」
「え、アレだけの相手を!?」
「いや、全部倒すと言っているわけでもないからね? お前がボブゴブリンを倒すまで持たすと言っていんだよ。だから、俺の為に早く倒してくれよ?」
「う、うん。わかったわよ、気をつけてよね」
1体のボブゴブリン以外の敵を引き受ける哲也、初めから全開で行く。新しいスキルの試運転を兼ねて、出口を塞いでいるゴブリン達を吹き飛ばそうとする。
「さぁ、どきやがれッ!!」
蒼くなった右眼が淡く光り、溜めた魔力が解放される。その魔力は衝撃となって、前方に立つゴブリンとボブゴブリンを吹き飛ばした。正面から受けたゴブリンは身体を四散してしまう程の威力だった。
「思ったより威力が高い!? いや、カレル! 先に洞穴から出るぞ!!」
「は、はい」
『衝撃の魔眼』の攻撃範囲外にいたゴブリンとボブゴブリン達が一斉に襲ってきた。再び、『衝撃の魔眼』で向かってくるゴブリン達を一気にブッ飛ばそうと思ったが、魔力の残量に気付いて止めていた。
もう残量が半分もないだと!? さっきのは考えずに全力で打ち放ったのが悪かったか……。
全力で放つと魔力は半分以上も使うようで、今後は調節をして使っていくしかない。だが、いきなり調節して放つのは少し練習が必要だ。
仕方がないので、分銅を振り回して一番近くにいるゴブリンの頭を吹き飛ばした。それに続いて、頭を吹き飛ばしたゴブリンを支点にして、鎖を巻きつけて分銅の軌道を変えた。その分銅が別のゴブリンの顔に当たって倒れる。分銅だけでは数で攻めてくるゴブリンに対応出来る訳もなく、側まで近付いたゴブリンもいた。
「プレゼントだ。喰らえよ?」
「ギィッ!?」
咄嗟に『弱酸』で目潰しをし、そのまま鎌で首を刈り取った。中距離にいる敵は分銅で対応し、近距離からは『弱酸』と鎌でゴブリン達の命を奪っていく。ゴブリン達が馬鹿だったこともあり、その戦い方で続けられた。
ゴブリンは本能で動く魔物で、学習をしない。ボブゴブリンになれば、少しは学習をするが、本質はゴブリンのと変わらない。現に、ゴブリンがやられても指示を出すこともなく、ギャーギャーと叫んで見ているだけ。それに、こっちの方が強いとようやく理解して、ボブゴブリン達はゴブリンを見捨てて逃げ出した。
「1体だけは逃がすかよ!!」
万一に備え、1体だけは脚を砕いて動けなくさせることに。ちらほらと逃げ出すゴブリンも増えたので、分銅をボブゴブリンに向けるのは難しくはなかった。勢いを付けた分銅は右脚を粉砕し、動けなくさせることが出来た。それをカレルにトドメをさせようと思っての考えである。
単なるクエストクリアなら、一緒に組んでいるパーティの哲也がやってもいいが、今回はカレルがボブゴブリンを倒したという証拠が必要だ。だから、仕留めないで置いたが…………
「おっ?」
カレルがいる場所を見ると、カレルの足元には倒れているボブゴブリンの姿があった。どうやったのかと思えば、倒れているボブゴブリンはまだ死んでおらず、グーグーと寝息が聞こえてきた。つまり、『呪痕』で睡眠の状態異常になっていて、これからトドメを刺すところだった。
「なら、これはいらないか」
右脚を引きずって逃げようとしているボブゴブリンを逃がすつもりはなく、近付いて鎌で首を刈った。
他のゴブリンを倒そうと周りを見てみるが、既に背中を見せて逃げている姿ばかりだった。たった今、ボブゴブリンが2体もやられたから、恐怖で逃げ出しても仕方がないだろう。
「やりましたわ!!」
「そうか、良かったな」
嬉しそうに駆け寄るカレル、これでようやく帰れるかと思う哲也だったがーーーー
ブルグゥッ…………
ゴブリンの血に誘われたのか、2人より二回りは巨大な身体を持ち、角が4本もある猪が現れた。凶暴そうな表情をしており、見つけた獲物を睨むような目線をしていた。
その姿を見た瞬間に、2人はーーーーーーーーーーーーーーーーーー既にこの場から逃げ出していた。
「最近はこんなのばかりかよぉぉぉぉぉ!!」
「うわぁきゃぁぁぁぁぁーー!!」
逃げても逃げても、凶暴な猪の魔物に追われる2人だったが、最終的には街へ逃げ込んで生き残れたのだった…………